第8話 エロ本
ジークはゲームではミステリアスな要素が多かった。
まぁ、原因は魔子関係のせいかもしれないけれど。
庶民のヒロインがジークの部屋を訪問するシーンなどは当然ない。
クライスト領の部屋はなんか物がなかった。
でも、此処は違う。さり気においてある小説一つとっても、恋愛小説ではなく、歴史小説だったりとジークの好みのものなんだと思う。
いや、これはゲームではちっとも明かされなかったジークのプライベートを暴くチャンスなのだ。
瞳と同じ碧色のモノが多い、好きな色なのかしら。
ジークが簡単に部屋を案内してくれるから、私は遠慮なくじろじろと部屋をみる。
「後は、奥に私の寝室があるくらいで一通り案内はしたかな」
ジークがそういって、肝心の寝室に案内をする前に案内を切り上げてしまう。
いやいやいや、寝室も見せてくださいとゲスな心がちらつく。
「ジーク様の寝室を拝見しておりません」
やんわり見せるつもりがなかったようだけれど、ちゃんと全室見るわよ私は。
某ゲームのように、いいアイテムがないか箪笥やら壺を割ったりしない分、私のほうがまだ素行はいいと思う。
「……わかったよ。こっちだ」
そういって、半ば強引にジークの寝室を拝見する。
大きなベッドは中央に置かれるというのは金持ちのお約束なのだろうか。
ベッドを隅のほうに寄せるのは、狭い部屋をいかに有効的に使うかに特化してるからで、部屋自体が広ければ、寝室は寝るのがメインだからベッドが真中なのかしら。
私の部屋とは違い、ジークのベッドは天蓋付きではなかった。たた、ホテルだからなのか、枕がいろんな種類がベッドメイキングされ並んでいる。
「左手にある扉は、洗面所とトイレと簡易なシャワールーム。奥にもう一つある扉は、衣装室につながっている。と言っても、女性ほど大きな衣装室ではないけれど」
当たり前のように、部屋にトイレ、洗面所、風呂が隣接している。
後は、サイドテーブルに椅子が一つか……
テーブルの上にはレターセットがおかれている。
さて、思春期男子の部屋ではお約束のベッドの下もしっかりとチェックしたいところだ。
みられて困る物は此処にたいてい隠すと決まっている。
私がサッと屈み当然のように寝室のベッドの下やベッドの裏を確認し始めるとさすがにジークが私に声をかける。
「レーナ……何を……」
貴族だから寝室ですら、メイドや従者が掃除するので、部屋に人は入りなれている。
とはいえ、ガッツリ私がベッドの下を漁ると思ってなかったジークが咎めるかのように私の名前を呼ぶ。
そして、私はベッドの下の床ではなく、わざわざ見つけにくいようにベッドの上部に張り付けるかのように何か包み紙があることに気がついた。
寝室のベッドに隠された、厳重な物……美しい容姿で人にはあまり興味がなさそうだけれど、彼も人の子。
私達は庶民と違い寝室も普通にメイドが入り、私のプライベート何のそのガンガン掃除されるのは身をもって経験している。
手を伸ばして迷いなく取ろうとする。
なんておもしろいものを見つけてしまったんだろう。
手にとって、ニッコリとジークにほほ笑む。
重さと触った感じ的にこれはおそらく本だ。
その辺においておけないから、こうしてメイドの目にとまらないベッドの裏に見つけにくい色の封筒にいれて隠してあったのだ。
「これ、なんですの?」
ガッチリと両手で抱きしめてジークにあえて質問する。
ジークは髪をかきあげてため息をひとつついた。
「本だよ」
「面白い本なら見せてくださいませ」
そういって、包み紙を開けようとするけれど、開かない……
開かないとやってるとジークがやってきて私から包み紙を取りあげた。
そりゃそうだ、エロ本だとして、簡単に中を見せてくれるはずもない。
がっかりとしていると、ジークが私の目の前で包み紙を解いた。
「これは特殊な封をしてるから私にしか開けれないんだ」
なるほど、そうやれば、メイドにプライベートを暴かれないわけですね。
そうですよね……
あぁ、せっかく面白そうなものだったのにと思っていたら、ジークが出てきた本を私に差し出してきた。
「見てもいいの?」
思わず素で聞き返す。
「あぁ」
さて、一体何がとワクワクしてページを開く、いきなり過激なページだったらどうしましょう。
最後の奥付からみてみようと一番最後のページを開くとそこには見慣れた一文があった。
『知識を得た者による次なる悲劇を繰り返さないことを望む』
秘密の部屋においてある本に必ず書かれている一文だ。
でも、あの秘密の部屋にあたらしい本を持ち込むことは可能でも、本を持ち出すことは不可能だったはず。
どうして……
その理由はすぐに解った。
一番最後に達筆な文字で。
クライスト領 公爵家 嫡男 ジーク・クラエス と〆られていたからだ。
私も魔剣と魔子退治について、歴史の表には出せなくても、真実をどこかで残しておくべきと判断し、リオンに頼み秘密裏に本を作らせていた。
ジークもあそこで私よりもはるかに膨大な本に目を通した。
そして歴代の本をそこに寄贈した、秘密の部屋にまるで運命かのように入り方を知り利用した生徒と同じく、表に出せなくても残すべき知識や歴史の真実を本にしたのだ。
「これは、秘密の部屋に納めるつもりのものですね?」
「あぁ、そうだよ。あそこには、クライスト領で起こっていた歴史の真実を残しておいたほうがいいだろう」
「そんな大事な本をこんなところに置いておいたら中をみられたらまずいのでは?」
「だから、私にしか開けれない封をしておいた。後、普通はあんな風にベッドの下をガッツリと調べはしないと思う……」
「いえ、調べます。間違いなく、ジーク様がどのようなエロ本に目を通すのか気になるメイドはベッドの下なんて当然探します」
大真面目な話だ。
「へぇ……」
ジークの顔からいつもの愛想笑いの笑顔が消えて急に冷たい無表情に変わる。
エロ本を探していたことがばれて私はサッと青くなる。
久しぶりにみる、ジークの冷たい顔は恐ろしかった。
「やけに熱心に私の部屋を見て回るかと思ったら……」
「で……出来心でつい……落ちつきましょう、話し合えば解り合えます」
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