第2話 魔物・怪物・怪人
水晶湖はかなりの広さがあり、湖畔の観光を目的とした街がある、街の近辺は整備されてはいるが、離れると深い森に囲まれ魔獣・魔物の類が生息している。
ゴブリンの集落も深い森の中にあった。
この群れには、最近ゴブリン・キングに進化した個体がいる。
最弱モンスター、冒険者の餌、見つかったら狩られる存在、恨み憎しみを積もらせ人間たちに復讐する機会を、反撃するチャンスをゴブリンたちは狙っていた。
魔獣を倒し、青銅で武器を作り、間抜けな冒険者を返り討ちにし、持ち物をはぎ取った。
ゴブリン・キングは、群れを統率して力を蓄えつつあった。
彼が現れたのはそんな時だった。
縄張りの夜回りをしていたゴブリンたちは、湖底から上がってきた彼を見つけてしまった。
ゴブリンたちは、彼を見て困惑してた、湖底から岸に上がった彼は、藻を体中に絡ませ見たこともない魔物に見えた事もあったが、10数人のゴブリンたちを見たら、大抵のモノは逃げようとする。
だが逃げようともしない、戦おうとする意思もないように見える、殺気もない。
牙をむき出し武器を上げ威嚇しても、彼は濁り光もない瞳で、小首をかしげゴブリンたちを見つめていた。
「グギャ!」
リーダーらしきゴブリンの指示で、彼の周りを取り囲み一斉に攻撃を仕掛ける。
石槍で、刃こぼれした錆びた剣で、ぼろぼろの斧で、棘を付けたこん棒で、腹を突き、飛び上がり頭を打ち付け、喉を突き刺し、足を切りつけた。
「ギ?」ゴブリンたちが困惑の声を上げる、攻撃は全部当たっている、殺す気で当てた、死なないまでも致命傷になるはずの攻撃をした。
当たっているのに、死なないまでもひるんだり恐怖があってしかるべきなのに、目の前の何者かは、何事もなかったように立っていた。
彼にとってはそれだけの事なのだ。
あっという間だった、ゴチャリと湿った音を立てて、一番近くのゴブリンの頭が握りつぶされる。
マチェットで頭から真っ二つにされる、首を切り飛ばされる、頭を持たれ振り回されたものは首がねじくれて死んだ、無造作に振った拳にあたったものは、頭を潰され飛ばされた。
戦っているうちに、まとわりついている藻がはがれ彼の姿か見えてくる、おそらく〈人族〉であろう大柄な体は、ボロボロの見たこともない服を着ていた。
異様なのはその頭だった、頭髪のない頭に顔だけを覆う防具をしていた。
すでに3人ほどになり、血だまりに肉塊となったほとんどのゴブリンたちが沈んだ時、いまさらながら逃走を開始した。
これは、こいつは、得体のしれないものだ、手を出してはいけないものに手を出してしまった!
生き残ったゴブリンたちは、自分たちの集落に全速で逃げ帰って行った。
逃げ帰れば何とかなる、500人からの兵が居る、魔法使いが居る、強い将軍が居る、そして我らの王はさらに強い、どんな怪物だろうと倒せるはずだ。
集落までは、かなりの距離があったが足を止めずに走り抜け、集落に転がり込んだ。
生き残った3人は、何故か1人になっていた。
そう、逃げ帰ってしまったのだ、自分たちの集落に。
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