第3話

 学校に行くために玄関から外に出ると、同時にお隣さんも出てきた。その人は私と同じ高校の制服を着ており、長い髪を二房の三つ編みに結わえ、地味の手本のような出で立ちだった。しかし、女性にしては高い身長が彼女を地味な少女で終わらせていなかった。

背丈や髪質を見ると昨晩の女性であり、なにかされるのかと思って構えていると、素っ気ない態度でエレベーターに向かっていってしまった。

 お嬢様を気取っているかのように、鞄を身体の正面で両手持ちし、長いスカートに隠れた膝で裾を蹴らないように歩いていた。

 校則だとスカートは膝丈が規則だが、それをきちんと守っている生徒などおらず、見慣れない長さのスカートは同じ制服なのに、別の服のように思えた。

 彼女の三歩分斜めうしろに立ち、エレベーターが来るのを一緒に待った。扉に目をやると、彼女がガラスの反射を利用して私を凝視していた。

 声をかけようかとも思ったが、何と言ったものかと迷ったので、彼女の後ろ、一歩分右に移動してガラスに映らないようにした。彼女は首を傾けて私を見ようと試みていたが、私の頭は彼女の胸の高さまでしかなかったこともあり、再びガラスに映ることなくエレベーターがやってきた。

 しかし、問題はここからだった。

 彼女が先に乗ったせいで、扉のほうを向いた私はエレベーター内で彼女の前に立つことになってしまったのだ。

 ある程度の広さはあったが、密室で二人きり。さらに、なぜか彼女は私の真後ろにおり、つむじに鼻息が当たる距離だった。

 さきほどの意趣返しだろうか。生温かい息がうなじをつたって背中に入り、背筋がぞっとした。一瞬だけガラスに映った彼女は私の頭を見開いた目で見ており、気味が悪かった。早く一階につくか、誰か乗ってきてくれ、と心のなかで祈った。

 カシャ、というカメラのシャッター音がうしろから聞こえ、私が振り返ると彼女はスマホを構えていた。

 撮られた。後頭部を。

 抗議しようと口を開いたとき、エレベーターが目的地到着の合図を告げ、扉が開いた。彼女は私を押しのけるようにして先に出ていき、小走りで逃げていった。

 少しの間呆然としていたが、後頭部くらいなら構わないか、と思い直して私も外に出た。

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