(4)

──かすかに、遠くで猫の鳴き声が、奇妙にひずんで耳に届いた。



 横向きになった視界の中に、その姿があった。

 壁際に置かれた大きめの勉強机の前で椅子に座り、僕に半(なか)ば背を向けたまま、頬づえをついて窓の外を眺めている。

 少年の白い横顔を、満月の明かりが静かに照らしている。

「シルヴィア……?」ベッドに横たわった身を起こして、呼びかけた。

 頬づえをついたまま、やや大きめの黒い瞳がこちらを見た。


「あ……」


──違う。


 だが、少年は僕の呼びかけを否定も肯定もせずに振り返り、真正面から僕を見た。

 シルヴィアよりもずっと短く真っ直ぐな黒髪は、うなじのところでふっつりと切り揃えられている。

 黒い詰め襟の学生服を身に着けたその姿は、シルヴィアとはまるで似つかない。


──それなのに……。


 なぜ僕は、彼を「シルヴィア」と呼んでしまったのだろう?

 その少年の身体が、姿を変える。 

 背もたれに片手を添えて立ち上がったかと見えた少年の体が、月明かりの中に吸い込まれるように小さくなり、椅子の座面の上で丸い固まりに変わる。

 黒くつややかな毛並みに身体が包まれる。

 とがった耳がふたつ、小さな頭の上でぴんと立つ。

 長い尾が、座面から下へするりと伸びる。

 黒猫のしなやかな四つ脚が胴体を支えて立ち上がり、ひらりと椅子から降りて、毛足の長い絨毯の敷かれた床の上をゆったりと歩く。

 部屋の中は寄宿舎の僕の自室とは比べ物にならないほど広く、繊細な模様の壁紙が一面に貼られ、テーブルセットや作り付けのクローゼットが立派に備えられていて、壁際には天体望遠鏡までが飾られている。

 ベッドのそばまで来ると一瞬、体を縮こめてからひょいと飛び上がり、ベッドの上の僕の隣りへやってきた。

 黒ビロードの毛並みが僕の傍らに寄り添う。

「君は……」

「シルヴィアと呼んでくれていいよ」黒猫の小さな口が開いて、答えた。

「え……?」

「だって、せっかく君が名付けてくれたのだから」

「でも……」

「君の大切な人の名前なんだね」

 猫が僕を見上げ、黒く輝く瞳でのぞき込む。

「そう……、そうだ、シルヴィアは?!」

 慌てて僕は部屋の中を見回した。

「そこにいるよ」

 黒猫のシルヴィアがベッドの足元の方を見やる。

 壁際に置かれたベッドの隅っこに、身を丸めたまま目を閉じた白い猫がいた。

「彼なら大丈夫だよ。でも、もう少し寝かせておいてあげよう」

 そう言って、黒いシルヴィアはベッドの端に座り直した僕の膝の上に乗り、丸くなった。

 ベッドに腰掛けた僕の足は床に届かず、ぶらりと浮いた。

「……その、君が助けてくれたんだね。ありがとう。もし、あそこに君がいてくれなかったら、僕たちは……」

「あの時、なにが起こったのか、わかるかい?」再び僕を見上げて、黒猫が問いかけた。

「……いや……」

「『回廊』が裏返ったんだよ」

 黒い瞳で見上げたまま、生徒に説き聞かせるようにゆっくりと黒猫は説明を始めた。

「ある種のカエルは毒虫や異物を飲み込んでしまった時に、自分の口から胃袋を裏返しに吐き出して、異物を出そうとする。それと同じことだよ。『回廊』の一番奥にまで『猟犬』に入り込まれてしまった君はそれを吐き出そうとして、『回廊』の中を幻想で押し流しながら内と外とをひっくり返したんだ」



──やめろ。

──出て行け。



「あ……」

 あの時、叫んだ自分の幼い声が、頭の中で再び響いた。


「『回廊』が裏返るなんて、僕も初めてだったから、見に行ったんだ。そうしたら君が流されていて。助けようとしたんだけど、つい足を滑らせて」


──だが岸とは一体どこだ?


