第10話 どたばた
結局リオンの脅威を説いたところで、私に下せるくらいならたいしたことない扱いをされるだろうとの結論になってしまった。
窓の外は観光地……青い海に白い砂、そして白で統一された美しい建物達……
観光地に浮かれるいちゃつくカップル、水着姿の若者たち……を私は窓からギリギリと睨みつけていた。
最初の2,3日は仕方ないよねって気持ちだったけれど、それはだんだんと怒りと苛立ちに切り替わる。
フォルトからは相変わらず連絡はなく、手紙を送るのは今は控えたほうがいいとジークにハッキリと言われてしまう。
となると、アンナとミリーをホテルに呼んで部屋で女子会を開催しようと思ったのだけれど、それも跡取り問題でもめていることもあるのか、いい返事は頂けず。
「何で私がこんな目に……」
私夏休み何をやっているのだろう状態だった。
ジークのホテルに滞在して5日目の夜。バタバタと廊下が騒がしくて、ランプを片手に夜も遅い時間だというのにドアをそっと開けた。
24時間代わりばんこに常駐しているメイドが私が部屋から顔をのぞかせると。
「すみません、レーナ様はお部屋に」
手短にそう言われてひっこめと言われるけれど。何かが起こったのは間違いなくて引っ込んでもいられない。
メイドとドアの辺りで、押し問答している横をジークが寝巻に羽織をはおった状態で眉間にしわをよせ不機嫌そうに早歩きで私の部屋の前を通る。
紺色の寝巻姿にも関わらず、ジークは右手に剣を左手にランプを握りすたすたと早足に歩く。
普通は寝巻姿で外に出るだなんてありえない。
私とは違い、ジークはきちんとしているので寝間着姿のままでうろうろするようなタイプでもない。
「ジーク様」
それだけジークが急いでるのはわかっているのだけれど、いったいそんな格好でジークが外に出なければいけないだなんて、何が起こっているのかと思わず声をかけた。
メイドも流石に、私がジークと会話を試みたことで、扉の前から少しずれる。
「レーナすまないが後にしてくれ」
ジークはちらりと一瞬だけ私に視線をやると、そう言ってすぐにエレベーターに消えてしまった。
私達は正直なところ普通は寝巻姿でうろつくなどあり得ない。
ジークは上に外出用の羽織を寝巻を隠すために急遽軽く羽織っただけだった。
私の家にジークが長いこと昨年は滞在していたけれど、正直ジークの寝巻の姿などたったの1度も私はみたことがない。
男女間ではあるけれど、メイドや従者がいるので二人きりにならないので、割と夜中でもリビングであれば私達は行き気することができた。
たった一度だけ、暇だからと真夜中にジークにカードゲームでも起きていたらしないか? と私の部屋の前に待機しているメイド→ジークの従者→ジークの伝言ゲムで承諾してもらったときは。
ほんの10分もしない間に、ジークはいつも通りきっちりとした服装でリビングに現れた。
今日はそのほんの10分の最低限の身だしなみすら整える時間すらジークは惜しかったのだ。
わかるはずもないけれど、窓の外を自室から眺めてみるけれど。
見えるはずもなく。
かといって、眠ることもできずに私は部屋の中をランプを持ちうろうろとしていた。
2時間もたっただろうか、廊下が再び騒がしくなった。
ジークが戻ってきたのだろう。
いてもたってもいられず、私は再びドアをあけて廊下をのぞいた。
そこには、ジークが先導して、その後ろにジークの従者であるカミルとシオンがフォルトに肩を貸しては入ってきたのだ。
フォルトに何かあったとみて解った。
「フォルト!」
私が部屋から出ようとするのをメイドが制止する。
「カミル二人を連れて中に」
ジークは手短に指示を出すと、私の下にやってくると寝巻の上に羽織っていた上着をぬいで私にかける。
「ジーク様一体何があったのですか?」
「今からきちんと君にも話す、私も含め異性が複数人いるんだ。寝間着姿のままうろつかないでくれ」
ジークがそういって控えているメイドに目くばせすると、メイドが私の横に来て何やら耳打ちをしてきた。
「レーナ様、そちらの魔具のランプをお持ちになると、寝巻が……」
メイドがそういって言葉を濁したことで、外商に持ってこさせた新しい寝巻がそういえば魔道具のランプの灯りで透ける厄介な代物だったことを思い出す。
私の服の秘密を知っているからこそ、ジークは慌てて上着を脱いで駆けてくれたのかもしれない。
焦る気持ちを抑えて、メイドに手伝ってもらい手早く私は着替えさせてもらう。
いつもハーフアップにしてもらう髪も今日はそのままで。
部屋を出ると、廊下には灯りがともされていた。
メイドに先導されて、ジークの部屋を訪問すると、テーブルを囲んで、何やら3人で話しこんでいたようだ。
ジークも私同様、服を着替えていた。
私が部屋にはいるとジークの隣が開いていたのでとりあえず腰をおろした。
シオンは不機嫌な表情でジークも難しい表情をしてるなか、フォルトだけがいつも通りの表情をしている。
部屋に運び込まれた状態からして、フォルトに何かあったのだと思う。
「こんな夜更けに一体どうしたの?」
フォルトに向かってそう切り出す。
「レーナ嬢久しぶりだな」
私の意図はわかっているだろうに、いつものトーンでフォルトが私に挨拶をしてきた。
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