#4 防衛部所属 ゲオルグ・タケウチ

「見てくれ。でっかいだろ。こいつは元々対空機関砲でな、この20mmをしこたま食らわせりゃ、どんなバケモンでもあっという間に吹っ飛ぶ。何しろ一分間に……何だ、あんまり興味なさそうだな。

 ともかく、こいつに火を噴かせるのが俺の仕事だ」


「正確には、俺と、あともう一人で管理してる。昼夜交代制だ。二人一組、ここにあるのは計十門。俺達に限らず、機関砲手は自分達の武器は自分達で整備する。それも大事な役目だ。どんな時でもかかさねえ。万が一でも、戦闘中に故障したらヤベぇしな。


 こいつで、時おり橋から来るアノマリーを追い払う。あくまで俺達は水際防衛だ。文字通り。どんだけの弾を撃って、どんだけのバケモンを吹っ飛ばしたか。もう覚えちゃいねえ」


「おっと、あんまり防毒面は外すなよ。こんな場所でも長くいれば肺がやられちまう」


「ああ。あの娘が向こうから歩いてきたのを最初に確認したのは俺だ。普通の帰還じゃねえ。確認した瞬間、思わずこいつをぶっ放しちまうところだった。

 いや――よく見えてたよ。見えてたけど、その、雰囲気がな……普通のカナリアのそれじゃなかったんだよ。

 あの場所じゃ何が起こっても不思議じゃねえが、アノマリーとあの娘と何の関係があるのかは知らねえ。それを探るのは学者サマの仕事だ。ただ、何かあったんだなっていうのは俺にも分かった。そこからは本当に知らねえ。役に立たねえで、すまんな」


「お察しの通り、カナリアどもの背中を見送って、出迎えるのも、何だかんだで俺達の仕事になってる。この位置だと、自然にそうなるんだ。

 もう随分多くを見てきた。あいつらはああいう生き物だが、無事に帰ってきた時にゃそれなりに嬉しい。この前なんて、ある娘に手を振ってやっただけで、帰還した後に告白されちまったんだ。顔も見えてねえのにな。いや、本気じゃねえよ。子供っぽい……ママゴトだよ、ママゴト。だが悪い気はしない。情をかけるななんて言われてるが、そいつは無理ってもんだ。機関砲手は大体そうだろう。ある意味、俺達はカナリアに一番近い立場の人間かもしれねえわけだしな。


 ……帰ってこない時にも、それなりに堪える。俺もトシだ。

 慣れたか慣れてないかで言えば、さすがに慣れちまったが。


 行って、帰ってきて、帰ってこない時もある。それをずっと見てきた。


 あいつらは、一体何なんだろうな。実験動物。本当にそれだけか?

 よく分からなくなってきたよ」

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