第6話 日常は関係無く巡る

結局、土日の間は家から出なかった。


本来であれば食材の買い物とかもあったのだけれど、すっかり塞ぎ込んでいる様な私を見て何かを察したのだろうか、私に無理強いはせずに、聞こえたのは自家用車のエンジン音だけだった。


ベッドに寝転がったままの私は、まるで抜け殻のようにただその音を聞いていた。


                     *


たかが一個人の身に何が起ころうと、日は沈み、日は上る。

そして、学校に行かなければならない月曜日も当然の様にやってくる。


                     *


登校する。

学校に行くという行為。

それは、身体が健康的である以上しなければならない。

別にサボたって問題は無いはずだ。

出席簿の私の欄に欠席が一つつくだけだ。

お宅の〇〇さん今日学校来てないですけど、と親に連絡がいくだけだ。


結局それだけだ、といいつつ、高校生の私は謎の義務感に駆られてベッドから起き上がるしかないのだった。

高校生の評価というのは、そういうところで決まってしまう。仕方ないのだ。

とはいえ自分で言うのもなんだが、今の精神状態は最悪だ。

流石に外に出たくない、というレベルでは無いが、怖い。


外に出るのが、怖い。


また自分の所為で何か良くないことが起きるんじゃないかって、余計な心配が顔をもたげてくる。

ともあれ、今日は月曜日だ。と割り切れたかわからない気持ちをたたき起こして制服を着た。

いつも通り身支度を整え、朝食を摂って家を出た。


普段は自転車登校だが、今日は歩いていくことにした。




学校まで歩いて行くといっても、別に極端に時間が掛かるわけでもないし、雨の日は歩いて登校する。

いつもの通学路をいつも通りに歩き、学校に着く。

「おはよー」

いつもの友人に正門の辺りで会った。

普段であれば、自転車に乗ったまま駐輪場に直行してしまうので、ここで会うのは稀だ。

「おはよ」

「晴れの日に歩きって珍しいね?」

ですよね。

「―自転車パンクしちゃって」

無難な言い訳で躱す。

「そかー」

……変に追及されなくて助かった。

いつも通り朝礼が始まり、いつも通りに授業が進んでいく。

一旦建物の中に入ってしまえば安心……とは言い切れないけれども、あまり心配する必要が無くなるのも確かだ。

特に何事も無かった。何事も無かったかのように振る舞う。

時々あれが見えたりもしたけど、どれも些末なもので、気に留めるには及ばなかった。

気に留めるには及ばなかったけれども、心の何処かでは絶えず気にしていたのかもしれない。

それに気づいたのは丁度昼食を摂っていた時だった。


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