第3話 冒険者ギルド

 水晶湖の街は、周辺国家最大領地を誇る、アルティア王国に属している。

 観光地として美しい景観、気候、豊かな森林に恵まれ、森林資源、鉱山資源をも有しており、かなり豊かな領地となっている。

 魔獣や魔物もいるが、森が豊かなので、街にちょっかいを出してくるのは、明らかに悪意をもったゴブリンやオークなど、それも街を作り始めたころにあったぐらいで今はない。

 だからと言って安穏としているわけではない、水晶湖周辺の領主イーノス卿は、駐屯している騎士団、そして街からの依頼で、周辺の魔物たちの動向を調査、危険な魔物の排除をしている冒険者ギルドで、犯罪や事件の対応をしていた。


 その日、冒険者ギルドは喧騒に包まれていた。

 森にゴブリンの動向調査を行っていた、冒険者の報告で、最近大規模になって注意をしていたコロニーが壊滅していた報告があったのだ。

 冒険者ギルドの貴賓室で報告を受けているのは4人、領主であるマイク・M・イーノス伯爵、騎士団長タイロン・B・エヴァンス、副騎士団長ビクトリア・B・オーティズ、ギルド長のショーン・ウォルトマン、4人とも苦虫を噛み潰したような顔をしながら報告を聞いていた。


 報告をしたギルド員が退室した後、報告のまとめ資料を見ながら「ふぅ」吐息をついた後、ギルド長のショーンが口を開いた。

「と、言う訳ですイーノス卿、緊急事態だと思い皆様方に御出で願った次第です」

 苦笑いしながら領主であるマイクが

「いつものように、マイクでいいぞ、ショーン。タイロンもビクトリアも見知った顔だ、堅苦しいのは嫌いなのは知っているだろ」

「まぁ、お約束だ、報告のあった通り500以上のゴブリンを、おそらく一人で、しかも魔法も使わず殲滅したヤツがこの辺をうろうろしてるらしい」


 ひげ面で熊のような体躯の騎士団長のタイロンも、あご髭をジョリジョリと触りながら渋い顔同意する。

「確かになぁ、飯の種の魔晶石も回収しない、アンデッドになるかもしれない死体も処理していない、そんな冒険者は居ないか・・・よほど恨みのあるやつ?酔狂な魔族とか?それにしても戦争を仕掛けようとしてる500を1人でかぁ、しかも魔法もなし・・・ジェネラルどころかキングも居たそうじゃねぇか」

 赤髪をポニーテールにしてる若い女騎士ビクトリアも口を開く。

「でもぉ~、ギルド長やぁ~団長ならぁ~500くらいいけそうですけどねぇ~」

「おいおい、無茶言うなよ、ビッキー」苦笑いをしながらショーンが言う。

「あいつらが行儀よく順番に来てくれりゃいけるかもしれねぇが、さすがに途中で疲れちまいそうだ、しかもキングとかめんどくせぇよ」

「はぁ、でもぉ出来そうなんですねぇ~、さすがはお二人ですねぇ~、尊敬しちゃいますぅ」

「いや無理だろ普通に、できて100が限度だわ。てか、褒められてんだろうけど、相変わらず〈素〉だとダメっぽいなビッキー」

 プッウとほほを膨らませて拗ねるビクトリア。

「ちげぇねぇ」とガハガハ笑いながらタイロンが相槌を打つ。


 引退したとはいえ、今だ現役のやつらには負けない自負がある、が、本音を言うなら、50が限界だろう、身体強化魔法込みならどうか?と言ったところだ、それも、ただのゴブリンでだ。

奴らは知性のない獣じゃない、ずる賢いゴブリンなのだ、強敵なら1対多で襲ってくる、協力し狩りに来るのだ、我々のように。


 膝をポンと打ち、3人の顔を見ながら領主のマイクが言う。

「まだ街の住人に被害があったわけではないし、周辺の調査の継続、街の警備の強化、住人への注意喚起と言ったところかな」

 皆無言でうなずき、その日は解散となった。


 騎士団の2人が帰った後、マイクとショーンはウンザリといった表情で話し合った。

「やれやれ、やることが山盛りだな、先日のサーペントの件もあるし、おかしなことが起こっているのかもしれないな」

「領主様は大変だな、うちは下に丸投げするか」

「はっはは、ひどいギルド長だな。サーペントか・・・あれも首を切られていたか?岸の方に来ないように魔物除けも配置しているし、あんな大物、底の方にしか居ないはずだ、潜ってわざわざ狩るやつもいないだろうしな・・・」

 そう、あのジャイアント・サーペントは、首を切られて絶命していた。

 ゾワリと嫌な予感がして、ショーンは『まさか、同じ奴が?』の言葉を飲み込んだのだった。

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