第4話 VS軍隊蟻
変態は進む。
高速スキップでズイズイ奥へ進んでいく。
ところどころでサソリや毒蜘蛛などのモンスターをつまみ食いしながら軽快なステップでシタタン、シタタンとダンジョン奥地へ進んでいった。
「おに~のパンツはいい~パン…?」
変態が目を見張ると、奥に一匹の魔獣がたそがれていた。
ミノタウルスだ。
「お~い!ミノちゃ~ん!」
親しげに変態は声を掛ける。
「あ!魔王様じゃないッスか!」
シタタン!シタタン!と早めのスキップでミノタウルスに近付く変態。
「いや~久しぶり~元気だった?」
「久しぶりッスね!まぁまぁですよ」
「あ、ミノちゃんに言ってなかったか~。俺さ、魔王辞めたんだよね~」
「えッ!?マジッスか!?したら今何やってンスか!?」
「ん~今?今俺、変態やってるんだ」
「それは前からじゃないスか!」
「いや~そうなんだけどさ~」
「てかなんで辞めたンスか?」
「いや~好きな人出来ちゃって…」
変態、ほんのり頬が桜色。
「あ!そーなんスか!?おめでとうございます!どんな相手なンスか!?」
「いや~、結構Sなんだよね~」
「マジッスか!?魔王様言うんなら超ドSじゃないスか!」
「いや~、まぁね」
「で、なんでこんなとこにいるンスか?」
「あ~、アイツ、なかなかワガママでさ~。強いヤツ倒さないと結婚してくれないって言うんだよ~」
言ってない。
「ヒューイ!“アイツ”とか言ってアツアツじゃないッスか!へ~、魔族一ドSのキラビアンカにも振り向かなかった魔王様がか~」
「そうなんだよね。ミノちゃん、恋ってさ、いいよね」
変態はキリッとミノタウルスの瞳を見つめた。
「あ、あぁ…そッスね」
「ところでミノちゃんはなんでこんなとこにいるの?」
「暇だからちょっとダンジョンに入ったら出られなくなったンスよ~」
「ふ~ん。あ!ケガしてんじゃん!消毒した方がいいよ!」
そういうと変態は頭から緑色の粘液を掬うとミノタウルスの腕に撫で付けた。
ジュゥ
「ギヤーッ!」
楳図かずお的な顔になり叫び声をあげるミノタウルス。
「魔王様!それ毒!それ毒!」
「うん?」
変態は分からない。
変態は自らが法律だった。
「ぐふぅ!ぐふぅ!」
ミノタウルスはなんだか涙目だ。
「あ…なんか、ごめん」
「いんスよ!大丈夫ッス!魔王様もわざとじゃないンスから!」
「うん…そうだ!ミノちゃんいつものアレやってよ!」
「えー?アレッスかー?いいッスよ!」
ミノタウルスはおもむろに立ち上がると巨大なハンマーを両手に大きく振りかぶった。ハンマーの軌道の先には変態が尻を突き出している。
ブゥン!
ズガァン!
ミノタウルスが力一杯振り回したハンマーの先の四角捶型の突起が変態の肛門へめり込んでいく。
「もう一丁ッ!」
ブゥン!
ズガァン!
「もう一丁ッ!!」
ブゥン!
ズガァン!
「もう一丁ッ!!」
ブゥン!
ズガァン!
「もう一丁ッ!!」
かれこれ8時間、ミノタウルスは休む間もなく変態の肛門を叩き続けた。
「はぁ!はぁ!もういいッスか!?」
いい汗をかいたミノタウルスの表情は明るい。対して変態は頬を桜色にして、いまだ腰を突き出している。
余韻に浸っているのだ。
「…いい…もんだな…」
「…そッスね」
思わぬ旧友との再会。
久しぶりに会ったおぎやはぎのような関係の二人。
旧交を暖めあった二人はなんとも言えない温かい気持ちを共有した。
「そうだ!魔王様ちょっと助けてくださいよ」
「ん?なんだ?」
「この先に厄介なヤツらがいて、奥に進めないンスよ」
「ミノちゃんでも?」
「そうなンスよ!一匹一匹はそうでもないンスけど、大群で来られるとちょっとウザかったンスよね。魔王様の肛門でイッちゃってもらえません?」
「わかった」
最後にちょっと変態的な会話を挟みつつ、ミノタウルスの案内によって変態はダンジョンの奥へ進んでいった。
「あ、この奥ッス」
「うん?蟻?」
中を覗くと拳大程の軍隊蟻がせっせと作業をしていた。
「ギ?」
一匹の蟻が気付くと、雪崩のごとく億万の軍隊蟻がこちらへ猛進してきた。
軍隊蟻は一度狙った獲物に特有の匂いを付ける。
「任せておけ…」
変態はそういうとス…と後ろ向きに屈み、ウンチングスタイルを取って紐のようなパンツを下に下げた。
「準備完了だッ!」
「な、なにするだーッ!!」
軍隊蟻は変態を避けてミノタウルスに襲い掛かる。一度匂いを付けられた獲物は絶対に逃げられない。抵抗する間もなく、一瞬でミノタウルスは骨となった。隣には尻を突き出した変態がポツンと佇む。
「ミ、ミノちゃーんッ!!」
その途端、変態の肛門は悪魔のような吸引力を見せた。
次々と軍隊蟻は変態の肛門に吸い込まれていく。
ズモモモモモ…
蟻が発する『蟻酸(ぎさん)』が変態の腸を刺激する。それにより変態の免疫力は益々高まっていく。そう、蟻は健康に善いのだ。
涙を流しながら軍隊蟻を吸い尽くした変態。
旧友との出会いと別れ。
世の諸行無常を感じながらも変態はスキップしながらダンジョンの奥へと進んでいった。
ちなみに女王蟻も知らない内に吸い込んでいた。
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