第4話 何処の痛み?

そこから後のことはあまり覚えてない。

散らばった食材をかき集めて無我夢中で家に転がり込んだのは覚えている。

あの音を聞いてすれ違いざまに玄関から飛び出してきた母親とすれ違ったことまでは覚えている。

その後は、夕飯も食べずに寝てしまったのだろうか。

ただひたすら、正体わからない恐怖に苛まれていたのは、感覚として心の底に残っている。


気づいたら朝になっていた。

あの時着ていた服のままベッドに横になっていたみたいで、グレーのパーカーには皺と転んだ時に地面と擦れたのだろうか、肘や袖の部分が所々破けている。

その破れ目を見た瞬間、身体のあちこちが痛み出した。

自転車で転んだのなんていつ振りだろうか。

何処かにあるであろう傷に障らないようにゆっくりとパーカーを脱いで、痛む肘を見てみたが、幸い打っただけで傷にはなっていないようだった。

でも、体のあちこちが痛い。

時計を見ると、本来はもう授業が始まっている時間だったが、今日は休みだ。

ベッドから起き上がるのも億劫なほど、身体が重い、痛い。

いや、本当に重いのは私の気持ちの方かもしれない。

起き上がるのを諦めて、天井の壁紙を見つめる。


「…………」


よく無事でいられたな、と他人事のように思う。

きっとあの場で私に何も起こらなければ巻き込まれて重傷を負っていたかもしれない、と思う。

実際の現場は殆ど見れてないから、もしかしたら私の身には何もふりかからなかったのかもしれないけど、でも。


怖かった。

ただただ怖かった。


突如見えた何か

私の脳味噌を一気に支配した、私の行動による結末。

激しい拒否反応に、無我夢中で動く身体。


全てが怖かった。


脱いだパーカーを持つ手が震えている。

全部他人事の様に見ていた。


他人事?

私は、本当に無関係?

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