第109話「Don't think, Feel.」
「――ということで、やはり、
ルイス専属チームのリーダーであるランディーは、今日の対戦を振り返って、そう締め
その必須とまで言わしめた詠春拳とは、中国の
一切の無駄を
また、ブルースリーの格闘術として有名な、
「だが、俺の詠春拳は不出来だ」
中でも葉問派は、日々の鍛錬がモノを言い、考えずとも体が勝手に反応するようになっていなければ、会得したとは言えない。
もちろん、ルイスも訓練に励んでいたのだが、次第に八極拳が中心になってしまう。
何故、そうなってしまったのか?
それは、拳法を取り入れることを決めた当初、反射神経では対応できない接近戦に優れたモノを探していたところ、葉問派詠春拳と出会い、これこそが対サーベルタイガーになるだろうと考えた。
しかし、
更に、GTWのプレイヤーの殆どが、銃がメインであるため、捌くという機会に恵まれず、また、八極拳の破壊力が高過ぎたため、これで事足りると感じてしまったのである。
その後、新たに相手を撹乱させるための酔拳や、中間距離用として
「明日ではもう間に合わん。今の程度で、アイツに通用するかどうか……」
「その為のスパーリングパートナーなのでしょ?」とランディーから指を差された者は、会議そっちのけでフルーツタルトを堪能している。
「お前、何しに来たの?」
ルイスのツッコミで、マリアが
「クッ、ククッ、た、たぶん、こ、この子、会議に参加したいんじゃなくて、お、お、オヤツが、た、食べたかっただけなのよ」
言い切ったところで、更に噴出すと、涙を流しながら笑い続ける。
「そんなことありませんよーだ。んじゃ、ルイさんに良いこと教えてあげる」
「なんだ?」
「その前に、オヤツの追加を!」
その言葉で、マリアが笑い過ぎで苦しみ出した。
「く、苦しい、い、息が出来ない……わ、笑い死にする……」
「大丈夫か、マリア! テメー、いい加減にしろよ!」
「なによ! 別に悪いことしてないでしょーが! あ! ラルさん、もしかして、知らないんじゃないの? 食べながら会議する方が、頭に入り易いんだよぉ」
「ほぉ~、じゃテメー、ルイスが不出来って言った、拳法の名前を言ってみろ」
「へ?」
「へ、じゃねーよ。答えろ」
「………………………………あ、ルイさん、良いこと教えてあげるね」
「やっぱ、聞いてねぇーじゃねーか!」
「クッ、ククッ、ら、ラルフ、も、もう、い、いいから……じゃ、アタシはお菓子を、クッ、ククッ、取りに行って来る」
マリアは、息苦しそうに笑い、涙を拭いながら、部屋を出て行った。
新しいオヤツが来る前に、目の前にあるケーキを片付けておこうと、フォークを刺す飛鳥にルイスがツッコむ。
「おい! 良いことってのは、どうした!」
「あ、そうだった。ルイさんがやるフラフラするヤツあるじゃん」
「
「あれね、たぶん、通じないよ」と言いながら、ケーキを頬張る。
「喋ってる時に喰うな!」とラルフから、ツッコミを入れられるも、気にせずを更に頬張る。
「
その質問に答えたつもりの飛鳥であったが、頬張ったケーキが邪魔をして、何を言ってるかサッパリ解らない。
「フガフガ言ってんじゃねー! 喰ってから、答えろ! あ! 馬鹿! 次を入れるんじゃねー!」
不服そうに、ラルフを睨みながら、ルイスの質問に答える。
「ううん、研究する必要なんてないの。最初は解んなかったんだけどさ、ちゃ~んとよ~く見てれば、どう動くのか解るんだ」
飛鳥が、嘘を吐くとは思えない。
しかし、研究せずとも通じないと言われるのも納得が出来ん。
「幾らなんでも、知らないのに喰らわないのか?」
「なんなら、試してみる?」
技を会得した者が言うならまだしも、見てから対応するのは難しいと思われる拳法で、初見で見切れるとは、とても考えられなかったルイスは、確かめることにした。
「じゃ、通じないかどうか、試させてもらおうか」
だが、飛鳥の言った通り、技を出せばその瞬間で斬られてしまい、見せていない仙人まで
会得するまで掛かった時間に比例するほどのショックを受けたが、それよりも、エキシビジョンで試して瞬殺されなかったことに、安堵の溜息を漏らす。
もう少しで、イベントを台無しにするところだった……。
「なんで解るんだ?」
「よーく見たら解るの。よーく見たらね!」
次にルイスは、蟷螂拳も試してみたが、簡単に肩から腕を切られ、コチラも使えないと判断せざるを得なかった。
「……よし、踏ん切りが付いた! 未完成だが、詠春拳を試してやる!」
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