誕生 Ⅰ

受精から10ヶ月後、ついにこの日が来た。




俺は母体にホルモンを送り、陣痛を与える。




陣痛の仕組みは、母体に眠る子がホルモンを送り、子宮に自らの体を締め付けさせる。


そうすることによって子が絞り出され、産まれてくる。




そう思ってる人も多いだろう。




実は、少し違う。




そもそも、ホルモンを分泌する理由は、母親の力を借りて自らを試しているのだ。




子宮に締め付けられ、それにギブアップしてしまうならまだ産まれてもいい体ではない。




出産予定日が近づくにつれ、ちょくちょく陣痛が起こるようになるのはそれが理由だ。




そして、出産の時、痛みを感じているのは母親だけではない。




子もなのだ。




先程の説明どおり、出産の時、子は子宮に締め付けられている。




子宮は、心臓と同じく筋肉の塊だ。


筋肉の袋に締め付けられ、それによって絞り出される。




こう見えて子もかなりの痛みに耐えているのだ。




説明が長くなった。




俺は、子宮に締め連れられた。


かなり苦しい。




当然、首や腹部、へその緒が締め付けられるため、呼吸ができない。




ゆっくりゆっくり俺は下に下ろされていくのがわかる。




そんな状態を数時間続け、そしてついに光が見えてきた!




「〜さん、頭が見えてきましたよ!もう少しです!頑張れー!!」




助産師さんだろうか、誰かが応援している。




母親の名前は聞き取れなかったが、ちゃんと人間ってことはわかった。




「おー!!出てましたよ!かわいい男の子です!」




俺は、無事に産まれてくることができた!




「おぎゃあおぎゃー」

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