#11 研究部所属 Dr.サカイ
「まずはじめに言っておく。
当たり前だが、現状の機密について話すことは出来ない。それはいいね?
おそらく君のような人のことだから“あの娘”についても、この基地の連中を通して聞いていることだろう。だがそこは最重要機密。私が話すことが出来るのはカナリア達について、一般的に認知されている知識だけだ」
「さて。君の思っているであろう疑問点を言い当てようか」
「一つ目。“何故カナリア達は瘴気にあてられないのか”。“カナリアとは何なのか”。
カナリアは私達が生み出したものだ。ここだけではない、各国のアノマリー対策に集められた科学者達の手によってね。
一言で言えば、あれは、ヒトをベースにアノマリーの細胞の一部を混ぜた人工生命体だ。我々が立ち入れない場所に、耐性を持った生命体を投入して代わりに調査に当たらせる。そのためだけに生み出されたモノだ。そして……手段や詳細は明かせないが……カナリアは量産できる。いわゆるクローンだな。故に、我々はああして大量のカナリアを送り込むことが出来る。……安心しろ。体内の細胞についての安全性は確証がとれている。
アノマリーどもの“寿命”を知ってるか。約二年だ。カナリアの体内にある細胞も同様で、それだけ経てば消える。だからカナリア達の任務も二年が限界。以降はただの“ヒトモドキ”と呼ぶべきモノになる。まあ、後は処分すれば良いのだが……我々は彼女達のモチベーション維持のために、任務後は解放を約束している。口約束だけではない。きちんと解放しているとも。無論、解放時に埋め込んだ装置によって監視はしているがな」
「二つ目だ。“何故カナリアに人格があるのか”。“何故、少女のような見た目と性格をしているのか”。
君はおそらくこう思っているだろう。実験動物なら人格など無くても良いのではないだろうか。危険で非道な任務に当たらせるのに、酷すぎないだろうか。解放まで含めて、回りくどくないだろうか、と」
「だが、これは機密情報だ。一級のな。つまり君に明かすことは出来ない」
「残念そうだな。無理もない。それでも、これだけは言っておこう。我々とて、遊び心や加虐心からそうしているわけではない。“結果的にそうなってしまった”。あるいは“そうなる以外に生み出す方法がない”。それだけのことだ。いつか、人格を排除した、ただ戦闘と報告のみを機械的に行う『改良型カナリア』が誕生する日も来るだろう」
「解放後のカナリアがどうなるのか、だと?
本来はこれも機密だが、まあいい。特別に教えよう。あの“ヒトモドキ”はな――」
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