ネット社会怖い
世代的に「テレホーダイが既に下火の頃」と言えば伝わるだろうか。あるいは「某紹介制SNSが流行る少し前」でもいい。私がネットに触れたのはその頃である。
検索サイトが今ほど有能でなかった頃から使っているおかげで、欲しい情報を探すのは得意だ。まぁこれもSEとしては結構役に立つ。
何しろお客さんは手書きのよくわからない文章を渡してきて「この通りの画面を作って下さい」と言うのだ。メールで。
だから何を意味するかわからないところや、必要な画像をほいほい検索しては、手書きの文字をデジタルに変換していく。気分は昔の印刷工場の技師である。
2年ほど前に会社の同期からチャット通知が届いた。普段はあまり動かないツールだから、不思議に思って見てみた。
「この前話してた新人のA君だけど、ちょっとまずいことになった。詳しくは話せないけど「X月Y日 XXX線」で検索してみて」
えっ、あの兼ねてより聞いていた、ちょっと落ち込み気味の新人に何が?と思ってその文字列で調べたら、新幹線の案内と天気予想図が出てきた。そりゃそうだ。
うーん、待てよ。
その路線を会社員が使うなら朝か夕方だ。線路絡みなら遅延情報がある。
やばいことって言うなら、まぁなんだ、あれだな。となると、遅延内容を絞り込んで……。
ヒットしたのは某まとめサイトだった。青い鳥の呟きをまとめるタイプのやつである。
「人がおちた」という、まぁまぁ予想通りの出だし。
「上り電車が止まってる」「救急隊きた」「革の鞄が真っ二つ……」「黒い袋に何か包まれてた」
まじか。
その新人見たことないけど、そんな結末は胸糞悪い。仕事で上手くいかなかった末の行動がそれなんて、キツいじゃないか。
何となく気分が落ちたまま、翌日に同期にチャットを投げたら返事が来た。
「線路と車体の間に入って、無傷らしいよ」
「いつも使ってるリュックサックが少し破けただけらしい」
えっ、、そうなの?
じゃあ革の鞄は誰のだよ。黒い袋の中身はなんだよ。
まぁ所詮はネットだしな……と思いながらも安心した。
しかしその新人がなぜ線路と車体の間に入る羽目になったかは、結局わからずしまいだった(会社からの説明では寝不足からの事故だったけど)
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