「それは……」

 僕のせいだ。

 だが黒いシルヴィアは気付かず、話を続けた。

「結局、僕も一緒に君の『回廊』に落ちて、閉じ込められてしまったんだ。……だから、申し訳ないんだけれど僕は君を、その白猫くんも含めて、助けられたわけじゃないんだ。おまけに、いくつか問題が発生してね……」

「問題って?」言いよどむ黒いシルヴィアに、問いかける。

「うん。……君は、いま何歳?」黒いシルヴィアは、ふと僕から目をそらした。

「僕? 僕は十六歳だけど……?」

「そうか……」

 僕の答えを聞いて、黒い猫は小さな口からふっと溜息をもらした。

「十六歳の誕生祝いに、僕は天体望遠鏡を買ってもらったんだけど……」

 黒曜石の瞳が壁際の白い鏡筒を見つめ、光っている。

 不意に、僕は自分のズボンのポケットの中に重さを感じた。

「あ……」

 ちらりと、黒いシルヴィアは僕の方を見た。

「君も、望遠鏡を持っているよね。それを買ってもらったのは、いつ?」

 おそるおそる、ポケットに手を差し入れて、それを取り出す。

 伸縮式の鏡筒を持つ、小さな望遠鏡。

 九歳の誕生日に買ってもらって。

 大切にズボンのポケットに入れて、僕はあの日、森へ行った。

 けれど帰り道で、僕はその望遠鏡を落として、壊してしまった。

 なのに──


 その望遠鏡が、僕の手の中にあった。

 傷ひとつなく、古びてもいない。


 その望遠鏡を持っている、僕の手。

 指が短く、手のひらは小さく柔らかい。

 自分の着ている服を見る。

 学校の制服ではない。

 森の黒土にまみれ、枝葉にこすれて汚れ切った、子供の服。

 ベッドに腰掛けた僕の爪先はぶらりと、床に届かずに……。


「僕は──」


 これが、いまの僕……?


「……ランディ……?」

 ベッドの隅で丸くなっていたシルヴィアが身じろぎし、目を開いた。

 うす青い瞳が僕に焦点を結ぼうとしている。

 その目が僕を見るのを、僕は恐れた。

「シルヴィア……」

 とっくに声変わりを終えていたはずなのに、僕の喉からはまるで子供のように高い声が、か細く響いた。

 無事にシルヴィアが意識を取り戻した安堵も、僕の怯えと恐れとを祓(はら)うことは出来なかった。

 白い猫の目が二、三度まばたきして、まるく大きく見開かれる。

 ぎくりと身を震わせ、ベッドの上に四本の足で立ち上がる。

「ランディ……? 君は、どうしてこんな……」

「シルヴィア、僕は……」

 震える手を握りしめる。

 その手の中に、望遠鏡があった。

 あの日、失われたはずの。



──九歳の僕が、今の僕だった。



     *     *     *



「ランディ……」

シルヴィアの青い瞳が、はっきりと僕の姿をとらえた。

 白い猫が僕を見つめながら、ベッドの上を僕の方へと近づいてくる。

 その足が、ぴたりと止まった。

 とがった耳と、しなやかな尻尾が天井を指してぴんと立つ。

 まるく薄青い瞳の目線が、僕の膝で身を丸めている黒いかたまりの上に止まる。

 そこにはただ静かに、黒猫が座っている。

 白い猫がぴくりと、小さな鼻をひくつかせた。


「お前は……!」

 とたんにシルヴィアは、しゃあっと牙をむき、背中を丸めて毛を一斉に逆立てた。

「えっ?」

 怒りにまなじりをつり上げた白い猫が、まるで同胞の仇にでも会ったかのように激しく、僕の膝の上の黒猫を威嚇する。

「シルヴィア?」

「そいつから離れろ、ランディ!」シルヴィアの声はこの上なく厳しかった。

「なに……? いったい、どうして……? この人は僕たちを助け……」

「そいつは猫でも人でもない!」

 かっと赤い口腔を見せてシルヴィアは叫んだかと思うと、ひらりとベッドから飛び降りて、銀髪の少年の姿になって真正面から黒猫と対峙した。

「この人を知っているの?」

「いいや、だがわかる。『深淵』のにおいだ……こいつは地球の生き物でも幻夢境の生き物でもない。あの『猟犬』と同じ、『深淵』の彼方に棲む存在なんだ」

「え……?」

 シルヴィアの告発に、僕は思わず膝の上の黒い猫を見た。

 だが、黒いシルヴィアは驚く様子もうろたえる素振りも見せなかった。

 代わりに、僕の膝の上からするりと滑り下りると、足音ひとつ立てることなく床の上に降り立った。

 シルヴィアの横を通り過ぎ、窓際の勉強机の方へと静かに歩く。

 しなやかな黒猫の姿が、再び黒い髪と黒い瞳の少年に変わった。

 机の前に置かれた椅子の背もたれに手を添えて、こちらを振り向く。

 その姿は僕と──十六歳だったときの僕と同じ──ごく普通の人間の少年でしかない。

 それでも、シルヴィアはまるで全身の毛を逆立てたままの猫のように、一切の警戒を解こうとはしなかった。

 うす青い瞳が敵意に満ちて、ぎらりと相手をにらみつける。


──いったい彼には、黒いシルヴィアの姿がどんなふうに見えているというのだろう?


