第7話 VSアルカナ・フィールド

 結界の中の変態は優しい目で悪魔神官を見つめている。


「…第三プロセスへ移行」

「御意ッ!」

「分かった」


 リーダー格の悪魔神官がポーカーフェイスで口を開くと、残りの二人もそれに従った。


「「「アルカナ・フィールド圧殺!!!」」」


 悪魔神官達は両手をババッと前に出すと、変態を包み込んでいた結界を小さく狭めていった。


 ググ…グググ…


 半球型の結界が徐々に直径を縮めていく。


「ム…!」


 変態は事態を察すると屈み込み、素早く極小ブーメランパンツを下に下ろす。


 ウンチングスタイルだ。


 徐々に変態の周りを瓦礫が取り囲み結界は圧縮されていく。


 変態の表情がフッと力を抜く。


 ゴポゴポゴポゴポ…


 変態の腹部は異様な音を鳴らし膨らんでいった。


 副交感神経を優位にしたのだ。


 自律神経には二つの神経によってコントロールされている。交感神経と副交感神経だ。


 交感神経は日中身体を活動的に動かしたり、戦闘状態に持っていく神経、対して副交感神経は身体をリラックスし栄養代謝を促す神経である。


 変態はこれを自由に操ることが出来る。


 ウンチングスタイルで極限にリラックスした変態の腹腔内では、弛緩した筋肉による蠕動運動により腸が縦横無尽に暴れまわる。それにより変態の腸内では多量の発酵ガスが高圧縮されていった。


 悪魔神官達の結界は悪魔神の攻撃に耐えきる程、最強レベルの耐性を誇る。それが高圧縮された故に瓦礫は粉々の砂粒までに分解され、結界はすでに瓦礫に埋もれたウンチングスタイルの変態の形のまま固定化されていた。


「モゴモゴ…(これは変態的だな…)」


 変態はしばしこの圧迫窒息状態を楽しんでいた。


 世界最高峰のドMである変態にとってこの状況はむしろご褒美!


 変態がたまに口を開けると結界が喉の奥まで入り込み窒息状態を加速させる! 


「モゴモゴ…(こんなご褒美は久しぶりだ…)」


 変態は恍惚な表情で極限状態を楽しむ。


 プゥー、べコーン、プゥー、べコーン


 口元の結界を膨らましたり喉奥に入れたりする変態。


 先程の腹腔内のガス生成により肛門も極限状態だ。


「…モガモガ(…そろそろだな)」


 カッ!と変態は目を見開く。


「モガモゴモガッ!(変態ガスッ!)」


 その瞬間、変態の肛門は白く光を発した。


 カッ!


 変態の肛門を中心にまるで核融合のような青白い閃光に辺りが晒される。


 ダガゴオォンッ!!!


 光の後に音は遅れてやってきた。


 変態の放屁はビッグバンのごとく大爆発を引き起こし、その余波は地上でも感じられる程であった。


「お?変態の仕業か?」


 地上でアドスは一人言を呟く。


 筋肉の極限の弛緩から極限の緊張圧縮。その幅が大きければ大きい程、力は倍加していく。更には悪魔神官の結界により極限の圧力から解放されたその力の威力は凄まじかった。


 変態を中心に起こった大爆発はダンジョン内に一つの国が収まる程の超巨大な空間を創造した。当然悪魔神官はおろか、偶像達も跡形も無く消し飛んでいる。


 プスプスプスプス…


 その中心に変態はいた。


「…変態的だな」


 辺りを見回した変態はウンチングスタイルのままそう呟いた。


 悪魔神官達との対話は望み得なかったが、お互いに信じるものを比べ合い、敗れたのだ。彼等も本望だろう。


 一方、この超爆発の中を生き残ったダンジョン内の強者達がいた。


 ダンジョンに住まう者にとって、自分の縄張りは家に等しい。それが突然の大爆発によって消し飛んだのだ。


 その原因を探るべく、強者達は爆発の中心に歩を進めた。


 そう、ダンジョン中の強者達は変態の元に集結しつつあった。


「…」


 変態は動かない。

 ただ先程の余韻に浸り、ウンチングスタイルのまま頬を赤らめ、時々下を向いては「ククッ」と思い出し笑いをしていた。


 

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