第120話「無影剣の謎」

「ネメシスはもしかすると、剣聖というより――魔術師かもしれへん」


「はぁ? 魔法でも使ったっちゅうんけ?」


にいやん……」


 呆れて首を横に振る弟分に、慌ててボケであったこと主張する。


「なんじゃ! 解っとるわ! 手品って言いたんやろーが! で、どんなタネなんじゃ!」


「どうやったかは、まだ解らん」


「アカンやんけ!」


 ツッコんだものの、弟分がなぜ『魔術師』という答えを出せたのかが引っ掛かり、


「なんで、手品やって言えるんや?」


「それも、まだ、たぶんとしか言えへん」


「シバクぞ! もったいぶんな! なんでそう思ったんやって、聞いとんじゃワレ!」


「剣のスピードやよ」


「剣のスピード?」



 一方その頃、インベイド本社では、ラグナと飛鳥の対戦を刀真が止めていた。


「あと、20分待ってくれ」


「なんでよ!」


 顧問に敬語を使わない部員が、自分をにらんでくるのを呆れながら、その理由わけを話した。


「今度は、俺がネメシスとやるからさ」


 その言葉に対して、先に反応したのは飛鳥ではなく、ラルフだった。


「なんだと! なに考えてんだ、お前!」


「心配するなラルフ、俺は負けんよ」


 まるで負けたかのような言われっぷりに、すぐさま反論する。


「アタシだって、負けませんー!」


 しかし、それに対して顧問から返って来たのは、意外な言葉だった。


「なら、お前がもう一度やるか?」


「え? いいの!」


「はぁ!? テメェー、フザけんな! 今さっき、止めて来たばかりなんだぞ! ヨハンに幾ら払ったと思ってんだ!」


 その台詞で、再び、飛鳥の『ケツ蹴りの刑』が始まる。


「なに金払ってまで、頼んでんのよーッ!」


「イテーッ! 悪かった、悪かったから、もうケツを蹴るな!」


「ラルフ、大丈夫だ。俺は無影剣を見た」


 そう言って、スマホを振る刀真に、ラルフが溜息を吐き、改めて説明する。


「刀真……言っただろ、履歴では見れるんだ。実践で見えないから、止めてるんじゃないか!」


「むえいけん? 見えない? なにそれ?」


「ネメシスの必殺技だ」


「へぇ~」と、嬉しそうに笑う飛鳥。


「コイツといい、お前といい、嬉しそうにしやがって、やるのは明日の決勝の後にしてくれ」


「明日の決勝こそが『最強決定戦』の方が、盛り上がるんじゃないのか?」


「そんなことは、言われなくても解ってる!」


「なら、ネメシスを先に討っておいた方が良いだろ?」


「随分な自信だな、無影剣の秘密でも判ったってのか?」


「あぁ。無影剣は、剣技ではなく……」


「マジックって言いたいんだろ? 刀真」


 その答えを出したのは、刀真ではなく、大きな欠伸あくびをしながら現れたルイスだった。


「よぉ、ラグナ、久しぶりじゃねーか」


「ルイス。今回の勝負、僕も混ぜて欲しかったよ」


「お前を混ぜると、ネメシスも混ぜないとイケなくなるだろ?」


「おいおい、それじゃ本当にネメシスを恐れて、混ぜなかったってのか?」


「ちげーよ。アイツのマジックに、コイツら(刀真と飛鳥)が負けるのが嫌だったんだ」


「ということは、ルイスも無影剣の秘密を?」


「もちろんだ。ただ、4回も無駄に喰らったがな」


 そう言って、ルイスは頭を掻いた。

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