第11話 たくとの心境
俺はいつもへらへらしていて、笑っている
そうすれば、相手は警戒心を解くことを知っているから
すべて計算づくだ
だが、俺でも計算ができなかった人物がいる
それが鋭理
服装、口調、声
どれをとっても男にしか見えなかった
しかし、鋭理は女だった
それを知ったのは俺と鋭理が高校にはいり同じクラスになったときだった
最初は普通に話していた
いたって、男友達と話すように
だが、なにかの違和感に俺は気付いた
この男はなにかを隠していると
あまり話したこともない
仲がいいとは言えない
それでも、俺は確信をもって言えた
鋭理は男ではない…と
正確に言えば
人格をもう1つもっているかのような
つくりものの偽物の匂いがしたのだ
俺は昔からそういう勘が鋭かった
そして、鋭理に問うた
「お前、なにか隠していないか?」と
もちろん仲良くもない
そんな相手にいきなり白状するわけがない
鋭理はごまかした
「俺はなにも隠していない」と
しかし、俺からしたらバレバレだった
どれだけうまく嘘を吐こうとも
人間の心理はそこまでうまくできていない
少しだけ瞳が揺れて
少しだけまばたきの回数が減った
それは紛れもなく
嘘を吐いている証拠だった
俺はそれ以上は追及しなかった
その時は
そして、またある日鋭理に聞いた
「本当に隠していることはないか?」
1週間に1回のペースで聞いたと言っても過言ではないぐらいには聞いた
そして先に鋭理が折れた
「親以外は知らないことなんだが、どうしてたくとがそんなに俺に聞いてくるのかわからないけど、仕方ないから教えるよ」
「誰にも言わないでね」
「俺は女だよ、普段は隠してる。その理由はおいおい話すよ」
鋭理が女
それを聞いたとき俺は
やっぱりか
という気持ちが強かった
驚きとか
裏切られたとか
そういう気持ちよりも
ようやく腑に落ちた感じがした
そして俺は鋭理にこう言った
「ありがとう」
鋭理は驚いた顔をして
どうしてそんなことを言うのか
という目をしていた
「だって、今まで誰にも言わなかったんだろう?なのに、俺に言ってくれてありがとうな」
俺は鋭理の心を読んだかのようにそう告げる
そして、時は今に至る
どんな回想をしようとも目の前の現実は
血の海
死体が転がっているということに変わりはないのだから
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