第5話 理由なき肥満なし

「ここにいるのは、魔王を討伐せし、伝説の勇者パーティ。なら、互いに知恵を出し合えば、ダイエットの一つや二つ、余裕できるはずよ」

「一番の知恵者が、この有様じゃあ説得力ないがな」

「脳筋――じゃなかった、脳肪は黙ってなさい」

 また喧嘩が始まった。これでは、話が進まない。

 だが、それもまた仕方がないのだろうと、ライムは思った。

醜く太ったかつての仲間の姿。それぞれに、それぞれの理由があって太ったのだろう。

平和、

食料の変化

生活の発展

そして――怠惰と怠慢。

自分の失敗を鏡で見ているようなものだ。それは、いら立ちもするだろう。

 しかし、今すべきことは、過去の失態に腹を立てることではない。

「ミントの言う通りだ。――そもそも、そのためにみんなを集めたんだからな」

 トールを静止しつつ、ライムは続ける。

「よし、状況を整理しよう。まず、それぞれに太った理由を説明して欲しい。ちなみに俺は、魔王を倒した後、村に帰ってのんびりしていた。かつてのように修行もせず、妹の世話になりながらひたすらだらだらしていた。そして、気づいたらこの有様というわけだ。じゃあ、とりあえず、次はトール、よろしく」

「え、お、俺か。俺は魔王をぶっ倒した後も、一人山籠もりで修行に明け暮れていた。最初は、今まで通り鍛えていたんだが、途中から成長を感じなくなってな、ひたすら『瞑想』をしていた。力とは何か、強さとは何かを考えつつ、山や川、大地の声を聴き自然と一体となる修行だ。結果、自然と一体化し、新たな高みに上ることはできたが、代わりに余分な物までついちまった、という状況だな」

 トールは笑いながら自身の腹をつまむ。『瞑想』というより、『迷走』の結果」ではないかとライムは思った。

「次は俺か」

 話をふられていないのに、リッツが口を開いた。

「俺は、単純に生活の変化だ。主に食べ物の。俺は、魔王討伐後、実家に帰って祖母の世話になっていた。だが、祖母の料理が討伐後から急に変化してな。やたら油や脂肪分、糖質の高いものに変化した。だが、美味しいので残さず食べていたらこうなった。状況としては、ライムと大差ないな」

 リッツのその後はライム含め、みんなが気になるところではあった。なにせ、元裏切者で、美剣士の異名。

 まさかの実家帰り+お祖母ちゃんと同居。クールなリッツのイメージとはかけ離れていた。てっきり、一人武者修行の旅に出ているのかと思っていた。

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