僕を罵倒して。
ガタン。
おっと、長い夢を見ていたようだ。
電車の揺れで目が覚めた。
あの夢の終わりから、3年が経とうとしているけど、今日もまた懲りずに君に会いにいくよ。
「来るな」なんて言葉、僕には通用しないよ?
なんたって僕の使命だ。
君と同じ空気を吸うこと以外、僕に生きる意味なんてないんだから。
君に罵倒されることだけが、僕の生きがいなんだ。
なんて、昔のことを思い出していたら、懐かしくなってバッタを捕まえてみた。
小さい虫かごを買って、君に見せてあげよう。
君はまた、涙目になりながら「気持ち悪い」と言うだろうか。
君が先週食べたいと言っていたいちごプリンと、バッタを持って君の元へ向かう。
「あれ…また来たの。」
ああ、相変わらず君の肌は血が通っていないかのように真っ白だね。
君のその真っ白な肌に、僕は未だ触れられないでいる。
「なにこれ…バッタ?」
君は小さく笑っている。
懐かしいな、なんて言いながらカゴの中を跳ね返るバッタを眺めている。
気持ち悪い、って言ってくれないんだね。
「………今日、お医者さんと大事な話したんだ。」
「入院したての頃さ、いっぱい酷いこと言ってごめんね。あんな状態の私のこと、見放さないでくれて…。3年間ずっとお見舞い来てくれて有難う。」
…どうしてそんなことを言うの?
やめてくれ。
お礼も謝罪も、僕は求めてないんだ。
「私さー。ずっと素直になれなくて、気持ち悪いとか嫌いとかばっかり言ってたし、嫌な態度も沢山とってきたけどさ。」
だめだ。
だめだよ。それ以上言わないで。
「あんたのこと、好きだったよ。」
………要らないんだ。
そんな言葉僕は望んでいない。
だって、それって、君の愛の言葉って、
"さよなら"
って意味だろう?
「ちょっと、何泣いてるのよ。」
呆れて言う君は僕の手を握った。
僕がずっと焦がれ続けた君の肌は、思った以上に冷たくて、骨を直に触るような感触がした。
今僕の手に触れているものは、間違いなく"死"であった。
ねえ、お願いだよ。
僕の願いはこれだけなんだ。
僕を罵倒して。
愛の言葉なんて要らない。
これっぽっちも欲しくない。
僕は君に、罵倒され続けたいだけなんだ。
君の愛の形を僕はよく知っている ことぽっと @kotopot
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