#9 CANARY

「あー。おじさん、だれ?


 おはなし?

 あの娘? あっ、Marieちゃんのことだね。

 うん! とってもいい子だよ。みんなにやさしくてね。かわいくて。


 でもね、このまえ、おでかけしたままね、かえってこないんだ。どこにいったのかなあ?


 んーとね、あたしね、なんか、もう出かけなくていいよーって、言われて。

 ずっとここにいるの。ほかのみんなはいつもみたいに出かけていって、たまにかえってこなくて。わたしだけ、ここにいるの。

 

 だからね。なんかね。さびしくなっちゃった。


 おじさん。あたしのこと、ぎゅーってしてくれる? ね、ね、ねえ、いいでしょ?」

























「Marieのこと、本当に知りたいの?

 

 他から聞いた。最近、外部から来て、色々聞き回ってるヒトがいるって。

 

 そう。あの娘は……Marieは、あの日、トゥエルブから帰ってきたっきり、研究施設に入れられた。それきり、私達は何も知らされていない。


 私は、それでも、知りたかった。

 Marieに何が起こってるのか。Marieが“何をされているのか”を。

 

 ここに、カードキーがあるの。

 本来、私達が入る事の出来ない研究エリアのキー。

 出所は聞かないで。一人、協力してくれたヒトがいたから。アレは協力、と言えるのかな……そうよ、何度か……何度か、あのゲスの言いなりになって、ようやくこれを手に入れた。


 でも、全部じゃない。この先がある。そこからはどう足掻いても入れない。


 だから。もしもMarieに会いたいなら、どうか、私に協力して。

 カナリアでもない、ここの人間でもない、貴方なら……私がこれから言うものを、きっと手に入れられる。何があったか。Marieが今どうなっているのか。絶対にアイツらは教えてくれない。私にも、貴方にも。


 私は真実を知りたい。この基地が隠している秘密を知りたい。貴方もそう思うでしょう?


 私達は実験動物。でも、動物にも自我はある。


 だから。

 また会いに来て。待ってる」

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