第2話 動機
「ねえ、真太郎くんってばぁ聞いてるの?」
となりから、粘着質な女の声が聞こえる。
「今、彼女とかぁいるの?」
「オレ、そういうの興味ないんだ」
「えぇー嘘だぁー」
嘘じゃねぇよハツカネズミみたいな顔しやがって。
もちろん、そんなこと口にも顔にもださない、頭脳明晰、眉目秀麗、八方美人、白川真太郎はそんな男だ。
有名私立大に通う男子大学生。
「ごめんこのあと用事あるから、二次会はいけないや」
「えぇ真太郎くん帰っちゃうのぉ?」
「ごめんね」
そういって席を立ちこの明らかに女子側のレベルの低い合コンからぬけだした。
女に興味はない。それで困ったこともない。自分の欲がない、そう思う。
でも一つだけ欲というよりオレの生きる意味と言った方が正しいものがある。
5年前、両親を自殺に追い込んだやつを殺すことだ。
そう決意してから、その思いを絶やしたことは無い。
だが、現実はそう上手くいかない。
5年間、それなりにいろんなことを調べた、が有益な情報どころか、どんなやつに殺されたか、検討すらついてない状態だ。
怠惰な時を過ごしていると自覚はある、がどうすればいいかなんて分からない。
さばき方をもわからないのにまな板の上に魚を置いている。
そんなかんじだ。
いや魚をさばくのなら簡単だ、とりあえず頭を落とせばいいのだから。
そんなことを考えながら、帰路についた。
人間、こうやって自分の成したいことを成すすべもなく死んでいくんだな。
そう悟った。
動機はある、案外人を殺すのなんて簡単だと思う、だが手段がない。
最寄り駅の改札を出て、人通りの少ない道を歩く、そこに女は倒れていた。
なんの脈絡もなく、曲がり角を曲がった先に倒れていた。
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