#5 CANARY
「No.3367。Topia。役目はエピオルニスのパイロット。以上だ。
何。終わりではないのか。私の話を聞きたいだと。
貴殿に関係あることでもあるまい。それでもいい? 酔狂め。
このエピオルニスのことか。……ああ、わかった。いいぞ。機密に関わらぬ範囲で教えてやる。私は自分自身のことは詳しくないが、こいつには詳しいからな」
「正式名称は“対アノマリー戦闘歩行車両”。その丙型。全長約6m。左右に換装可能な専用大型武器のアタッチメントをもち、悪路踏破の為に長い二脚を備え、精密なオートバランサーのおかげで最高時速は約30km/h。
どうだ。勇ましいだろう。ロボット? なんだそれは。
エピオルニスはエピオルニスだ。今の武装は、右が12.7mm重機関銃に、左が二連装30mm榴弾砲。一般的な兵装だな。
これは確かに強力な兵器だが、ただの兵器運搬装置ではない。我々に課せられた最大の任務は、この武装と装甲をもって他のカナリア達の前に立ち、道を拓くことだ。いかにエピオルニスでも、単独となればアノマリー達の集中攻撃を受けて撃破される。重要なのは随伴歩兵との連携だ。パイロットはまず“自身が決して無敵の兵士でない”という点を最初に教わる。そして、我々は選ばれた者としてトゥエルブへと赴くのだ」
「一つ、頼みがある。その、すまないが…………背中を掻いてくれないか。
……。ああ……いや、助かった。この身体では、色々と便利はにいかなくてな。
いや、決して不満などではないのだが」
「不思議そうな顔をしているな。私の身体のことか。まあ、奇異といえば奇異か。
エピオルニスのパイロットになる際に、両腕は神経接続アダプタに置換される。そうしなければエピオルニスは動かない。我々は常にエピオルニスと共にあり、一体となる。それがパイロットの矜持だ。共に生き、共に死ぬ。いつでも覚悟は出来ている。
脱出装置がないのか、だと?
そのようなものは無い。パイロットたるもの自らの分身を放って生き延びられるものか。そもそも、それ以前に……あのトゥエルブの真ん中で両腕の無いカナリアが放り出されて、まともに生きて還れると思うか?」
「メディカルチェックの時間か。話は終わりだ。もう行くぞ。
ああ、待て……そうだ、もう一つ、頼みがある。
もしこの基地でパイロットが不便そうにしていたら、是非助けてやってほしい。貴殿は他の人間達とはどこか違う。雰囲気というか、な。うまくやってくれそうだ。
それでは」
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