第11話 VSチンコ

「変態的だな…」

「ム…ッ!」


 変態の背後から全裸の男が話し掛けてくる。


 赤髪の男、チンコだ。


「おぬし…生きていたのか」

「当たり前だ」


 変態は素直に喜んだ。喜びのステップを踏もうとしたその時、チンコは「待て」と変態を制した。


「ム…」

「変態よ。近くで死んだフリをして見ていたが、ぶっちゃけおまえには敵わねェ。だが俺には最終奥義が一つある。それをおまえに試したい」

「ほぅ…」

「俺が先程おまえに放ったボディブローは“一分殺し”という技だ。これは内蔵を破壊する俺の先制かつ必殺の技だった」

「なかなか良かったアレか」


 変態は目を瞑り先程のボディブローを思い出す。


 各臓器が切り刻まれるようなあの快感…変態の頬が桜色に染まる。

 

「そうだ。俺はおまえ程じゃないが、そこそこ強靭な身体を持ち、その技でこのダンジョンを生き抜いてきた。ただおまえには勝てない。それは先程からのおまえの戦いを見てよくわかった。しかし俺にはいまだかつて破られたことの無い技がもう一つ存在する」


「ム…!」


 変態の目がクワッと見開く。


「それを…受けてくれないか?」


 チンコは真っ直ぐに変態を見詰め直した。


「…いいだろう」


 変態は桜色の頬を更に紅潮させた。


 一分殺しは良かった。更なる攻撃ご褒美をこの男はくれるというのだ。


「よし。では肛門をこちらに突き出せ」

「うむ。“ギ”よ」

「ギ!」


 ひょっこり変態のパンツから豆粒のような紫色の竜が姿を現す。


「下がっていろ…」

「ギ!」

「フ…そういえばおまえにも俺は敵わないな」


 チンコがそう言うと、“ギ”はブーンとチンコの肩に止まり、ポンポンと叩いた。


「フ…」


 チンコの顔にも自然と笑みが溢れる。


 『負けを認める』


 そのことがこんなにも清々しいことなんて、チンコは思いも寄らなかった。


「こうか?」


 変態はグイッと肛門を突き出しながら、左手の親指を甘噛みしてチンコの方を向いた。


 欲しがりポーズだ。


「ふむ、もうちょっと腰を落とせ」

「うむ」


 チンコは両手を合わせて握ると、両人差し指をピンと伸ばした。


 筋肉アフロが尻を突き出し、その後ろでは全裸の男が浣腸のポーズを取る。


 お互いに変態。


 しかしその姿は真剣そのものだった。


 スィ…


 チンコが静かに両手を引く。


「はあぁぁ…ッ!!」


 静かにチンコは力を溜めた。チンコの両人差し指が禍々しく輝き出す。


「行くぞッ!“三分殺し”ッ!」


 勢いよくチンコの両人差し指は変態の肛門へ突き刺さる!


 ズヌゥッ!!


「ハゥッ!」


 チンコの両人差し指は深々と変態の肛門根元まで埋まった。

 チンコの目が一際大きく見開く。


「はぁッ!」


 ズドドドドドドッ!


 チンコはそのまま凄まじい勢いでピストンした。


「ぬわーッ!!」


 ズボッ

 ズシーン

 

 チンコが両人差し指を抜くと変態は倒れた。ぴくぴくと痙攣しながら恍惚の表情を浮かべ、だらしなく涎を垂らしている。

 

「ギ…」


 傍らで小さな竜は固唾を飲んで見守っている。


 途端、変態の身体が陸に打ち上げられた魚のようにビクンビクンと跳ね出した。


「ぐぬるわあぁーッ!!」


 ほとばしる灼熱感の後に来たのは競り上がるような激流、そして腸、胃、膵臓、肝臓、心臓、脾臓を絞るようにひねり上げていった。


「げぼぶるふぁメタァッ!!」


 身体中の内臓が雑巾のように絞り上げられた変態は、口、鼻、目、耳という顔のあらゆる穴から噴水のように血液を吹き出した。


「ガアァ…ガハッ!…ガハッッ!!」


 のたうち回る変態。チンコと“ギ”はそれを静かに見詰めている。


「…時期に三分だ」


 チンコは腕を組みながらそう呟いた。


 その瞬間、クワッと変態の目は見開くと、グルンと白目になり身体をビクンビクンと痙攣させた。


「…俺の負けだ」


 チンコはそう静かに言った。


「ギ?」

「うむ、この“三分殺し”は一分殺しと違いダイレクトに内臓を破壊する。果てには耳孔から脳汁が噴き出してくるのだ。しかし変態は耐えた。恐らく極限にまで鍛えられた内臓がクッションとなり、脳への破壊を食い止めたのであろう」

「ギ?」

「ふ…そうだな、この状態でさらに三分殺しを加えたなら流石の変態も耐えられないだろう。しかし見ろ…」


 そうやってチンコは己の両人差し指を“ギ”に見せた。チンコの人差し指は燃えるように真っ赤になっていたがやがて炭化し真っ黒になり、根元からポキリと折れた。


「…この技は消耗が激し過ぎる。指はまた生えてくるが、今は一度きりの大技だ。今はな…」


 その瞬間、“ギ”は背筋に冷たいものが走るのを感じた。


 研鑽を重ねたであろう大技は更に改良出来る。人差し指が使えなければ中指、薬指がある。この男、変態にどれだけこの技が通用するのかを知りたかったのだ。


「フゥ…フゥ…」


 変態は目を覚ました。

 しかしそのダメージは目に見えて変態を衰退させていた。


 肛門は人体の中でも急所とされる。


 ここのすぐ上は気を溜めるチャクラがあり、強制的に超圧力で侵入を許せば気が漏れ出し、力が入らなくなるのだ。

 

 この最中、変態は喜んでいた。


 自らが凌辱される悦びとは別に、まだまだ鍛えがいがある己の身体に。


---


「“三分殺し”、堪能させてもらった」


 数分後、変態的回復力によって全快した変態はチンコへ最大の賛辞を送った。


「へっ…敵わなねぇな…」

「ギ」

「うむ、戻れ」


 “ギ”は速やかに変態の腸内へと帰る。


「…これからどうするつもりだ?」


 チンコは変態に問い掛ける。


「強者と、戦いに」


 変態は短く答えた。


「ふ…ならば北を目指せ。この俺すら近付けなかったこのダンジョンの強者がそこにはいる」

「わかった。おぬしは?」

「俺はここに国を作る。おまえのお陰でこの暗闇の世界にも光が生まれた。元は俺も国が嫌でここへ逃げ出した口だが…おまえを見ていて考えが変わった。まぁ身体は鍛え続ける。いつかおまえを倒すためにな」

「…また頼むとしよう」


 変態はチンコと固い握手を交わすと、そのまま変態的ダンスを繰り広げた。


 別れのダンスだ。


 この後、チンコは見事に巨大な地下帝国を作り上げ、地上との壮絶な争いを繰り広げることになるのだが、それはしばらく後の話だ。


 変態の肛門が疼く。


 また必ずここへ帰ってくる。


 そう心に決意すると、変態はくるりと北へ向き直し高速スキップで去っていった。


「変態!そっちは…!」


 そう言い掛けるとチンコは口を結んだ。


 無粋だな…


 チンコはそう判断すると、素手で地面を耕し始めた。


 変態はスキップをする。

 まだ見ぬ強者との戦いを夢見て東へ進んでいった。


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