II 報告

Report.1

 午前二時、決行。

 セキュリティの見回りが終わった段階で、Fionaと待ち合わせる。


 ルートを辿り、警備エリアを越え、研究エリアに向かう。


 警備エリアはFionaの持っていたキーで開いた。

 その奥の研究エリアはこちらのキーで開いた。


 音を立てぬよう、慎重に入る。


―――


 二重扉、エアロック、洗浄装置を越える。

 

 はじめに、ガラス製のシリンダーに液漬けにされたカナリアの素体があった。

 Fionaが目を剥く。何かを言いかけたが、口を塞ぐ。

 シリンダーは立てた状態で並んでおり、その数はおよそ4~50。どれもがチューブのようなものと接続されており、中には“出来かけ”もあった。ピンク色の、巨大な胎児のようなフォルム。


 よろめくFionaに肩を貸し、先へ進む。


→カナリアが元の姿そのままで生産されることは間違いない模様。

 どれも似たような体格と顔立ちだが、完全なクローンではない様子。ある種の誤差か。

→培養されている?“元の素体”はどこにある?


―――


 試験管と、小型のシリンダーが並ぶエリアに入る。さらに小型の、肉の塊のようなものが入っている。生臭い匂いがする。先へ進む。


 戻ってカナリア達を助けるべきだとFionaが提言する。却下する。


―――


 一度外に出て、小さな廃棄場のような場所に入る。失敗作が処理されている?

 臭いの発生源はここから。Fionaが頭をかきむしり、その場に嘔吐する。先を急ぐ。


→この時点では、カナリアは“溶けて”いない模様。溶ける条件は?


―――


 元の素体は見つからず。機器の並んだいくつかの部屋が見えるが、調べる時間は無し。


 Fionaの様子が変わる。目がうつろになり、一人でに歩き出す。

 唄が聞こえたと呟く。こちらには聞こえず。Fionaの後をついて行く。


―――


 全身を寒気が襲う。


―――


 急造されたと思しき実験室にて異常な個体を発見。


 全長、約6メートル。

 頭部は異様に膨らんでおり、対して身体の筋肉はほとんど見られない。中心部にカナリアと見られる個体は確認出来るが、肉の塊により覆い尽くされており、人型をとどめていない。顔があるのはかろうじて分かるが、オリーブ色に変色している。膨らんだ頭部からは無数の触手が伸びており、触手は実験室中に這っている。

 表情に変化はない。

 異常個体とこちら側はガラス一枚を隔てており、ガラス付近にはいくつかコンソールのような機械がある。また向こうに行くための二重エアロックがある。


 Fionaの申告によりMarieだと判明。

 また、あの肉の塊が“アノマリー”であるとも判明。


 Fiona、頭をおさえ、もう一度その場に嘔吐する。


 こちらも寒気が止まらない。


―――


 個体に変化があった。

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