最終話 アメの話

 アメはそれでもいいとはっきり告げて、真っ白いよく目立つ、よく動く頭を下げた。その姿が本当に白くて綺麗で、何度もそう思ってきたのに今までの感覚をはるかに超えるとても美しいものに見えた。それなのにそんなアメを見ているのが辛くて、サヤも目を伏せる。



「いつか私もそなたらのまちに行こう」



 ミカの声にアメは顔を上げ、嬉しそうに笑う。



「ぜひいらしてくださいね!!」







 〇〇〇〇〇〇






「よいしょっ」


「サヤ!そっちもうちょい!!」


「サーカさん引っ張りすぎるからだって、ば!!」


「お父さん?寝てるの?雨降りそうだよ?」


「え、俺らがこんなガンバッテるのにダンナ寝てるの?」


「え、ヒドイ。ダンナヒドイ!!」



 木陰で寝転ぶ父を覗き込むアメ。リブーゴたちが作業をやめてわらわらと集まってくる。



「あ、こら!」


「いいよーサーカさん!雨が降るから休憩にしよう?」


「そんなじゃ終わらないわよ?アメ?」



 サヤが呆れながらハシゴから降りてきて、ボコチを撫でにいく。



「いいんですよ!みんながゆっくり暮らせるところがあればいいんです!それだけでいいんです」


「ほんと、いい子になったなあアメ」



 父は起き出してアメの頭を撫でる、恥ずかしそうにだけど嬉しそうなアメの髪は、もう真っ黒で。





 彼女はアメ

 あまーいお菓子でもなく

 異国の名でもなく

 神への祈りでもなく


 空からただ降り注ぐこともない


 時の流れにそって老いてゆき

 真っ白な頭になっていく


 彼女はアメ

 もう旅には出かけない

 彼女は自分が何者か、もうわかったから


 アメのまちは

 小さくて山に囲まれていて

 空気が綺麗で

 空が高くて

 いろんな生き物が一緒にいて

 時々奇跡が起きて

 時々旅人が訪れて


 アメがよく降るまち


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