「『深淵』の彼方に属する存在だというのは、僕も『猟犬』も、確かにそうだけれども」

 黒いシルヴィアは、敵意もあらわなシルヴィアと戸惑うばかりの僕を静かに見つめた。

「同じにおいをさせて、同じ場所に属しているからそいつらは仲間同士で、別の場所に住む者たちを一緒になって狩り立てていると言うのなら、海の生き物たちは魚も貝も海藻すらもみんな同じ仲間で、みんなで一緒になって陸の生き物たちと敵対していると言うのと同じことだよ」

「じゃあ、一体どうしてこんなことになっているんだ!」

 柳眉を逆立てて、シルヴィアは黒い瞳の少年に迫った。

「ここはお前の『回廊』だろう! ランディをこんなふうにしたのもお前じゃないのか!」

「そんな! この人は……シルヴィアは……」

 そこまで言いかけて、僕は言葉をのんだ。


──シルヴィア……、シルヴィア?


 僕の前に、二人のシルヴィアがいた。

 銀髪の少年、白い猫のシルヴィア。

 髪も瞳も黒い姿の、黒猫のシルヴィア。


──シルヴィアと呼んでくれていいよ。


 だけど。


──君の大切な人の名前なんだね。


 そう。だから……


──せっかく君が名付けてくれたのだから。


 ああ、でも。

 それなのに……。

 怒りに青く燃える瞳が、黒いシルヴィアをきっと睨みつけている。

 黒い瞳は、ただ静かに僕を見ている──


……構わないよ。


 その黒い瞳が、確かにそう言った。


「あ……」


 黒いシルヴィアにはわかったのだ。

 白のシルヴィアがいる前で、僕が彼をシルヴィアと呼ぶことはできないのだということを。

 それでも構わないのだと、伝えてくれたのだ。

 だがそれも、ほんの一瞬だった。

 僕の声は、まるで繋ぎ直されたかのように、よどみなく言葉を続けていた。


「この人は、彼は、僕たちを助けてくれたのに……」


……それでいいよ。


 再びその声が、聞こえた気がした。

 だがシルヴィアは気付かず、ベッドに座ったままの僕に向かって言った。

「君はどこまでお人好しなんだ?! こいつは僕たちを自分の『回廊』に閉じ込めているんだぞ! その上、君はこんな姿に……」 

「違う、違うんだよ、シルヴィア!」

 僕はベッドから降り、なおも食ってかかろうとするシルヴィアの腕を掴んだ。

「離せよ、ランディ!」

「シルヴィア、やめてくれ! これは……」


──出て行け!


「これはきっと、僕自身が望んだことなんだよ、シルヴィア……そんな僕を、彼は助けて……僕たちを助けてくれたんだ。こうなったのは僕の……、全部僕のせいなんだ」


 まるで本当に九歳の子供に戻ってしまったかのように、僕はすすり泣いた。


『回廊』の奥の行き止まりで泣いていた子供。

 ずっと胸の内に溜め込んで、大切に抱えていた物語の全てを引き剥(は)がされた僕が、望んだのは──。


「ランディ……」


 頭ひとつぶん以上も背が縮んでしまった僕を、シルヴィアは小さな弟を泣かせてしまった兄のような目で見つめた。



「彼の心が、ランドルフ・カーターの『回廊』が裏返って、内と外とが全部ひっくり返ってしまったんだ。それで、いくつか問題が発生した」

 黒いシルヴィアは、そんな僕たちを静かに見つめながら、ゆっくりと話し始めた。

「そうまでして『猟犬』を追い出そうとした君の精一杯の抵抗は、けれど、残念ながらうまくいかなかった。裏返った『回廊』は、内側に入り込んでいた『猟犬』を押し流し、勢い余って、いったん図書館の扉から『回廊』の外に出ていた君たちや、それを見ていた僕までも流れに巻き込んだ。そのあげく、どこの世界ともつながらないまま再び『回廊』は閉じてしまった」

「……『回廊』が、どこの世界ともつながっていないって?」

 シルヴィアが、黒い瞳の少年の言葉を繰り返した。

「おかしいじゃないか……そんなことって……」

「『回廊』の入り口と出口がつながって、閉じた円環になってしまったんだ。一匹のヘビが、自分で自分の尻尾に食いついているようにね」

 黒いシルヴィアの指が宙に伸び、虚空にくるりと円を描いた。

 手のひらほどの大きさの円環が、さやかに青く光って、その場に残った。

「そのまま放っておけば、遠からずヘビは自分で自分の身体を全て飲み込んで、『回廊』は消えてしまうところだった。中にいる君たちもね。そうならないように、僕はここに自分の部屋をつないで君たちをかくまったのだけれど……」


