#12 CANARY

「ああ、あのノータリン? 死んだよ。一昨日かな」


「ベッドを調べてもいいか、って。まあ、アタシのじゃないし。勝手にすれば。

 って、なにそれ、ぬいぐるみ? うーわ、ダサ。つか、どっから拾ってきたのよ。

 まさかトゥエルブからじゃないでしょうね。それにしちゃキレイだけど……。


 いや――だから、アタシのじゃないし、持って帰るも何も、勝手にすればいいでしょ」


「ところでさあ、どうでもいいんだけど。

 アンタ、エピオルニスのパイロット、見たことある?


 そう、アレ。


 当人は名誉だなんだって言ってるけど、アタシに言わせりゃバカそのものよ。

 この前、一生懸命志願してるヤツ見てさ。そう思っちゃった。

 ……こんなこと言うと周りから何言われるかわかんないし、黙っててよ。カナリアでも基地の連中でもない、アンタに話すんだからね。


 だってさ。あんな身体になってまで、自分から脚の生えた棺桶に乗って。もし任務が終わって街に行っても、どうやって生きていくワケ? 信じられない。まるで自分から“私は実験動物です。自分の身体を捧げます”って認めてるようなモンじゃない。


 アタシは違う。そうやって認めちゃったら、何もかも終わり。

 絶対、なんとしてでも、アタシは生き延びてやる。

 任務が終わったら、こんなところからオサラバして、街に行って派手に暮らすんだ」


「でなきゃ――いっそのこと、こんな基地や橋なんか、壊されちゃえばいい。

 そしたらアタシ達は自由になって、人間達に命令されてトゥエルブに行くこともなく、堂々と街にいけるんだ。

 ……こんなこと、アタシが言ったって、絶対言わないでよ」


「あはは。

 なーんでこんな風に生まれちゃったんだろうな、アタシ。


 これじゃ、そこいらの虫にでも生まれたほうがよっぽどマシだったわよ」

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