憧れの先輩

僕の名前は、キュルル。

まあこれはフレンズが付けてくれたんだけど、

他のパークガイドの人も同じように呼んでくるんだ。

渾名みたいなものかな。


そんな、僕には憧れの先輩がいる。


同じパークガイドの"かばん"という先輩だ。

年は近いけど、2、3歳離れてるのかな。

パークの事を知り尽くしてるし、動物にも詳しい。

教養もあって、その上、料理も上手。

おまけにフレンズにも慕われてる。物凄く尊敬している。


だけど先輩は、少し変わった所がある。


声が少し高く、仕草が女の子っぽい。


別に蔑んでいる訳ではない。

ただ、それに魅せられていた。


何とも言えない感情が芽生え、もっと詳しく知りたかった。

運命の悪戯か、先輩と二人でパークガイドをやることになった。

それとなく、察されないように尋ねた。


「先輩って、どうしてフレンズに詳しいんですか?」


うーんと唸ってから先輩は。


「僕自身フレンズだったからかも」


「え?」


「もともと、帽子に付いた髪の毛から生まれたんだ。

まあそれから色々あって・・・、セルリアンに食べられちゃってね。

普通の人間になったんだけど、持ち主が男の人だったみたいで」


恥じる様子も無く作り笑いを浮かべながら、そう語ってくれた。


僕の中で渦巻いていた、先輩の違和が解消された。


休憩時間に、一人息を吐いて空を見つめる。

一度頭の中を空っぽにしたかった。


僕が好意を感じていたのは、先輩のフレンズだった時の面影なのか、

それとも、"先輩"そのものか。


実を言うと、先輩とは、あまり関わりたくなかった。

その本心とは裏腹に、先輩とペアを組まされるシフトが多くなった。

僕の心情をかき乱して神様は何が面白いのか。


一方で、嬉しくも思いつつあった。


でも、先輩はあくまで今はフレンズではなく人間である。


その不都合の様な現実が、僕を追い込んでいた。

心臓を両側から壁で挟まれているような、苦しさを感じていた。


ある日、ナイトツアーの団体客のガイドを終えて、ガイドが使用できる

宿舎に向かった。このナイトツアーをやるのは初めてだったが、

かばん先輩が上手くフォローしてくれたので、事なきを得た。


先輩は僕を部屋まで案内し、色々説明してくれた。


「今日はありがとうございました」


「凄くよかったよ」


「いやいや、そんな・・・」


「謙遜することはないよ。

動物の知識やフレンズの生態も分かって来てる。

着実に身になってるよ。この調子なら

パークガイドライセンス試験も合格できるよ

キュウくんなら、立派なパークガイドになれると思うな」


先輩はにこやかに言ってくれた。


「これからも、頑張ってね。おやすみ、キュウくん」


「・・・待ってください」


僕は扉を出て行こうとした先輩を引き留める。

当たり前だがきょとんと、僕の顔を見つめた。


「・・・話したいことがあるんです。良いですか?」


「どうしたの?」


「先輩にしか・・・、話せない事なんです」




無意識に備え付けのベッドに腰掛けた。

僕の様子が、普通には見えなかったのか、

心配そうな顔を浮かべていた。


息を吐いた。


もう、心苦しさに耐えきる事が出来ない。


「...俺、かばん先輩が好きです」


「え・・・」


予想していた通りの反応だ。


「真面目で、優しくて・・・、勤勉で・・・。

可愛げがあって、とても好きなんです」


気持ち悪がられてもいい。

身を切る思いでの、告白だった。


「で、でも...、僕はもうフレンズじゃないし...」


「フレンズとかそういうのは関係ありません...。

かばん先輩自身が好きなんです!」


実直に気持ちを伝えた。


「キュウくん...」


そう呟いて、目を閉じた。


「ごめんなさい...。やっぱり、変ですよね...」


「ありがとう」


「...?」


「きっと...、心苦しかったよね」


この人は僕の気持ちを知っていたのかと、少しドキっとした。

それを察してか、


「いきなり、"俺"って言ってくるなんて、

相当な覚悟が無いと出来ないよ」


再び微笑んでくれた。


憧れの先輩が、僕を受け入れてくれた。

それだけで、胸がいっぱいになった。


「それに・・・、

サーバル以外で好きって言われたのは、初めてだな」


「先輩っ...!!」


様々な要因があるけど、我慢出来なくなった。

唇で触れた先輩の肌は、まだ微かにサンドスターの影響があるのか、

女子の様な柔らかさがあった。




「...食べないで」


「...食べませんよ」


冗談を言う。

既に、心がすっきりしたという感覚を感じていた。

そのせいか少し、調子に乗った発言をした。


「先輩が、嫌じゃなければ・・・、お願いがあるんです」


「なに?」


「...えっと」


やはり、少し躊躇いが出てしまう。

唐突に先輩が立ち上がった。


「キュウくんも」


催促され立ち上がる。

やはり並ぶと、先輩の方が少し高い。


「いい?」


膝を屈め、上目遣いで尋ねる。

その女の子っぽい仕草が僕をドキドキさせる。


ゆっくり頷くと、腰に手を掛け履物をずらした。


この人はただ者ではない。他人の心を見抜くのが上手い。

いや、僕の心が読まれやすいのかもしれない。

どっちかは、わからないけど不思議な人であるのは確かだ。


しかし、信じられない。憧れの先輩が・・・。




「うん...はぁ...先輩...、最高です...」


「...うれしいな、初めてだけど...」


照れくさそうにしているのが本当に可愛い。

同性であるのが信じられない。


罪悪感や恥じらいは消え去り、ただただ、満足感で

足りなさを感じていた心の隙間が埋まって行った。


満ち足りた幸福は快楽を倍増させた。


「んっ...、ぁ...、かばん...、せんぱい...」


「あははぁ...、こんなんなんだ...」


片手で、口元を拭った。






しばらくして・・・


「...先輩もやるんですか?」


「実は...、本当はやっちゃダメなんだけど...」


先輩が話した内容は、このパークの規則に従わない物だった。

サーバルと・・・


「・・・ちょっとした遊びだけどね。

いつもやらせてる側だから、いつもこんなのをサーバルは・・・」


「先輩は、僕のことどう思ってますか?」


「...、俺って言ってよ」


咳払いして言い直した。


「先輩は、俺のことどう思ってますか?」


「可愛い後輩」


微笑んで言った。


「サーバルは?」


「・・・友達かな。普通に考えれば、本物の人の方がいい。誰でも」


ちょっとだけ、声が寂しく聞こえた。


「・・・こんな俺でも、好きになってくれますか?」


「僕はキュウくんの事、もう好きだけどな」














































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<あとがき>

メリークリスマス!

キュルルのビジュアルが公開されたとき、こういうのもアリじゃないかな!

と思い立ち書きました。

告白後の展開は、読者様が想像してもらえれば...(手抜きじゃないよ)

それ程エロくないですが、一応BL初挑戦になります。


かばんちゃんはセルリアンに食われ男の子設定、キュルルくんは19歳くらいを想像して書いています。


腐向け作品って、書きレベル高いっすね・・・(引き顔)

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