……どういうわけか、「中にいる僕たちも」とは、彼は言わなかった。

 代わりに、再び細い指先を伸ばし、宙に描かれた円環の右下に短く、青い線を引いた。

「結局、その先を『回廊』の外のどこかへつなげることはできなかった」


 青い円が僕たち三人の前で、数字の9になった。


 黒いシルヴィアはいったん言葉を切って、窓とは反対側の部屋の端を見た。

 釣られて僕とシルヴィアも、そちらを見る。

 おそらく、本来なら部屋の出入り口であるドアがついているはずだったのだろう。

 だが、そこは他の壁と同じように、こまかな模様の壁紙が一面に貼られているだけて、部屋から出て行けそうなところはどこにも見当たらなかった。

「じゃあ、いったいどうすれば……」

「もうひとつ、問題がある」

 幼い僕の声を、黒いシルヴィアがさえぎった。

「あの『猟犬』は、まだこの閉じた『回廊』の中にいる」

「えっ……」

 冷水を浴びせられたように、僕の全身がぞくりと足先まで冷えた。

「『猟犬』は、今も君を探している。君の身体と魂を食い尽くし、君だけの、ランドルフ・カーターだけがもつ『回廊』を自分のものにしようと狙っているんだ。君がどこへ行こうと、どこまで逃げようと、するどい角度を通じて必ず君を追ってくる」

「角度?」

「鋭角の中からしか、『猟犬』は現れることができないんだよ」

「あ……」

 いくつかの光景が僕の脳裏に浮かんだ。




『回廊』をV字に切り裂いた、鋭角の中から飛び出す青緑の鉤爪。

 交差する流星の軌跡が、夜空を鋭く切り欠いた。

 とがり屋根の影がまるで槍のように僕をつらぬいて──。



「そういうことだったのか……」

 しぼり出すように、シルヴィアはつぶやき、僕を見た。

 思わず、僕は自分の胸元に手を触れた。

 けれどそこには傷あとひとつ残ってはいなかった。

「今、あいつは闇雲に君を追いかけようとして、この『回廊』の円になった部分をぐるぐると走り回っている」

 黒いシルヴィアの瞳が、宙に浮かんだ『9』の字のまるい部分を見つめた。

「けれどいつか『猟犬』が振り返って、気付く時が来るかも知れない。ここに……」

 長い指先で、虚空に書いたアラビア数字を指差す。

「ひとつだけ角度があって、その先に僕たちが潜んでいることに」

 数字の『9』の、丸とそこから斜めに伸びる線との境を指し示す。

「……それじゃあ……」

 シルヴィアと僕の目が、その角度に釘付けになる。

「今はまだ、どうやら気付かれてはいない」

 黒いシルヴィアはちらりと窓の外を振り返った。

「でも、それがいつまで続くかは、僕にもわからない」

「じゃあ、僕たちはここから出られないのか? ずっとこの行き止まりの部屋に閉じ込められて……いつまたあの『猟犬』が襲ってくるかもしれないって言うのに……」

 同じように窓の外を見るシルヴィアの瞳が焦燥に揺れる。

「ここを出る方法はあるよ」

 事も無げにあっさりと、黒いシルヴィアは言った。

「僕のところへ来るといい。あそこなら『回廊』が通じなくても僕が……」

「冗談じゃない!」

 シルヴィアが即座にぞくりと怖気(おぞけ)をふるって拒絶した。

「シルヴィア! 彼は……」

「猫や人間が『深淵』の彼方にたどり着いて、まともでいられるわけがないだろう!」

 だが、シルヴィアは僕の言葉に耳を貸そうとしなかった。

「そんなこと……だって彼は、僕らを助けるために……」

「君は知らないから! こいつは僕らとはまったく相容れることなどできない存在なんだぞ! 見た目に騙されちゃ駄目だ!」

 僕の声にも構わずに、シルヴィアは叫んだ。

「信じてくれという方が、どだい無理な話なのだろうけれどもね」

 その様子を黒い瞳で見据えたまま、黒いシルヴィアは続けた。

「でも、確実に『猟犬』の脅威からは逃れられるというのは本当だよ。それも永遠に」

「そんな永遠なんて真っ平(ぴら)だと言っているだろう!」

 うわずった声で叫んだシルヴィアの瞳は大きく見開かれ、いつまた『猟犬』が襲ってくるかもわからないと聞かされた時とは比べ物にならないほどの恐怖に染まっていた。

「……シルヴィア……」


──『深淵』とは、そんなにまで、シルヴィアを恐れさせる場所なのだろうか。

 

 僕は黒いシルヴィアの方を見た。

 優しげな面持ちの少年は、黒い瞳に夜の輝きをたたえたまま、シルヴィアに反論することもなく静かに立っている。

 そのたたずまいは、それほどまでにも恐るべき世界に棲む存在には到底見えなかった。

 僕や、猫のシルヴィアと全く変わらない。

 だが、それは見かけだけなのだとシルヴィアは言う。

 僕たちとは相容れることなき『深淵』に生きる者なのだと。

 けれど……。


 激流にのまれた僕に差し伸べた白い手。

 流されてゆく猫も、一緒に抱きかかえてくれた。

 その光景は今もはっきりと僕の中に残っている。

 だとしたら……。

 

