第4話 おれの変身

変身モーフィン!」おれは叫ぶと。一度片膝つくまで縮めた身体を大きく伸びあがらせて、拳を突きあげた。「マモルンジャー!」


 最近はスーパーヒーローに変身できるアイテムも、簡単にネットの通販で手に入る。まさに通販全盛ジュラ期! いい時代になったものだ!


 かぁっとおれの全身を包み込んだ閃光が、マイクロ・ブラックホールを通じて異空間から超硬質マモルン・メタルを高速転送し、わずか3マイクロ秒で、おれの全身をアンチボウカン・スーツが包み込む。

 レッドのレザースーツは、防弾仕様。メットのバイザーはガーゴイル・タイプ。


 強烈な閃光をともなったおれの変身に、ゴーレムどもが怯む。なんちゃって志尊も、ビビったように後ずさりして、手で顔を庇っている。


 その隙に飛び込んだおれは、奴の手からジラフちゃんを救い出すと、彼女に「はやく安全なところへ」と告げて、この場から離れるように促した。


「きっさまぁ、何者だ!」

 志尊モドキが、憎々し気におれのことを睨んでくる。


 おれは逃げてゆくジラフちゃんを庇うように立ちはだかると、ゆっくりと両手を左右に広げて、『格闘技世界チャーンピィオーン』のポーズをとって名乗りをあげる。


「SP戦隊マモルンジャー。マモルンレッド!」


「SP戦隊だと!」垂れ目が息を呑む。「警視庁警護課S・Pなのか?」


「ちがう。私設警察しせつポリスの略だ」


 ちょっとたじろぎ、左右をうかがう垂れ目とゴーレムたち。


「どうした?」

 おれは勝ち誇ったように訊ねてやった。


「いや、戦隊というなら、仲間は?」


「脳内キャストでは、高梨臨ちゃんみたいなピンクと、小宮有紗ちゃんみたいなイエローがいることになっている」


「脳内キャストって……。じゃあ、おまえ一人か!」


「ふっ、SP戦隊マモルンジャーはな、たった一人の戦隊よ」


「たった一人の軍隊みたいに、格好つけて言うな! 友達いないだけだろっ!」


「ふっ、おまえらごとき、おれ一人で十分さ」

 おれは肩を突き出すと、腰に差した高級居合刀『シンケン丸』の柄に手をかける。通販サイトで☆5の名刀だ。


「ゴーレムども、やっちまえ!」

 垂れ目の指示で、おれを取り囲んだ十数匹のゴーレムが一斉に襲いかかってきた。

 しゅるるっ、とシンケン丸の鞘が、鯉口から風を吸い込む。

 正面のゴーレムが、ぱっと真っ二つに割れて、砂に還った。

 抜き放ったシンケン丸の刀身が、街灯の光をうけて白く輝く。


 切れる。やはり名刀。鳥肌が立つほど、よく斬れる。


 返す刀で、袈裟に二匹目。くるりと身を翻して一文字に三匹目。四方向から襲ってきたら四匹を、逆袈裟、切っ先返し、虎乱、桂剥きで、一瞬のうちに砂に還す。

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