#20 CANARY
「ははは。あはは。あはははは。
明日だって。出撃。明日。あいつら、いつもみたいに、平然と言った」
「怖いよ。怖くて堪らない。何度でも言うからね。死ぬのが怖い。生きて……生きて帰ってこれる気がしない。こんなことなら、あのポンコツみたいに、気が狂ったフリでもしておけばよかった。
あはは。あははは。煙草ちょうだい。持ってるヤツ、全部」
「周りのカナリアが消えていくのなんて当たり前だと思ってた。何度も目の当たりしたから。それが日常だった。でも私の死は? 日常じゃない。一回きり。それで私が消える。何もかも消える。
街なんてどうでもいい。華やかな暮らしもどうでもいい。ただ生きたい。出撃なんてしたくない。ここから出たい。ずっと生きていたい。トゥエルブなんかに生きたくない。私はあんな死に方したくない。死んだらどうなるの? 私はどうなっちゃうの?」
「アンタに話なんてしなきゃよかった。アンタのせいで、私は余計なことを考える羽目になった。
責任とってよ。私を連れて逃げて。ここから出してよ。ねえ。
ねえったら。
……答えてよ。 答えて!!」
「――……絶対に、生き残ってやる。他のカナリアなんてどうでもいい。友達だとかなんとか、そんなのはマヤカシだ。あいつらに食われそうになったら、真っ先に私は逃げる。あの娘みたいに、歩いてでも帰ってやる」
「ああ。行きたくないなあ。行きたくない。
あんな地獄。もう嫌だ。そんなに調べたきゃ、ヒトだけで勝手に行けば良いんだ。巻き込まないでよ。私を。
ただ無闇に、死ぬために作られたなんて、そんな不幸、ある?」
「来ないで。二度と私の前に顔を出さないで。覚えていないで。
こんな……こんな、自分のことなんて何一つ分からないマヌケな動物どものことなんて早く忘れて。お願いだから――」
「……何、これ。メモ? “住所”?」
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