「でも……もう他に方法は……」

 目を伏せて呟いた僕に、黒いシルヴィアが言った。

「他の方法はあるよ」

「……えっ……?」思いがけない答えに、僕は顔を上げて黒髪の少年を見た。

「同時に『猟犬』も、この『回廊』から排除することが出来る」

 交互に僕とシルヴィアとを見つめながら、黒いシルヴィアは静かに告げた。

「本当に?」

「ただし、君たち自身がそれを望むのかどうか? ということ」

「え……」

 ほんの少しだけ大きめの黒い瞳が僕を見つめながら告げる彼の意図を、僕は計りかねた。

「どういうこと……?」

「まず、閉ざされた円環の『回廊』をここから切り離して、鍵をかける」

 再び、彼は青く光った数字の9の丸い部分を指差した。

「さっきも言ったように、『猟犬』は今、ひたすらここをぐるぐると走り回っている。その注意を引き、僕たちのいるこの部屋の方へとやって来させる」

 やや長い爪の先が、青い円環の下に真っ直ぐ伸びる線に触れる。

「あらかじめ『回廊』の直線部分を引き延ばしておき、『猟犬』がその真ん中まで来たところで、『回廊』を切断する。そこへ『猟犬』も巻き込んでしまえばいい」

 線の途中で、指が真横に引かれる。

 直線が真ん中でふっつりと切れる。

 真っ直ぐな青い線と、9の数字が虚空に残った。

「『回廊』のあちら側とこちら側とに切り離されてしまえば、たとえ『深淵』に属する存在と言えども、消えてなくなる以外にない。二度と元には戻らない。あとは『回廊』に鍵をかけて、それから」

 左手を数字の9に、右手をその下の直線に触れる。

「このふたつを、こうすれば……」

 片手でくるりと青い数字の上下を回転させる。

 反対の手が、直線をすべらせて数字の隣りに並べる。

 宙に浮いた数字と直線が、手品のように形を変える。



 僕たち三人の目の前で、「16」の数字が青く光った。



「これで完成。ランドルフ・カーターの『回廊』は十六歳の形に戻り、同時に、君自身も十六歳の身体と、日常に戻れる」

「十六歳の……日常に戻る……?」ゆっくりと、僕は黒いシルヴィアの言葉を繰り返した。 

「そうだよ」

「帰れるの?」

「うん。……ただ、そのためには切り離した『回廊』に鍵をかけなければならない」

「鍵?」

「君の『回廊』は一度、壊れてしまったんだ」

 幼い声で問う僕に、黒いシルヴィアは静かに答えた。

「『猟犬』に喰い荒らされ、焼き尽された上に、心の深奥まで入り込まれたのを、強引に裏返して追い出そうとしたせいでね。そのまま閉じた円環になって消えてしまうところだったのを、辛うじてこの九歳の形で安定している。それをただ切り離して形を変えただけでは、また元の形に──尻尾に食いついたヘビとなって、君もろともそのまま消滅してしまう。そうならないためには、『回廊』に合った鍵を使って、しっかりと鍵をかけておく必要があるんだ」

「……その鍵はどこにあるんだ?」

 尋ねたシルヴィアの方を、黒いシルヴィアがちらりと見た。

 その黒い瞳を動かすことなく彼は答えを続けた。

「……鍵はとても重要で、誰でも作れるわけではないし、誰でもが鍵になれるわけでもない」

「鍵になれる……って……?」

 問いかけた僕に、黒いシルヴィアは答えた。



「猫のシルヴィア」



「え……?」

 彼の声が、僕の耳に重く響いた。

「どういうこと……?」ずしりと、その意味するものが僕の胸で音を立てた。

「『回廊』の鍵になれるのは、ウルタールの猫だけなんだ。そして、鍵が作れるのは、僕だけだ」

 黒いシルヴィアは右手を差し伸べ、開いてみせた。

 僕とシルヴィアの目が、釘づけになる。

「あ……」

 形の整った白い手のひらの上に、それが乗っている。


──銀の鍵。


 表面にびっしりと、複雑な浮き彫りの文様が彫り込まれた、古びた鍵。

 小さく、固く、冷たい銀色の輝きを放っている。


「これは別の『回廊』の鍵。もともとは、これも猫だよ」

 事も無げに言うシルヴィアの言葉に、僕の胸が凍り付いた。

「……猫……って……」

「そもそも、かなり強い親和性があったのだろうね。だからこそ、一度ならず引き寄せられていたんだ。君の『回廊』に」

「あ……」シルヴィアが小さく呟いた。



──そうか、君の『回廊』か。

──たぶん、君の『回廊』に引っかかってしまっているんだ。……そもそも、ゆうべ僕があの図書館に出てきてしまったのがおかしいんだ。

──屋根からここまで直通だったよ!



