丁字路のゴミ捨て場

夢宮 ネコスケ

毎朝

毎朝八時。僕は登校ついでにゴミを捨てに行く。家庭ごみは重く、正直ゴミ捨てなどしたくはないのだが、母がうるさく言うので渋々行っている。

今日もいつもの如く通学カバンと、はち切れんばかりのゴミ袋を両手に家を出る。母はまだ寝ているので、僕に送りの言葉をかけてくれるのは誰一人としていない。

僕の家から一番近いゴミ捨て場は丁字路にある。僕の住んでいる街はその昔城下町として栄えたらしく、敵を寄せつけない複雑な通路の名残で、丁字路が非常に多い。このゴミ捨て場はその名残の一つである。

漬け物石のように重いまぶたをこすりながら、丁字路へとさしかかる。東の方角へ目をむけるともうすっかり優しげな朝日の顔を失い、全てを焼き尽くさんばかりの昼の太陽が僕を照りつけた。もう少し目線を下げると、長い黒髪を風に揺らしながら、どこか儚げな一人の女性が大きな袋を持って歩いてきていた。僕は彼女を’’ひがし’’さんと呼んでいる。

そして、西の方角に目を向けると、ショートボブの利発そうな少女が、これまた大きな袋をかかえて歩いてくのが見えた。僕は彼女を’’にし’’さんと呼んでいる。

ぼくら三人はいつも同じ時間にここへきて、同じようにゴミを捨てて、同じように元きた道へ踵を返す。

同じ時間軸を共有する。


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