第6話 髪が短いのはやっぱり駄目
「あのさ、髪が短いからやっぱり無理があるんじゃない?」
ショートカットの美少女の完成……と思っていたけれどやはり髪が短いのはこの世界では問題があるようで、私にすると十分女の子に見える仕上がりだと思うけれどシオンにしたら明らか男装じゃんと髪が短いことで思うのかもしれない。
ハァと一つため息をつくと、シオンは観念したのか、そのまま私よりも先に寝室から出ていった。
では、本日の一番やりたかったことをやりましょう。早速シオンとアンナを並べてみる。
身長差といい、絶妙である。
「あとは髪が長ければ完璧ですね」
ミリーが真剣な顔で並ぶ二人をみてそう言う。
「髪が短くても可愛いと思うけれど……」
顔が可愛いから元の世界だったら男の子ですと言わない限り、女装だとわからないと思う。
「髪が短いということは、髪を売った後ということであまり周りの人はいい目でみてくれないのです。娘の髪すら売らせるほど困窮しているということにつながるので……。平民であっても短い髪の女性というのはほとんどおりません。他の国では短い女性もいらっしゃってこちらに病気で髪が抜けてしまった人などのカツラに提供してくださっているそうですが……やはり短い髪の女性には抵抗がありますわ」
アンナもそういうのだ。
髪が短いことはそんなに駄目なんだ……前も髪が短い人いないなぁと思ったけれど。そういうことだったのか。
そんなこんなで目が死んでるシオンとノリノリの私達でキャッキャとした。
「二度とこういうことには巻き込まないで、もう二度とだよ! こういうことで使うなら盟約のことも考えるから」
そういって疲れた様子でシオンは化粧を落とし去っていった。
シオンは本を返しに来ただけでひどい目にあったようだ。
ずいぶんと遊ばせていただいたから今度疲労回復になる何か送ろうかしら。
そういえば、シオンはあまりお茶を飲まない、リオンも茶葉は高級と言っていたからシオンにはなれない味なのだろうか。
リオンにハーブティーについて教えてもらって、ちょっとシオンにごめんねの気持ちも込めてプレゼントしようかなと私は医務室に向かったのだ。
医務室は休日だったこともありリオンはいないようだった。
あら、空振りか。
でも扉が開いていた、すぐ戻ってくるつもりで施錠してないのかしら? なら、中で待たせてもらおうと医務室に入った。
棚を眺めていると見たことのある封のものがあった。
あっ、これは朱封蝋だ、私もやったことがあるからおそらく間違いない。でも開封してある。ちょっとだけ中を見た。
それは報告書のようなものだった。
パラパラと眺める。
おそらくアンバーでの事件の際に捕まえた人の名前、教会での役職、現場ではどこにいたか今の処遇など実に細やかに書かれていた。ただ一人を除いて。
そのただ一人というのは、クライストの魔法省で私とシオンを襲った男だった。
その男の欄には服薬死と書かれていたのだ。
魔法省の制服を所持していたこと。
捕まえた教会の他の人物に死体を見せたが知り合いではないという回答だったこと。
毒のせいでわからないがそれなりの技量を持っていただろうことから、教会とは無関係な人物と思われると締め括ってあったのだ。
思わず書類を持つ手が震えて書類が床に落ちる。
戻さなきゃとあわてて拾い封筒にしまおうとしてところで走ってくる足音が聞こえて私はとりあえず拾えた書類ごと怒られるとベッドの下にはいった。
「くそっ、あのアマ」
不機嫌なリオンの声だった。
私には見せたことないくらい口調が悪い、こちらが彼の素なのだろうか。
扉は開けられ地面に散らばった書類に気がつくと、すぐにリオンは走ってきてそれらを拾う。
ページを数えているが私が何枚か持っているから当然たりない。
ヤバい、リオンの機嫌も悪そうだし、とっさに隠れてしまったけれど出ていける空気ではない。
音をたてないように様子を伺う。
ジャラリと音がしてリオンが懐中時計を取り出した。
「10分の間にやられたか……。マギアナは私をおびき寄せる役でもしていたのか…………」
知らない人の名前を呟くと足早にリオンは医務室を後にした。
とにかく書類を戻して……出直そう。
私は今日ここにはこなかった。
私はここに来たことをなかったことにしたかったのだけれど扉に手をかけたけれど開かない!? 施錠されている。しかも内側から開かないタイプだ。
落ち着け私、ここは一階だ。
私が出られるサイズの窓もあるからそちらから出ればいいのよ。令嬢は窓からは出られないだろうけれど私は違う。
よくみるタイプの窓の鍵だからすぐに開けられたけれど窓か開かない。
鍵は間違いなく開いているのに、窓が開かない。窓を開けることを阻害している物がないかよく確認したけれど、やっぱり開かないのだ。
待っていればリオンは帰ってくるよね?
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