#17 防衛部所属 ゲオルグ・タケウチ

「――そうだ。俺達の役目に、それは含まれてる。

 言う必要もねえと思ってたから、言わなかったけどな」


「学者サマの都合なんだよ、結局な。封殺せず、大量のカナリアを使って、トゥエルブを探ろうとしてる。

 いや分かる。分かるんだ。これがただの火遊びじゃねえってのは。確かに、これでアノマリーどもや発生地点の素性が知れれば、世界中に起きてる同様の問題にも対処できる。遊びじゃねえのは分かる――んだが」


「無邪気に手を振って、送り出していったカナリアの背中に、俺はこのデカい機関砲弾を撃ち込むことになった。あいつは水風船みてえに弾け飛んで溶けた。想像出来るか?


 ……ああ、撃ったのは俺だよ。後にも先にも一度だけだ」


「もうこの話はしたくねえ。すまんな」


「お前さんが前に声をかけた時から、一つ、思い出したことがある。

 あの、歩いて帰ってきたカナリアのことだがよ。


 唄を。


 唄を歌っていたように聞こえたんだ。


 到底、聞こえやしない距離だ。幻聴だったかもしれねえ。耳からというより、頭の中に直接響くような声だったからな。あの娘の声だって証拠もねえが、直感的にそう思った。

 ――カナリアって名前からは皮肉だが、あいつらは唄を知らねえ。子守唄を聴かされて育ってもいねえし、娯楽室で聴かせることもねえ。当たり前だな。


 なのに、あの娘は歌ってた。

 俺の知らねえ唄だった。だが懐かしかった。それと、何か、吸い込まれるような、導かれるような……いや、こいつは言うべきじゃなかったな。


 俺だけじゃねえ。あの時配置についてた奴らは、みんな口々に聞こえたと言っていた。研究部に連れて行かれてから、どうなってんのかは分からん。……もしかしたら、まだ歌ってんのかもな。

 もちろん、報告はしたさ。それこそ、幻聴だと言われちまったが」


「……ありゃ、なんなんだろうな」

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