#3 CANARY

「あたし達みたいなのを、何でカナリアっていうのか、知ってる?


 へへ、せっかくだから、あたしが教えてあげる」


「鳥の名前なんだって。昔、炭鉱カナリアっていって、空気が悪い場所とかに行く時はその鳥を連れていったの。なんでだと思う?

 カナリアって、ずーっと鳴いてるの。それで、悪い空気とか、何かおかしなことがあると鳴くのを止めるから、それで気付くんだって。

 だから、ね。実験動物。トゥエルブに入れないヒトの代わりに、私達が行くの。あと、お喋りだから、っていうのもあるみたい。そんなにお喋りかなあ?

 あとね、カラフルで、可愛かったんだって。そこらへんはあたし達とそっくり」


「鳥のことなんか、見たことないけどね。ぜんぶ、友達から聞いたの。――もういなくなっちゃったけど」


「ね、おじさんは街から来たんでしょ。あたしも、休憩室でビデオ見てたの。何回も、何回も。街はキラキラしてて、みんなおしゃれで、おいしいものもたくさん。可愛いものもいっぱい。任務を終えたら、ぜったい街にいくの。お金? っていうのをもらって、たくさん遊ぶんだ。トゥエルブに行くこともないし、友達がいなくなることもない。どんなに楽しいかな。あたしだけじゃなくて、みんなそう考えてると思うよ。ここの娘たちは」


「なあに、これ? わ、可愛い。ぬいぐるみだ。


 ……くれるの? ほんとに?


 嬉しい! おじさん大好き! うん、絶対ナイショにする。お部屋のね、カバンの中に隠しておくんだ。ベッド作らなきゃ。


 でね、リボンついてるから、この子は女の子。名前は……うん、Primにする。


 友達の名前だよ。カナリアって鳥のこと教えてくれた娘の名前。帰ってきたの、Primが。


 Prim。いなくなっちゃったと思ったけど。


 帰ってきたんだね。おかえり」

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