第5話 誰のせい?

私は知っている。

私が、何を行うか選択した時点で、私の行動は誰かに多かれ少なかれ影響を与えている事を。

それは、レストランのメニューを選ぶ時だって、昼食のサンドイッチを選ぶ時だってそう。

そこに、どんな思惑があろうと無かろうと関係ない。

人は、行動する限り誰かに影響を与え続けるのだ。

そして、その結果が見えてしまう私は、その事を誰よりも知っている。

知っているはずだ。


もしも


もしも、だ。


私が買い物に出掛けていなければ?

自転車で出掛けていなければ?

もっと急いでいたら?

逆にゆっくり走っていたら?

後ろから来る車に気づいていたら?

不注意であの車を止めてなければ?

あのタイミングで道路を横断しなければ?

もしあの瞬間何も見えてなかったら?

もしも―?


考えれば考えるほど出てくる。私の行動、選択。

そして、あの瞬間が見えたという事は、私の行動が少なからず関わっているということだ。

あの事故の原因に、本当に私は無関係なのか?


流石に考え過ぎだとわかってる。

他の人からしてみれば、私はただの被害者であり、目撃者だ。

でも、もし私が、行動してなかったら?

そもそもあんな惨事は起こらなかったのではないだろうか?

どこまでが本当で、どこからが違うのか。確かめる術は無い。

全部自分勝手な妄想に過ぎない。

でも、考えずにはいられないのだ。

もし、百%違うとしても、それを証明する術もない。

悪魔の証明だ。

負のスパイラルに落ちていく。

何かに縋るようにうずくまる。


―結局は、突然襲ってくるだけで、私にはいつも後悔しか残していかない。


今の私を、後悔以上の何かが襲っていた。




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