見守る者
冬から春へ移り変わる日
彼女は私に別れを告げた。
強くなるために、修行すると。
大丈夫と尋ねると、
「大丈夫ですよ、きっと」と、胸を張って答えた。私は彼女の目を見た時、未熟ながらも逞しさを感じた。
後に彼女は悪から皆を守る正義の味方になっていた。先輩達から学び、これからもっと成長すると私は見て思った。
まだ、弱い所はあるけれどその勇気と優しさがあれば、必ず強く皆から慕われる者になる。そうなる様に願っている。
春の穏やかな日
彼女は私に別れを告げた。
まだ知らない謎を求めて、1人で旅に出ると。
大丈夫と尋ねると、「大丈夫です!」と
元気な声で言い返した。
私は彼女の目を見た時、きっと何か才能を開花させる。そんな気がした。
後に彼女は図書館で漫画と出会い、憧れの人物を見つけた。夢を追い求めつつ、彼女の手助けをする。唯一無二のパートナーを見つけた。
夏の暑い日
彼女は私に別れを告げた。
住む場所を変えると言っていた。
大丈夫と尋ねると、「だ、大丈夫です」と、少し頼りない様子で答えた。
私は彼女の目を見た時、微かな希望と一抹の不安を抱いていると感じた。
後に彼女はこの世界では死を意味する状態となる。私は見て見ぬふりをしたが、多少の罪悪感が生まれた。時折、聞こえる甲高い鳴き声。聞こえているかどうかわからないけど、必死に謝り続けた。それと同時に、山へ願い続けた。
今度、あなたが生まれた時は、私があなたを守ると、星に誓った。
秋の風の強い日
彼女達は私に別れを告げた。
正体を調べに行くと言っていた。
大丈夫と尋ねると、「大丈夫大丈夫!」
と、気楽に返答された。
私は彼女達の目を見た時、凄まじい勇気と知性を感じた。
後に彼女達は様々な出会いをし、この地では知らぬ者はいない存在となる。英雄と言っても過言ではない。その存在を追い求めた者達もまた、彼女達を支えたキーパーソンとなる。あの二人、そして彼女達は“選ばれし者達”だと、そう感じた。
冬の寒い日
彼女は私に別れを告げた。
これから長い長い旅に出ると言った。
大丈夫と尋ねると「あの子も来てくれると思います」と、微笑んだ。
私は彼女の目を見た時、何も感じなかった。まるで、白いキャンバスに白い絵の具で絵を描いた時のように、そこにあるはずのものが私には見えなかった。
後に彼女の旅路がどうなったのか。
その知らせは来ていない。どこかで、便りがないのは良い便りと聞いた事がある。しかし、もしかしたらということもあるかもしれない。だけれど、それを確認する術は私にない。私に出来ること。
それは見守ることだけ。祈り続けることだけだ。
ここは、始まりの地。
色々な子が、
色々な思いを持って旅立つ。
思えば、沢山の子がここを去った。
いつの間にか、ここにいるのが、
私だけのように感じた。
だけど、
1人で寂しいなんてことは無い。
同じ空の下、同じ地面の上で、同じ空気を吸っている。
どこかで、私達は繋がっているのだから。
あなた達に幸福と希望がもたらされますように。
見守る者より。
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