「だめだ、そんなの!」まるで教師のように淡々と説く黒いシルヴィアの言葉に、僕は抗議の声を上げた。

「だってそれは……つまりそれは『回廊』を閉じるためにシルヴィアを利用して……全く別の存在に作り替えて、『回廊』に縛り付けておくってことじゃないか! そんなの……いや、それとも『猟犬』さえ退治してしまえば、またすぐに鍵を開けて……」

「鍵を開けることは、当分できない」

 あっけなく、黒いシルヴィアの言葉が僕の希望を切り捨てた。

「さっきも言ったように、『回廊』は一度壊されてしまったんだ。その中に蓄えられていた幻想も、物語も、妖精たちも、あの激しい流れにすべて流されて、失われてしまった。だからもう一度、君自身がそれを取り戻さなければならない。そうすることなしに『回廊』に足を踏み入れたところで、鍵を解放することはできない。真空状態を開くことはできないんだから。鍵が開かれるのは、再び君の中に、幻想と、妖精のいる物語の世界を取り戻した時だけだ」

「そんな──」


 僕の中に、一瞬にして、数えきれないほどたくさんの記憶の風景が広がった。


 両親の本棚をひっくり返すほどの勢いで、片っ端から本を引っ張り出してきては読み漁っていたころ。

 魔法使いと妖精を求めて森を彷徨った九歳の僕。

 見つけられなくて、それでも、ずっと忘れられずに、探し続けた。

 図書館の閉館時間まで読み続け、借りられる限りの冊数を寄宿舎の自室に持ち込んで、それでも足りずにとうとう夜の図書館に忍び込み、ひたすらに本を読み耽った。

 そうして溜め込まれた無数の物語が、僕の中の『回廊』であれほどに豊かな森と妖精たちを育み、ついには僕とシルヴィアをめぐり会わせた。

 だが、それはもうない。

 たった一夜にして全て消え去ってしまった。

 あまりにはかない夢のように──


「そんなの、いったい何年かかるか──いつのことになるかわからないじゃないか!」

 僕はまるで本当に九歳のだだっ子のように、黒いシルヴィアに向かってわめきたてた。

「それまでずっとシルヴィアを……僕のために犠牲にするってことじゃないか! そんなのひどすぎるよ! だって、だってこんな……」


──ウルタールの猫は、みんな自由だ。


 ふたたび溢れ出した涙が、僕の言葉を途切れさせた。


──こんなに銀色で、奇麗なのに。


 シルヴィア……シルヴィア……。


「こんなに……ウルタールの猫みたいに自由な存在を、鍵に……あんな小さくて冷たい金属の塊に変えてしまうだなんて……そんなひどいこと……。それも僕なんかのために……だったら……」

 身体だけでなく心までも九歳の子供になってしまったかのようにしゃくりあげる僕に、黒いシルヴィアは黙ったままだった。

 その冷静さが、僕の幼く縮こまった心をいっそう高ぶらせた。

「だったら僕は元に戻らなくたっていい! 十六歳の日常になんか戻らない! 僕は君と一緒に、君のもといた深淵へ行く……シルヴィアも連れて行ってよ! そうしたら……」

「それは無理だよ、ランディ」

 激情するままに僕の口から発せられる言葉を静かに制したのは、だが銀色のシルヴィアの方だった。

「シルヴィア……?」

「僕が、『回廊』の鍵になる。それですべてうまくいくんだな?」

 黒いシルヴィアを見据えて、猫の少年がそう言った。

「やめてくれよ……! 僕のためにそんな……そんなの絶対だめだ! 深淵の彼方だろうが、『回廊』ごと消えてなくなろうが、君を犠牲にするぐらいだったら僕は──」

「犠牲なんかじゃないよ」

 静かに、だが穏やかな声ではっきりとシルヴィアは僕に告げた。

「僕は君のために犠牲になるんじゃない。僕が選んで、鍵になるんだ」

「え……?」

 黒いシルヴィアの方をちらりと見やって、シルヴィアは言葉を続けた。

「……僕はこいつのところへは行かない。そんなのまっぴらだ。君だって、いくら君自身が望むからと言ったって、行かせない。僕が、行かせたくないんだ。かといって、ここに留まったところで、いつかは『猟犬』に嗅ぎ付けられて、ずたずたに喰い殺されるのだってごめんだ。僕は自分で選びたいんだ、君の『回廊』の鍵になることを。そうして、いつか必ず君が『回廊』を取り戻して、僕の鍵でその扉を開けてくれるのを、たとえ何十年、何百年かかろうとも待ち続けていたいんだ。だから、お願いだ、ランディ。頼むから僕に、君を待っていさせてはくれないか。君の『回廊』の入り口で」

