第10話 二柱の女神

 声のした方にみな顔を向けると、そこにはボンヤリとした光に包まれた、10歳くらいの少女と20代と思われる女性が立っていた。


 少女の方は、磁器のような白い肌、銀の目とセミロングストレートの銀髪を虹色に輝かせ、白のワンピースを着て腕を組んでしかめっ面で立っている。

 女性の方は、長いウェーブのある水色の軽くウェイブがかかったロングヘア、深い青い瞳、こちらはゆったりとしたドレスを着ている、こちらは泣きそうである。


 唖然としていた一同だが、気を取り戻したタイロンが声を上げる。

「お前たち!どk」そこから先が声に出せなかった、パクパクと口を動かし驚愕している。

 少女が桜色の唇に指をあて『すまぬ、説明はするので静かにしておくれ』と言った、指を離すとタイロンの口から唸る声がした「わかった、話してくれ・・・」この少女にしか見えない何者かが何かをしたと理解したのだ。

 少女は話を続ける。

『我らは、ぬしらの言うところの神じゃ、本来は世界にあまり干渉できないのじゃが特例として姿を現しておる』

『わしの名は”ヨーグ”、こちらの乳やら尻やらがでかいのが、”ワーラ”と名乗っておる』


「ワーラ様って、水を司る慈愛の女神さまの?!」そこに居た全員が驚く、ワーラと紹介された女神は、少し誇らしげに『はい、そうです_______っ!』と、返事の途中で、スパーンといい音がして少女神に尻を蹴られた。


『あぁ、跪かんでもいい、はぁ、今回の特例というのは察しが付くかもしれんが、死んだ勇者と勇者を殺した魔物の事じゃ』

「まさか?!ヒカルとナココを生き返らせてくれるとか?!」ソーラが身を乗り出すように尋ねる。

『それは、無理です、先ほどヨーグ様もおっしゃったとおり、直接千歩するような事はできないのです・・・それに魂を砕かれています、復活は無理でしょう・・・』

 ヨーグという少女神は、女神ワーラよりも神格が上らしい。


『そうじゃ、よほどの事がない千歩なぞせん、ゆえに奇跡と呼ばれ、ゆえに代行者として【勇者】と【聖女】がいるのじゃ』

『その代行者たる【勇者】をむざむざ死なせるような事をしおって、この世界の柱どもは!』

 美しく弧を描いてる眉を歪め地団太を踏んで少女神ヨーグは続ける。

『だいたい神託やらなんやらで介入しておれば、忌々しい儀式も止めさせられたかもしれんのに、馬鹿どもが!もう一度全柱蹴り飛ばしてくれるわ!』

 おやめください、と涙目で止めている女神ワーラ、ここに姿を現す前に一度全員蹴り飛ばしてるらしい。


「あの・・・話が見えないのですが・・・」とショーンが割って入る。

「それに、儀式というのは?ぜひお聞かせ願いたいのですが」とステアが続く。


『あぁ、聡い者も居るのだな、すまぬな、順を追って話さねばな・・・』

 少女神ヨーグは、この世界の神々ではなく、次元管理神と呼ばれてるこの世界の外の神だという事だった。

 この世界の神々の依頼を受け少女神ヨーグは、次元と次元を繋ぎ異世界の勇者としてヒカルを転移させた(次元の転移に耐えられるだけの魂の素質がいるらしい)。

『でだ、”二匹目のどじょう”を狙ったのであろうが、事もあろうに、人の身で魔法による異世界人召喚を行なったのだ、この国はな』


 あっ、という顔でショーンが口を挟む。

「王都で爆発騒ぎがあったと報告があったがソレか!緘口令が引かれていたようで、詳しい話までは分からなかったが」

『不完全で稚拙な召喚術式で成功するわけなかろう、見事失敗して術者やらなんやら吹き飛んだ、とバカ者どもは思っておるのだが・・・』


 一旦間を置いて言葉を続ける。

『次元を繋ぎ向こうの世界からあるモノを呼び出しておったのだ、ヒカルの持ち込んだあちらの世界の物を触媒に使っておったからな、接触できたのだろう』

「それが、あの大男という事ですか?」ステアが問う。

『そうじゃ、彼方の世界の魔物であろうアレがここに現れたのは、術式が崩壊し投げ出されたのと、おそらくだが、アレが向こうの世界で馴染みがある場所だったのだろう』


「なるほど、では、その魔物・・・ヒカルを殺した大男は、異世界の勇者と同じ力を有している可能性はありませんか?」ステアが問う。

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