#14 CANARY

「どうした。また私の身体をそんなに見つめて」


「わかっているさ。みなまで言うな。笑うがいい。

 前回の出撃でな、私のエピオルニスが大破した。それでも、あのお節介どもめ、ハッチから引きずり出して、背負ってまで私を連れ帰ったのだ。


 ここで殺してくれ、とまで言ったわけではない。確かに私の愛機はトゥエルブに沈んだ。覚悟を決めた以上、おめおめと生きて帰ることもないと思った。まあ、自棄といえば自棄なのだろうが。

 それは別の見方をすれば、次に繋げられるということでもある。

 知っていることの全てを話したよ。私の戦闘記録によって、他のエピオルニスも、そのパイロットも、より一層活躍出来るようになる。そう考えれば悪くないのかもしれない」


「しかしな。見ての通りだ。両腕どころか、右脚まで無くした。ペダルを踏むことすら出来ない。私自身、もう出撃は叶わない。心残りでないと言えば嘘になる。

 これから先、私はどうすれば良いのだろうな。

 貴殿に言っても詮無いことではあるが」


「コール?


 すまないが、そこの端末を取ってくれないか。そう、近くに置くだけでいい」


「……ああ……そうだ……何、それは本当か?! わかった。いつでも大丈夫だ。では」


「――くく。くくく。いや、すまない。しかし……くく。


 本来、貴殿に言ってはいけないのだろうが……わかるか。私は今、嬉しくて笑っているのだ。

 

 何しろ……もう一度、エピオルニスに乗れるのかもしれないのだからな」


「それも新型だ。エピオルニスMk.Ⅱ。私はそのテストパイロットとして選抜された――らしい。これ以上の名誉があるか。もう一度私はあの戦場に行ける。どれだけのカナリアが助かるのだろう。

 私に両腕があれば、今すぐにでも貴殿と喜びを分かち合いたいくらいだ!


 いや……すまない。

 今のは失言だった。わ、忘れてくれ。……頼む」

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