#8 元整備部所属 マコト・オニカシラ
「……もう監視はねえな? 本当に喋って良いんだな?
録音すんのはいいが、絶対に俺が言ったとバラすなよ。“反省してねえ”なんて言われて、また期間が延びちまう」
「そうだよ。俺は反省なんぞしてねえ。
そもそも“こんなこと”やったのは俺だけじゃねえ。たまたま捕まったってだけで、どこでもやられてるだろうよ。黙ってるだけでな。
見せしめとして、たまたま俺が選ばれちまった」
「カナリアどもは道具だ。基本的に、人間に逆らうことはねえ。だから……テメェも男なら、わかるだろ? 安い給料。いつバケモンどもが攻めてくるか分からねえ状況。任期が終わるまで外出は不可能。つまり、俺はヤることをヤった。
お前も、何人か会ったなら、わかんだろ。世が世なら、あいつらは銃なんか握ってねえで、ショーケースに並べられるくらい、オモチャとしては一級品の身体だ。
実際、そうだった。人間の女なんてメじゃねえ。とびきりの具合だった。
……あいつらの身体がどうなってるのかなんて、ンなことは知ってるよ。だが少なくとも俺達は安全だ。“俺達は”な。今んとこ」
「俺がヤったのは、三人。
その内、とびきり極上だったのは三人目。エピオルニスのパイロットだったカナリアだ。
前の二人は従順だった。ヤってる時も、いかにも自分の役割を分かってますってな顔でな。心地はいいが、物足りなかった。その分、あのパイロットは別格だった。何しろ“抵抗”したんだ。珍しくな。だが、あいつには両腕がない。お前の事を殺してやるって目をして、それでも何も出来ねえ。そりゃあもう、最高だったよ。
クソ。思えば、あのダルマ女、そこで殺しておきゃ良かったんだ。
階段から落として、事故にでも見せかけてな」
「あいつらは俺達人間の都合の良いように調整されて生まれてきた道具だ。本来はどう使おうといいはずなんだ。だいたい、銃を持たせてバケモンどもの巣に放り込むのは良くて、ヤるのが問題ってのはどういう了見だ? 人道的? その二つに何の違いがある?
そもそも使い捨ての道具だと言うなら、わざわざ人格を持たせたのはどこのバカだ?」
「……嫌なことを思い出しちまった。
二人目のな。もうおっ死んぢまったが……ヤってる時に、あいつが言ったんだよ。
『私達は、私達にして、一人。一人にして、私達は、私達』。
意味わかるか?
ぼんやりと、こっちを見ながら、虚ろな目でそう呟いてたんだ」
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