第12話 決意・覚悟
その日、ソーラが起きたのは、昼近くになった。
宿の食堂に行くと、ステアが食事をしていた。
「あー、すまない、起きられなかったよ」
「なに、食事するだろ?」
向き合い黙々と食事を終え、今後のことを話し出す。
「一服したら、昨日の作戦通り準備して移動だな」
「そうだね、女神様たちは一両日中には現れるって言ってたからね」
「街の方は平気かな?騎士団長やギルドが動いてくれるだろうけど」
「正直予想はつかないけど・・・狙いはぼく等だ、街に居なければ被害は出ない・・・と思いたいな」
「あたいたちがうまくやらなきゃ被害が出るかぁ、きっついねぇ」
「さて、準備をしに行ってきますか」
「あたいも行ってくるよ、また後で」
二人は、自分のため、友のため、生き延びるための準備をする。
その夜。
街の倉庫が立ち並ぶ区域、その船着き場の桟橋に水面から手が伸びる、桟橋がきしみ悲鳴を上げる、大柄な体が水音を立てて上がってくる、藻を絡ませ、水を滴らせ、手にはロングソードを握っている。
その手の剣は、もはや電撃は放っていない。
魔力を放出し聖剣としての力を失った元聖剣、鈍く光るただの剣になってしまった。
倉庫の区域は、一般人は立ち入り禁止になっているのが幸いして、彼の姿を見咎める人影はなかった、彼はゆっくりと歩を進めていった。
最初に彼を見つけたのは、警邏中の騎士二人だった、倉庫街を歩く怪しい大男、手には剣を握っている、二人は顔御見合わせ腰の獲物を抜き警戒しながら声をかける。
「おい!お前!止まるんだ!ここは今、立ち入り禁止だぞ!ゆっくりこちらを向け!」
彼の歩みは止まらない、まるで獲物が居る場所がわかっているかの様に。
二人は顔を見合わせてうなずく、上から話を聞いていた「見つけても手を出すな、報告を優先しろ」緊急用のホイッスルを手に取り吹いた。
倉庫街の詰所に数十名の騎士団が居る、数名の魔導士も動員されている、騎士団長のタイロンも一緒だ。
警邏からの連絡が来て慌ただしくなる。
「よし!手筈道理に動け、ビクトリアには何かあったら迅速に避難誘導をするように連絡を、我々は何かあった時の足止めを全力で行う」
騎士団長のタイロンが沈痛な面持ちで、キビキビと指示をする。
「魔導士は彼女に強化魔法を」ソーラの方を向いて、タイロンが指示を出す。
「すまんな、一緒に戦うつもりでいたんだが・・・」
「かまわないさ、狙いはあたいらなんだ、無駄にケガする必要もないしさ」
笑いながらソーラが言う、怪我で済むはずがない、相手は魔物や魔獣、それに勇者を屠った相手なのだ、だが今回の策では手出しをしたら邪魔になるだけなのだ。
「負けるつもりはないよ、ギルドや騎士団から手持ちの装備で一番いいのをいただいたしね」
防具は軽く動きやすい装備で一番良いものをそろえてもらった、武器も良いものだ。
ミスリル合金製のブレストメイル、手甲、脛当て、下にはやはり合金製の帷子、腰にはショートソード2本、予備のナイフ、そして手にはウォーハンマー。
「それじゃ、おっさん行ってくるわ」ヒラヒラと手を振りながら、ニッカリと笑ってソーラが出ていく、数人の騎士と魔導士がその後に続いた。
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