アドカバ

「今日は星が綺麗ね」


私は膝上で彼女...、彼女を撫でた。


「クゥー...」


彼女は呼応するように鳴いた。


「あなたにも、わかるのよね」


そう尋ねたが、今度は鳴かなかった。


一度無に帰された存在。

私と交わした筈の言葉も覚えていない。


「...今頃、あの子何してるかしら」


今度も、鳴かない。

話題を変えた。


「ねえ、フレンズになったら何したい?」


「クゥゥ...」


小さく鳴いた。


「あの子達みたいに、旅してみたい?」


「...」


今度は、黙った。

彼女のつぶらな瞳を見つめた。


「...、私と一緒にいたいの?」


「クゥ...」


その返しは、意外なものだった。


「ふふっ...」


いつも、この地から旅立つ人を見送って行った。

行かないでって、言いたかったけど。

それを堪え、見送ってきた。

まさか、ここに来て“行きたくない”と言う者が出てくるなんて。

自分にしてみれば、滑稽な物だった。


「フレンズになったら、私と一緒にいたいの?」


「クゥゥ...」


「おかしな子...」


もう一度、彼女がフレンズになったら。

私は彼女を離さないかもしれない。

もう一度、食べられないように。

私が彼女のために命を捧げるかもしれない。


「...」


ギュッと彼女を抱きしめた。

私にとっての、尊い存在。

一生大切にしたい存在。

彼女がどう思ってるか、わからないけど

気持ちは恐らく、同じだ。



「私のこと、大好き?」


「クォン...」



言葉はわからなくても、通じ合える。

真の友達だから。


私の頬をペロッと舐めた。

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