「……シルヴィア……」

 猫の少年を見つめる僕の頬に涙が流れた。

「これは僕のわがままなんだ」

 ふいと、シルヴィアが僕から目をそらした。

「君自身が望むのに、行かせたくないだなんて。『回廊』を失った君をもとの十六歳にーー味気ない日々の中に閉じ込めて……。あれほど豊かな『回廊』を再び取り戻すのに、何年何十年かかるかもわからないというのに……」

「そんな、僕の方こそ……僕のせいで、君をあんな鍵に……」

「もういいんだよ、ランディ。これは僕が決めたことなんだから」

 涙を流し続ける僕の肩を、シルヴィアは両手で抱いて、黒いシルヴィアに向かって言った。

「助けてもらう立場なのに、『お前と行くのはまっぴらだ』なんて、恩知らずにも程がある言い草だとは思っているんだが……」

 黒いシルヴィアは、そんな僕たちを静かに見つめながら答えた。

「人間以上に、猫は深淵とは本来的に相容れない存在だからね。にも関わらず、僕の提案を受け入れて、その身を委ねてくれるというだけでも、僕は君に感謝しなければならないよ」

「その身を委ねる、なんて言われたら、ますますぞっとしないな」

 シルヴィアが形の良い口元を歪めて言った。

「でも、どうして僕たちに手助けをしてくれるんだ? 『回廊』なんかなくたって、お前は自分で深淵の彼方に帰れるんだろう?」

 問われて、黒いシルヴィアはふと僕たち二人から視線をそらした。

「『回廊』の主(あるじ)と、『回廊』を行き来する者たちとが心を痛め、傷つくことは僕の望みではないよ。僕にとって『回廊』が失われるのは、僕自身が欠け落ちて、失われていくのも同然なんだ。それが誰の『回廊』であってもね」

「あ……」

 激流に飲まれる僕に向かって差し伸べた白い指先と、手のひらに乗せた小さな銀の鍵を僕は思い出した。

「『回廊』と、それをはぐくむ幻想を持っていること。それ自体が、この世にふたつとない、とてもかけがえのないものなのだから」

 黒い夜空の光を宿した瞳を伏せて、彼は答えた。

「今の僕自身が、そうして生まれたのだから」

 まるで何かを、誰かを思い出してでもいるかのように、小さな声がそう呟いた。

「君は……」

 その黒いシルヴィアを、僕は見つめた。

「君の持っている、その鍵は……」


──あれはいったい、誰の『回廊』の鍵だったのだろう?


 だが、黒いシルヴィアは僕の問いかけには答えず、代わりに僕に告げた。

「銀の鍵を、必ず君は手に入れる。再び君の中に、幻想と、妖精のいる物語の世界を取り戻した時に」

「うん……。でも、どうやって……?」

「大丈夫さ」

 銀の髪のシルヴィアが、僕に笑いかけた。

「わからないのかい? 君はちゃんとそれを知っているはずだよ。今までだって、ずっと君はそうしてきたじゃないか。いつだって──」

 

 鬱蒼と茂る森の樹々のように広がる本棚と、そこに仕舞い込まれた無数の本。

 めくられたページの中から、白い蝶の羽根もつ妖精が飛び立つ。

 そのページのひとひら、ひとひらに、収められた幻想の世界を、懐中電灯の明かりが照らし出す。

 ひたすらそれだけを追い求め、渇望し、探し続けた。

 いくつもの昼と夜を、そうして過ごした。

 そうして、ついに出会ったのだ。

 僕の妖精に──


「そう……そうだね……」

 優しい笑みを浮かべたシルヴィアに、僕は泣き濡れた顔のままでうなづいた。

 白い猫が、机の上に広げられたままの文庫本をのぞき込む。



──いつもこんなにあけっぴろげなのかい? 君の『回廊』は……



 そうだ。いつだって、どんな時だって、僕は──



「……けど、本当にいいの? シルヴィア」

 ベッドに座り直してこぶしで涙をぬぐいながら、僕はシルヴィアに問うた。

「実際、他に選択肢がないんだから仕方ないだろう。解決してくれるのは時間だけ、ということは確かにある」

 隣りに腰をかけ、両手を頭の後ろで組んで、シルヴィアは答えた。

「猫や人間の意志なんて、時間の流れの前にはまるで無力さ。眠たくてしょうがないときは、一晩眠る以外に眠気を取り去る方法はない。それと同じさ」

「でも……」

「僕は君を待っているよ。何十年待つことになろうが、そんなの全然問題ない」

 組んでいた両手を解き、シルヴィアは僕の顔を見た。

「もともと僕には寿命はないし。『鍵』になっても、僕が僕であることは変わらない。そこに僕がいるのだから」

「なるほどね。そうか」

 それを聞いて、くすりと黒いシルヴィアは笑った。

「そう……そうだね。確かに、魂と、その拠(よ)り所(どころ)たる肉体が滅ぼされるわけではないのだしね。……それに、どんなに長くとも、三万年を越えることはないだろうよ」

