第5話 異世界勇者・ハーレムパーティー

 晴天の気持ちの良い日の夕刻、水晶湖の街に馬車でとある6人が到着した。

 王都から丸三日、中継地である街を二つ経由しての到着である。

 大きな城壁に囲まれた水晶湖の街の、これまた大きい入場門の脇には夜になる前に街に入ろうと馬車と人の列が並んでいる。


 街の中に入り、降り場の大広場についた馬車から、男が一人降りてくる。

「んー、やっと着いたかー」大きく伸びをしている男は、見た目10代後半、黒髪黒目でエキゾチックな顔の美青年といったところだ、大ぶりのナイフを腰に差し、簡素なシャツとズボンといった格好だ。

 名を、[ヒカル・コバヤシ]異世界転移者である。

「あまり揺れない馬車を貸してくれたし、クッションもあったけど、やっぱケツが痛くなるな」

 最後の街を出て、途中の村々で休息をとりながらの移動であったが、丸一日揺られていたので、ブツブツと独り言を言う。


 ヒカルの横を、スッと通り抜け案内板の所に走って行く、見た目10代前半、クリクリとした猫目で明るい茶トラ毛の猫族の子、名前は[ナココ]。

「ヒカルーこっちこっちー」

 小柄ながら均整の取れた体は華奢に見えるが、ホットパンツからスラリと伸びている足は、バネのような筋肉なのがわかる。


「ナココ!転ンで鼻でも擦りむいても知らねーぞー、低い鼻が擦り切れたら大変だぞ、メイサの回復魔法でも直せないかもしれないゼ」

 金髪ベリーショートの筋肉質20代前半の大柄な美女が笑いながら声をかける、馬車の旅で防具こそつけてないが、腰にはショートソードが2本、背には身の丈より大きい両手剣を背負っている、名前は[ソーラ]。


「ナココは転ばない!ソーラもメイサも早くこっち来る!」

 ヒカルの隣でニコニコとほほ笑んでる10代後半くらいの白いローブを着ている少女が[メイサ]プラチナブロンドロングヘアー碧眼の美少女である。

 メイサの一歩後ろで守るように歩いているのは、腰にはロングソード背にはカイトシールド、20代前半栗毛の髪を三つ編みにして垂らしている女、名前は[イルマ]。

「メイサ様は、ここに来られたことはあるんですよね?」

「えぇ、一度お父様たちと来たことがありますよ、こんなに大きい湖は始めてでびっくりした覚えがあります、温泉もありますよ、今は、へ・・・一般の方の施設もあるようですし、みんなで行ってみましょうね」

「おぉ!それは楽しみです」


 そして、さらに後ろにも美女が二人。

「馬車に揺られて来たのに、ナココは元気だな、ぼくは少々お尻が痛いよグラムドリン」深緑で統一された幅広の鍔のある帽子とローブを着込んだ、いかにも魔法使いですといった姿、髪で尖った耳が見え隠れしている20代後半のエルフの美女、名前は[ステア]がもう一方に言う。


「あ奴はむーどめーかーだから、アレでいいとヒカルが言うておったぞ、ステア」

 こちらは黒で統一されたドレスを着て、豊かな胸で長い銀髪のこちらも20代後半の美女、名前は[グラムドリン]。

「ムードメイカーねー?トラブルメイカーでもあるけどねぇ」

「そうじゃのぅ、元気なのは良いことじゃがのぉ」

 クスクス笑いあいながら、ゆっくりと歩いていく。


「よし、今日は宿をとって食事してゆっくり休もう、いや、まず食事かな?腹が減ったよ」とヒカルが言うと「そうだな、肉だ肉!あたいは肉が食いたい!山盛りで!」と「ナココはお魚―」とソーラとナココが同意するが、お前ら偏食直せと突っ込まれる。


「そうですね、ヒカル様は明日ちゃんと挨拶回りしてくださいよ、私も行きますから」とメイサが少し眉をひそめて言うと、「あはは・・わかってるよ、苦手なんだけどなお偉いさんとか」うんざりといった表情でうなずく。

「ヒカル・・・お前は結構重要人物なのがわかってると思ったんだがな?」

「一般ピーポーだった俺には礼儀作法とかきついんだよ、メイサのお付きでイルマも一緒だろ?いざと言う時は二人とも助けてくれよ」

 しょうがないという表情で苦笑いをしているメイサとイルマ、あと「イッパンピーポーってなんでしょ?」とこそこそ話している。


「さて、それじゃ食事だー!」「おぉー!」

 そんな、にぎやかな6人の様子を周りの人たちは生暖かい目でほほえましく見ていた。


 彼らは、勇者パーティー【女神の救い手】、駆け出し異世界勇者と仲間たちである。

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