第4話 小鬼の王国
『何でこんな事になった』
ゴブリン・キングは、恐怖で顔を強張らせてつぶやいていた。
縄張りの夜回りに行かせた奴らが何かにやられ、一人だけ戻ってきた。
何にやられたかわからないが、ギャーギャー喚くので首を切り飛ばしてやった。
こちらには500以上の兵が居るのだ、何が来ようと八つ裂きにしてションベンでもかけクソ溜めにでも放り込んでやればいい、そのぐらいにしか思っていなかった。
ゴキリ。
不意に何処かから聞いたことがある音がした、骨が砕ける音だ。
部下の一人、群れ一群をまかせている奴が、こちらを向いている。
ゴキリゴキリ。
一回り二回り、首が回る、痙攣し血泡を吹き白目をむいて。
ミチミチミチ。
腱を切り肉を引きちぎる音がする。
そいつの後ろにいる大きな人影が、首をねじ切ろうとしていた。
異様だった、どこから現れた?何時からいる?
ボロボロで薄汚れた服を着ていた、顔だけ見たこともない面をかぶっていた。
異様だった、その姿はなんだ?知っている人族とは違う、たった1匹で何をしようとしている?
大男の濁った眼には、何が映っている?
唖然としている、ゴブリンたちをしり目に、手にした刃を手当たり次第に振るっていく。
ザクリ、ボキリ、ザクリ、グチャリ。
顔面を切り裂かれ、頭を割られ、首を飛ばされ、あたりを血の色に染めていく。
気を取り戻し反撃をしようと群がり、槍を突き立て、剣で斬り裂き、斧で叩き斬る、が、大男は止まらなかった。
目玉が転がり、脳がこぼれ、はらわたが撒き散らされる。
恐怖がないわけではない、引いたら王に殺される、こちらの方が数が多いのだ、まだ倒せるかもしれない、それだけで王への恐怖が勝っていた。
アーチャーたちの撃った矢が、メイジたちの攻撃魔法が、彼をめがけて飛んでいく、毒矢が刺さり炎に焼かれ、一瞬もがく様が見れた。
『馬鹿が!死に腐れ!』追撃とばかりに、さらに矢を魔法を叩き込む、大男の体が矢にまみれ魔法で肉が焼けあたりに異臭が漂う、が、今度はまるで散歩でもするように、ゆっくりと、ゆっくりと、歩を進めている。
彼にとってはそれだけの事なのだ。
もはや打つ手がないゴブリンたちは、まるで草を刈るように、虫を潰すように、斬られ潰され血だまりの中の肉塊にされていく。
なぜ死なない?これは殺せない、俺たちは殺される、この怪物に。
キングが、足を引き逃げ出そうとした時、背中に何かが当たった。
ゾワリと背筋におぞけが走る、目の前にいた大男が居ない?目を離していないはずなのに、いつの間に?頭をつかんでいるのは誰だ?
グチュリ。
500以上のゴブリンを束ね、人族に争いを仕掛けようとしていたゴブリン・キングは、兜ごと頭を潰され、血と脳症をまき散らし、配下であった者たちと同じ肉塊と化した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます