ツギハギアイドル

ダメです。全然、ダメ。

ダメダメダメダメダメダメ。


マンネリ化してきている。

演出も技量も限界がありすぎる。

新メンバーを迎える。


いや、ダメだ。

今の姿であってこそ、完璧な均衡が保たれてる。

プリンセスさんやコウテイさんとも話し合ったが、埒が明かない。

時代というものは絶えず進化していくものだ。

変化に対応できないものは置いて行かれるまで。


この危機的状況を打開するための策を、マネージャーの私は

考えなければいけない。




しかし、私だけの思考では結論が出せず、

困った時は、図書館だと思い、足を運んだ。

だが、博士はいなかったので、助手に話をすることにした。


「・・・という訳なんですよ、助手さん」


「新たな変化を求めることに異論はありません。

マンネリ化しているのは私も、つくづく感じていました」


「どうすればいいんでしょうかね...」


「いっその事刷新してしまえば、良いのではないでしょうか」


「刷新・・・?」


「PPPを解散させて、新しいチームを作るんですよ」


「は、ハァ!?そ、そんなことしたら・・・、

ファンから大ブーイングですよ!?」


助手は首を傾げた。


「おや・・・、名案ではありませんでしたか」


「当たり前じゃないですか!

私もPPPに一途なんです。他アイドルをプロデュースする気は更々ないですから」


「・・・では、PPPのままで、

新たにメンバーを"作る"というのは?」


「つ、作る・・・?ますます訳が分からないですよ」


「ご協力しますよ。この島は退屈すぎるので、娯楽が必要です。

それが面白くなるなら」


助手は少し微笑んでいた。





「倫理的に問題があると、あなたは思いになるかもしれませんが、

現実的に考えれば、とても合理的な話なんです」


「なんとか的~って・・・、それがよくわからないんですよ」


マーゲイは呆れた顔を浮かべ、頭を掻いた。


「人も、フレンズも、等しく寿命というものがあります。

言わば、いつかは誰にでも死が訪れるのです。それは避けられない。

あなたもPPPにも死は訪れる・・・。それはご理解頂けますね」


「は・・・、はい」


「私はあなたの思うマンネリ化を解消し、永遠の命を彼女達に付与する。

非常に有益な取引ですね。流石、私は賢い・・・」


誇らし気な顔を見せた。


「我々とあなたは友人です。報酬は要りません。

その代わり、私の言うことをちゃんと聞いて、実行してください。いいですね?」


「わ、わかりました」




私は助手の言う通りに行動することにした。

内心、彼女が何をするのか、ドキドキしていた。


「真夜中に呼び出してすみません、コウテイさん」


「マーゲイも私達の為に頑張ってくれてるから、こっちも答えてあげないと・・・

それで、今日は・・・っ!?」


唐突にコウテイの口が塞がれた。

後ろから彼女の口を塞いだのは助手であった。


「んっ...、んんぅ...」



「・・・コウテイさん」


「心配はいりません。彼女は眠っただけです。

彼女は生まれ変わるのです。不死身になるんですよ。いいことじゃないですか」


彼女が何をするのか私には想像できない。

ただ、何も反論できず、彼女の言いなりになった。




他のメンバーも同様に、助手によって回収された。





「ありがとうございます。助かりました。数週間くらい待っていてください。

PPPは生まれ変わって、あなたや島のみんなが満足する、新生PPPが誕生します。

我々に任せてください」


彼女は実に自信満々の様子だった。






「やりますか、博士」


「私はオッケーです」


「はい」


お互いに頷き返した。



「離せっ...、何をするんだ...」



机の上に仰向けにされたコウテイの腕に、注射器を射した。


「あぁっ...」


唐突に意識が朦朧とし、まもなく彼女の視界はブラックアウトした。



「まず、コウテイは身体ですね」


「わかりました。邪魔な物は私が処分します」


アイスピックを持った助手は、瞼を閉じたコウテイの目に、

それを突き刺し穿り出した。


目の周りには血が滲む。


銀製の皿に彼女の目が置かれた。


「な・・・、何してるの!?」


「あれ、プリンセスさん。起きちゃったんですね」


「な、何であなたが・・・。コウテイに何が!?

一体何やってんの!?ねえ!!教えて!!」


焦燥とした様子で話す。


「プリンセスの体は必要ありません」


博士の声が響く。


振り返り、軽く頷いた。


「プリンセスさん。今まで、ありがとうございました。

新しい世界でお会いしましょう」


「いやっ...!!やめっ」


鋭い刃物で、彼女の首を切り裂いた。


乱雑に長い髪を掴み、卓上に置く。


「しかし、あなたが我々の計画に賛同するとは思ってもみなかったですよ。

一体どういう風の吹き回しで?」


「こういうことは道具を器用に使えなければいけませんから。

それに不死の命を与えることは、とても素晴らしいことですし」


淡々と答えた。


先程、切り取ったプリンセスの頭から、助手はまた目をくり抜く。


「やりますか・・・」


プリンセスの目を、コウテイの顔に移植する準備を進めた。



「じゃあ、次は頭を入れましょう」


博士の指示に助手が頷く。


残された3人もプリンセスの悲鳴のせいか、目を覚ましていた。

イワビーに関しては隣の首のないプリンセスの体を見てしまったのか、目の焦点が定まらず、

身体を小刻みに震わせている。口を開け言葉も発せない様だ。


「何が起こってるの・・・」


小声でフルルが呟く。


「助けて...」


意味も分からず、ジェーンは啜り泣いている。



助手はそんなジェーンの目の前に立ち、

彼女のヘッドフォンを取り、投げ捨てた。


右手にはナイフが握られている。


「アナタは随分努力家なようで。ファンからも高く評価されてますね。

その思考を貰いますね」


「死にたくないっ...!うぅっ...、うっ...」


「泣くことはありません。あなたは生まれ変わるのです」


そう言い聞かせ、頭にナイフを入れた。


「いやあああああああああっ!!!!!!」


凄まじい断末魔が聞こえた。

何かを叩く音も聞こえる。



「ジェーン・・・」


「やめてくれよ・・・っ!!

やめろよおおおおおおおおっ・・・・!!!!

あああああああああああぁぁぁぁぁっ!!!!!!」


イワビーが頭を抱え奇声を上げた。

彼女は過呼吸になり、足元に水溜りを作る。


「うるさいですね・・・」


しびれを切らした博士は、借りますよ。と、断りを入れ、

鋏を手に取った。


イワビーの喉元に鋏を勢いよく突き刺した。


「あ゛あ゛っ゛!!」


鮮血が口から垂れ、彼女は首を横に傾け、言葉を発しなくなった。



「・・・」


残されたフルルはただ単に喉元に鋏が刺さったイワビーを

黙って見つめていた。


横からはジェーンの脳が取り出されている。


助手は取り出した脳を、また横に置いた。

コウテイの頭を開き、彼女の脳ととジェーンの脳を入れ替えた。



「フルルさんは、声・・・、ですか。難しいかもしれませんが、

ベストは尽くしますね」


「よろしくお願いします」



助手がフルルの前に立った。


「・・・わたし、死ぬの?」


全てを悲観したような、諦めた声だった。


「死ぬのではありません。生まれ変わるのです」


助手は呪文のようにそれを繰り返した。











数週間後。


「お待たせしました。

新たなPPPのメンバー、コプルジェビー・・・、

いや、名前は適当に考えといてください。

これが、島のみんなが求める、理想のPPPです」


「初めまして。一生懸命頑張ります。

よろしくおねがいします・・・」


私は彼女を見て、言葉が出なかった。


身体はコウテイさん

目は赤い色のプリンセスさん

髪の毛と衣装はイワビーさん

声はフルルさん

恐らく、性格はジェーンさん


PPPの5人が、一つになったアイドルがここに生まれた。





水辺ちほーはいつもと異なる熱気に包まれていた。


ステージからは歓声が聞こえる。


「行きますよっー!!」


「「おーっ!!!」」



観客の声と共に軽快な音楽が流れ始めた。


その光景はものすごく新鮮だった。

前の5人よりも・・・、大ウケしている。


これこそが、マーゲイの求めていた、理想的なアイドルの姿であった。

過去の事を忘れて、未来の事を考えていたのは言うまでもない。


彼女と二人三脚で・・・。やっていくと決心した。






「我々は、大いなる偉業を達成しました」


「ええ。アナタの協力なくして、成功なしえませんでした。

改めて感謝しますよ」


博士は頭を下げた。


「こちらこそ。僕の方こそ勉強になりました。

親友が死んだときに、使わせて頂きます」


丘の下から見下ろすライブ会場。

いつにもまして、華やかだった。

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