第9話 壊れた外道

『そんなの簡単なことだ』


簡単なこと?


『君たちは7組目の実験体だ。前のやつらは全然だめだった。つまらなかった。馬鹿みたいに、助けてくれと請うた。人を殺すことができなくて人に殺された。左に転がってるやつらは、2人殺した。王様である女を護るために。でも狂った、狂って女を殺して自分も自害した。そんなくだらないものがみたいんじゃない。つまらないものがみたいんじゃない。』


声の主はそこで息を吸った


そして、大きな声で言った


『俺が楽しめるようなものをみせろ!つくれ!殺しあえ!殺して殺して殺して血の海の中で我々が勝者だと笑え!』


声の主の丁寧な態度が消し飛んだ

まるで


まるで

それが本性だとでもいうように

それが自分だというように


声の主はいささか興奮しすぎたのだろう

咳払いをした


『そういうことだ。君たちはなにも考えず、人を殺していけばいい』


冷静さを取り戻した声の主はいう

『どちらが王様になる?』


それは

どちらが人を殺す?と問われているのと同じことだろう


それはもちろん

「鋭理」


たくとが俺に声をかける


「お前が王様になれ。俺がお前を護る」


巻き込まれただけの、なにも罪もないたくとがいう


「お前にはきついと思うから」


それは俺が女だからか?


そう…

俺は

いや

私は

鋭理は女だったのだから

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