バカンスを楽しんでる場合ではない

バカンス編について&シオンとフォルト

 いつも読んでくださりありがとうございます。

 2巻の発売に伴いまして、2章を引き下げることとなりました。

 沢山読んでくださりありがとうございました。




 ◆◇◆◇





 フォルトとバカンス



 レーナ嬢はレーナ嬢で政略結婚であることをちゃんと受け入れ、そのうえで、ジークのひどい態度に目をつぶり、歩み寄っていたことは俺にとって晴天の霹靂だった。

 親は俺にだけ厳しい領主教育をさせレーナ嬢には自由にさせていたことを恨んでいたけれど……

 親はちゃんとわかっていたのだ。レーナ嬢の結婚は恋愛結婚ではなく政略結婚であることを。



 最初はレーナ嬢がジークに冷たくされていることをみて、領主教育も受けずに男を追いかけるからだと思っていたけれど。

 あれほど、冷たくされている相手と婚約が解消できない地獄を、俺の親は知っていたのだ。

 俺は確かに厳しい教育を受けたし、領主教育を受けたものが他にいるから、俺が領主になれるかはわからない。

 でもレーナ嬢とは違って、領主にならない道がないわけじゃないし、自分を嫌っているだろう相手と無理に良好な関係を築く必要がない。ましてや結婚なんかぞっとした。

 俺は自分の浅はかさを恥じた。



 だから、夏休みは一度大きな事件もあったことだから、一度領地に帰ることにしたんだが。

 公爵様から俺に一つアンバーの人間として頼まれごとが来た。

 

 レーナ嬢と血の盟約を結んだシオンを、『必ず』アンバーに穏便に連れ帰れということだった。

「事件のこともそうだが、血の盟約を結んでいるからこのままというわけにはいかない」としか俺には告げられていないが……


 俺は、嘘が苦手だ……どうにか穏便に済めばいいんだが……




 ◆◇◆◇



 シオンとバカンス



 レーナ様の父である公爵様から、今回の事件のことで改めて話を伺いたいと申し出があった。

「これは、あくまで任意で強制ではないんだが……」

 申し訳なさそうな顔でフォルト様が夏休み、自分と共にアンバー領に僕に来るようにと説明をしてくれた。

「やましいことがあるわけじゃないんで、かまいませんよ」

 フォルト様にはそう答えたんだけど……

 興味なさそうな表情とは裏腹に、僕の心はかなり動揺していた。



 だって、待って、待って、待って……

 レーナ様の父親ってことは、アンバー領だよね。

 あの、屈指の観光地であるアンバーに僕に来いって言ってきているんだよね。


 当然領主でもある公爵様が、アンバー領の僻地に住むはずもない。

 一番栄えているところに邸宅があるに決まっている。

 青い空、青い海、どこまでも続く白い美しい砂浜……それくらい、庶民の僕だって知ってる。

 だって、屈指の観光地だし、アンバー領で海の見えるホテルに滞在するとか庶民の憧れだもん。

 ただ、屈指の人気観光地とあって、僕が行く機会などこれまで当然訪れるはずもなかったし、庶民ではせいぜい観光に行くなど、一部の富裕層か……新婚旅行くらいだ。

 そんなところに、公爵様からの事情聴取もかねてだけれど、僕が行く……


「あーーー青い海って何? 海ってどこも同じじゃないの? 屈指の観光地ってどれほどのものなわけ……これまで観光地に行くとか考えてもみなかったからどうすればいいかわかんない!!!!!」

 バフバフと部屋にある枕を殴ってみても、解決策が思い浮かばない。

 かといって、レーナ様に聞いたら、シオン知らなかったの? 的な顔を一瞬でもされたらイラッと間違いなく思う。



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