アメのまち

新吉

第1話 朝の話

 鳥が鳴いている


 日差しが差し込んで来る


 遮るものが何もないから


 わたしたちは起きる


 空はいつも遠いけど近くにあって


 いつでもわたしたちの上にある







 〇〇〇〇〇〇







「おーう!アメ!転ぶなよ」


「あ、サーカさん!!ヨーハオ!」


「ヨーハ、今日はどこまで?お嬢さん」


「お買い物!ふたつとなりの街まで!」



 カゴを見せるアメ。彼女の朝の日課、朝ごはんを食べたなら買い物に出かけて、お昼と晩の準備をする。ここはサーカさんの家。彼はアメの容姿とは似ても似つかない熊のようで大きくて肌も浅黒い。空も飛べば素早く走りもするボコチを飼っている。大きな翼と足と目が特徴で人懐っこい。基本放牧しているが、こうして住民の移動にも重宝している。愛称もある。



「ボーちゃん、今日もよろしくね」



 翼を広げて飛び立ち、ボコチは目的地へ向かう。風圧がかかり過ぎぬよう、振り落とされぬよう絶妙に飛んで行く。


 山々を眺めて、これから行く街を眺める。小さな人がこちらに手を振ってくれている。手を振り返す。



「ねえ、うまく売れたらボーちゃんにも何か買ってあげるね」



 その声に嬉しそうに喉を鳴らす。




「またねー」


「アメちゃん、なるべく、早く頼むよ?」


「はいはい!」



 ボコチがちょっと苦手な門番のお兄さんはいつもそう言う。でもいつも預かっていてくれる。


 この街はアメのいる町とは違って、いろんな色が混じっている。賑やかで華やかで欲しいものがなんでも揃う。目移りしてしまうが、魚屋をめざす。この魚屋さんにくるのは2回目。おばさんが優しいんだけれど厳しい。



「こないだの嬢ちゃん?山向こうの?なんであんなとこにいるかねえ」


「住んでいるからです」


「そうゆう意味じゃないんだよ、どれ、見せとくれ」



 アメは父親が山からとってくる鉱石を見せる。どれもアメが丁寧に磨き、小さいものは色とりどりの糸と合わせて腕輪や首飾りにしている。



「今回のはまあまあいいじゃないか!ほれ!持ってきな!!」



 なかなか大きくて美味しいお魚と交換になった。通りすがりのお姉さんが、そのおばさんがこれがいいと持っていった大ぶりの指輪を見つける。



「ええ!?これ!!え、あの子っ!?」


「しっ!いいんだよ、あの子はそれでまっとうに暮らしてるつもりなんだ。父親とやらの教育なんだと」


「誰か何か言ってやらないの?」


「門番が許して中に入れてるんだ、ここが違う国だともわかってないようだって言ってたよ?質のいい鉱石を物々交換して、我が国がそもそも彼女を騙してるのさ。私ら国民はみんなそう。あんたも旅人か観光客かい?お国事情に首突っ込むと痛い目見るよ?」



 彼女は何も言えなくなり、その魚屋を後にする。そして何かを決めたようで、人混みの中真っ白いよく目立つ頭を追いかけていく。

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