第122話「Exhibition-3」
西海岸に夕日が沈んだ頃、その放送は始まる。
「三億のGTWファンのみんな! 昨日のアレ、見たか?」
画面いっぱいに、見たの一言が大量に流れ、中には長々と解説を始める者も居るようだったが、余りのコメント数に、画面から早々に押し出されていた。
「いやー、ホント、驚いたよな! あの後、すぐにでも放送したかったんだが、色々と今日の打ち合わせが在って……その色々ってのも、すぐに言いたい内容なんだが、それはひとまず、置いといて。まずは、シリアルキラーとネメシスの闘いからだ。いや、俺の目には若干シリアルキラーが押してたようにも見えた。みんなは、どう見えた?」
多種多様な意見でコメントが画面を埋め尽くす。
ダニエル・フィッシャーは、その中から、多そうなコメントをチョイスした。
「オーケーオーケー、言いたいことは何となく解る。無影剣を使ってないって、言いたいんだろ? だが、俺はシリアルキラーの激しい攻撃に、使いたくても使えなかったんじゃないかって思ってるんだ」
あぁ、俺もそう思う!
そんな訳ねーだろ!
賛否両論の意見が激しく飛び交うのをダニエルは制し、自分の考察を語り始めた。
「なぜ、俺がそう思うかと言うと、ルイスの存在だ」
最近じゃ、5連敗もしているルイスに、何があるって言うんだよ!
「そう、それだよ。可笑しくないか? ルイスの対ネメシスの戦績は、11勝7敗だ。最初にルイスがネメシスに負けたのは、4戦目で……あれは間違いなく、無影剣だった」
それが、どうしたってんだよ!
「いいか、よく聞け、その後、ルイスはネメシスに勝ってるんだ。つまり、ルイスは無影剣の対策が既に出来ていたんだと、俺は思うんだ」
だったら、5連敗もしないだろ?
「違う、違う。ルイスは、無影剣の秘密を知りたくなったのさ」
「そうだ。そして、そのルイスの最初の対策は、ネメシスに無影剣を打たせる隙を与えないことだと、俺は思っている。如何かな? ルイス!」
ダニエルは振り返り、その解答をゲストに求めた。
現れた人間に、視聴者は興奮し、その名が画面を覆い尽くす。
「よろしく」と言って、ルイスはカメラに手を振る。
「改めて聞こう、俺の考察は?」
「ほぼ、正解だ。ヤツをフォローする訳じゃないが、正直、3回目までは、なにがなんだか解らなかった。その後、勝ちと負けの違いを考えた時、君と同じ答えに達したんだ」
「ということは、ルイスは無影剣の秘密に辿り着いた?」
「あぁ、だが、確実に破る保証はないかな?」
「もしかして、ルイスがサーベルタイガーに、無影剣の対策を?」
「いや、アイツは、たった一回戦闘履歴を見ただけで、その秘密に気づきやがった」
「ということは、刀身が落ちたアレは、やはり無影剣?」
「そうだ」
まじかー!
ホントかよ!
無影剣、逝ったぁぁぁーッ!
無影剣が終わったというコメント見て、ルイスが修正に入る。
「いや、まだ無影剣は、通用すると思うぞ。ただし、サーベルタイガーとシリアルキラー以外だがな」
「ルイスも、まだ喰らう可能性があると?」
「フォークボールが来ると解っていても、確実に打てるとは言えないってとこだな」
「サーベルタイガーとシリアルキラーは、確実に打てる?」
「あぁ。ヤツらは、俺たちと同じ次元には居ない。間違いなく、今日、最強が決まる」
まだ、ラグナが居るだろ!
「ラグナなら、昨日、散々、シリアルキラーにやられたよ」
えぇぇぇぇーーーッ!
おい、履歴にねーぞ!
「当たり前だ、サーバーが違う」
ずるいぞー!
見せろー!
そこへ、ラルフが登場し、それに答える。
「解った解った、観れるようにデータを移しておく。ちなみに、他にも、サーベルタイガーがローレンスに13連勝しているデータが在るが、それはいいか?」
「余計なこと言ってんじゃねー! 追い出すぞ、ラルフ!」
悪乗りした視聴者が続々と「それは要らない」と、コメントが流れ出し、今度は視聴者に切れ始める。
「まぁまぁまぁまぁ、ローレンス、落ち着いて。という訳で、本日も、ここゴーゴル社の一室をお借りして、放送しております」
ダニエルは、テーブルに置いてあった水を一口含み、喉を潤すと、再び、話し始める。
「さて、一旦、置いていた話をするぞ。ラルフ、今回の決勝戦、新エリアになると伺ったが?」
新エリアという言葉に、視聴者は驚くも、地球で行けないところは無い、一体、それが何処なのか、ラルフの答えをジッと待った。
「月だ」
その一言で、聞こえない筈の歓声が聞こえてくるような、歓喜に満ちたコメントが画面を埋め尽くした。
「もちろんだが、重力も、6分の1にしてある。しかもだ、時間は掛かるが、地球から月も、月から地球にも行ける。そう、今、プレイ中の諸君! 君たちが今、見ている月に、サーベルタイガーとシリアルキラーが居る」
「さぁ、そろそろ時間だ、ラルフ、スタートの合図を」
「Ladies and gentlemen, start your engines.」
刀真は、コックピットに座り、瞳を閉じて呟く。
「いよいよだな」
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