 かすかに口元をほころばせながら、けれど彼の瞳は、はるか遠い昔を思い浮かべているかのように暗い輝きをたたえたまま、背後の窓を振り返った。



 窓の外は一面の夜空だった。

 暗い空にひっそりと青白く輝く満月と、数えきれないほどたくさんの星々が光っている。

 今にもその星が夜空を切り裂いて、鋭い角度の中から彗星のようにあの『猟犬』が飛び出してくるのではないかと僕は恐れた。

 シルヴィアも言葉もなく、ただあやしく輝く星空を見つめている。

 うす青い瞳と銀の髪が、静かに星明かりに照らされている。

 黒いシルヴィアも、椅子の背もたれに手を添え、窓の外を見ている。

 つややかな黒い髪と黒い瞳が月の光を写している。

 シルヴィアもベッドから立ち上がり、窓辺に立つ。

 たった一枚のガラス窓をへだてて広がるのは一面の星空──。

 その前に佇む、まるで妖精のような、黒と銀の猫の少年ふたり。

 だが、まるで絵のようなその光景の向こうに隠されているのは、『深淵』の彼方に棲み潜み、僕の心も魂も、幻想と妖精の世界までをも食い尽くし、滅ぼそうとする悪意の塊なのだ。

 黒いシルヴィアが言っているのは、そういうことだった。

 しかし今、その瞳は深く沈み、唇も一言も発することはなく、黒いシルヴィアはまるで人形のようにただ窓の外を見ているだけだった。

 おそらく、彼はいつまででもそうして待ち続けるだろうし、その結果として手遅れになることも、ない。


……彼一人にとっては。


 だが僕たちは必ず、決断しなければならない。

 そのとき、僕はシルヴィアが両手をぎゅっと固く握りしめているのに気付いた。

 

──いや。


 決断は、既に成されている。

 だから、あとは──。


「シルヴィア」猫の少年の背に、僕は呼びかけた。

 銀の髪が振り返る。

 ベッドから飛び降りるようにして立ち上がり、駆け寄る。

 シルヴィアの青い瞳がまるく見開かれる。

 その胸の中に、真正面から飛び込んだ。

「ランディ……!」

「シルヴィア……シルヴィア……!」

 胸にすがりつき、顔をうずめる。

 また涙がこぼれそうになったが、堪(こら)えた。

「……大丈夫だよ、シルヴィア。僕が、いるから。ずっといるから。そして必ず……」

「ありがとう、ランディ」

 ややあって、シルヴィアの腕が僕の頭と背中に回されたのがわかった。

「もう大丈夫だ。……ランディ、僕は行くよ」


「シルヴィア……」


 九歳の僕より背が高かったはずの身体が、僕の腕の中ですうっと小さくなってゆく。

 温かみだけはそのままに、白い猫が僕に抱かれて、そこにいた。

 うす青い瞳が僕を見上げる。

 心地よい和毛(にこげ)の肌触りとぬくもりが僕の腕の中にある。

 その顔に、ほおずりをした。

「くすぐったいよ、ランディ」

 シルヴィアが僕の腕の中で身をよじる。

 構わず、僕は頬を寄せ、顔をうずめた。

「くすぐったいってば──」



 きん、と固い音が、胸に高く響いた。

 すべらかな毛並みと温かな猫の重みが僕の腕の中から消える。

 代わりに、小さく固い何かがころりと手の中にころげ込んだ。

 金属のきらめきが、僕の目を打つ。

「あ……」

 銀色の、やや細長い楕円形の頭部から棒状に軸が伸びて、複雑な形に刻み込まれた突起がついている。

 鍵の頭部には、青く透き通る宝石が真ん中にひとつ、ついている。

 窓から差し入る月明かりを受けて、青い宝石がさやかに光る。

 銀色の小さな鍵が、そこにあった。



「シルヴィア……!」



 ほんの小さな金属の固まりのはずが、ずしりと重く、温かかった。

 固く、鍵を両手で握りしめる。

 そのこぶしの上に、涙がいくつも落ちた。

 彫刻のように静かに窓の外を眺めていた黒いシルヴィアがようやく、しかし振り返ることなく僕に呼びかけた。

「では、そろそろ帰ろうか、ランドルフ・カーター」



                    (つづく)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る