第15話「Change The World」
インベイド社がレンタル事業を行うにあたり、初期投資に必要な額は、なんと日本円にして30兆円。
仮に、インベイド社の総資産を投げ売ったとしても、12兆円と全く足らなかった。
そこでラルフは、ゲーム好き有志(資産家)を集め、ゲームという文化の地位向上の為に力を貸して欲しいと訴えた。
「投資するのは構わないが、まずは事業計画を聞かせてもらおうか?」
「済まないジム、投資の話じゃないんだ」
「どういう事だ?」
「
「見返りは、求めるなと?」
「見返りは、ゲームになる」
「お前、自分が何言ってるのか解ってるのか?」
「そのつもりだが?」
「そのつもりで言える額じゃないだろ? 何だよ! 30兆って!」
「プライベートジェットを2、3台持ったと思えば良いのでは?」
そう言った者の頭には、クーフィーヤが在った。
「シナン、君まで! 君の国なら、税金の心配が無いだろうが、我々には所得税がある!」
「笑わせるな、タックスヘイブンしといてよく言えるな」
「なんだと!」
「やめてくれ、仲間割れは」
「お前たちと、仲間になったつもりなどない!」
「ジム……さっきも言ったように、本当に見返りはゲームなんだ。
ラルフは、ジムから周りの者たちに目を遣り、他の者たちにも呼び掛けた。
「本当に見返りの無い話なんだ。もし、ジムと同じ考えが他にも居るなら、済まないが一緒に帰ってくれ」
「ゲームに30兆だと! 馬鹿げてる!」
そう言い捨てて、ジムは部屋を後にし、それに33人が続いて部屋を出た。
「すまんな、手伝ってやりたいが、個人で出せる規模じゃない」
「いいんだ、気にするなエリオ。来てくれて、ありがとう」
このエリオ・ロマーニのように、付き合いをやめたくないため謝罪して帰るの者や、ジム・アレンのように怒って帰る者が居た中、ルイス・グラナドは少し違っていた。
「俺は残りたいんだが、君たちと違って資産が少ない。恐らく出せる額は、君たちと比べると2桁ほど少ないだろう。それでも良いなら残るが、矢張り辞退した方が……」
ルイスは、超一流のサッカー選手で、一般人となら比べられないほどの資産がある。
しかし、このテーブルに着いた面子と比べると、明らかに劣っていた。
ラルフは、ルイスが無理して1桁上げたことを嬉しく思った。
本来なら、自分たちより3桁少ない見込みだった。
なのに、2桁と言ったのだ、その先に見えるのは借金してでもという意気込みだ。
ラルフは、その決意に感謝する。
「ルイス、その気持ちだけで価値が有る。ありがとう、残ってくれ」
「残ったのは、14人か……」と、ローレンスは少しニヤケ顔で呟く。
「そう悲観することは無いさ。キリストより多い」と、ラルフは笑い。
「それに、ユダも居なくなったしな」と、石油王シナン・ムスタファーも笑う。
「それでは、大切な仲間が揃ったところで、事業計画を発表する」
「あんのかよ!」と突っ込むシナンに対して「矢張りな」と笑うローレンス。
数分後、事業計画の全容を聞いたローレンスは、思わず立ち上がった。
「そ、それは、かなり危険な賭けだぞ! 下手すりゃ、世界中の政府を敵に回す事になるかも……否、かもじゃねーな、なるだろう」
「大丈夫、大丈夫な筈だ。計画が途中でバレなければ、誰にも止められない!」
「しかし、今の話からすると、金融のプロであるジムは、居た方が良かったんじゃないのか?」
「いざと言う時に、逃げられては困るんだ。それなりの覚悟を持った者たちでないと、このプロジェクトは成功しない。情報が漏れては、折角練った策が水の泡だ」
「で、俺たちを試したと言う訳か……これも、お前の考えなんだろ? なぁ、虎塚!」
「すまんね、試したりして。だが、必ず実現してみせる。だから、ついて来てくれないか?」
その時、後方の扉が大きく開いた。
ルイスは、そこに立っている者に驚いて目を丸くし、その者の名を叫んだ。
「ジム!」
「ユダが、帰ってきたよ」
「誰がユダだ! シナン、俺は虎塚に頼まれて、ユダを外に出しただけだ」
「虎塚……ホント、お前は恐ろしい策士だな」
「ローレンス、褒め言葉として受け取っておくよ。これで俺とラルフを入れて、17人だ」
「否、18人だ。だが、最後の使徒の合流は、まだまだ先になる」
ラルフは、
ラルフが手を差し出すと、次に帯牙が手を重ね、ローレンス、ジムと重なり、全ての手が円となって重なった時、ラルフは叫んだ。
「さぁ、俺たちで、世界を変えてやろうじゃないか!」
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