生きる幸せ
何かに触られている。
その違和感で私は本能的に目を覚ました。
「・・・先輩っ!?何してるんですか!?うむっ!」
口を手で塞がれた。
「リカオン...、私ね...」
今度は、唇で口を塞がれた。
「あっ...、な、何で...、唐突すぎますよ...」
「ごめんなさいね...」
頬を赤くした面で、申し訳なさそうに答えた。
先輩は私の上に乗っている。
「...嫌じゃないですよ。だって先輩ですから...」
「あなたのそう言う所が...、好き...」
そう言うと、身体を密着させた。
静かに、耳を澄ませ“生”を聞いている。
「アレ、やってもいい...?」
「いいですよ...。じゃあ、出しますね...」
ポケットから容器を取り出す。
中に入っているのは青いゼリー状の物。
セルリアンからは微量にそういう物が取れる事がある。
密かに集めていた。
先輩は貴重なそれを手のひらに出し、丁寧に練り始める。
青く、少し粘り気のある特異なそれに両手を包む。
そして、私の服の隙間からその手を差し込む。
「・・・っあ」
柔らかく、優しく、手を動かす。
綺麗に宝玉を磨くように。
先輩は上手い。
だから私は、もっとやってほしくて、自分から服を脱ぐ。
「はぁ...」
「もっと...、見せて...」
先輩は私の赤面している顔が好きだ。
それを見て自分も興奮する。
私の体はベトベトになっている。
でも、先輩はそんなの気にしない。
逆に、激しくする。
「...っはぁ...、きついですよぉ...、せんっ...、ぱいぃ...」
先輩は一方的にやられている私を見て、嬉しそうにしている。
「ああっ...、たまんない....」
小さな声で、先輩はそう言葉を漏らした。
「っ...、もう...、アッ...」
限界が来そうだ。
でも、先輩の手は止まないだろうな。
そう思った時だった。
「・・・何してんだ?」
先輩の手が止まった。
私は熱を出したかのように、荒い口呼吸をし、
ぼんやりとその対象を見つめた。
「ヒグマさん...」
先輩が私に対してこんな事をしているとは、言っていなかった。
一方的に私だけ汚れている状況を見て、この人は何を思うのだろうか。
「ズルいじゃないか・・・。お前だけで・・・」
大先輩が言ったその言葉は、意外だった。
そう言うと、息を乱している私に近付き、寝そべるようにした。
「ちゃんと生きてるね」
私の吐息を聞いてか、そう呟いた。
この人達はセルリアンというフレンズにとっては
死の対象となる物と長年対峙することによって、“生きている”という
感覚が特別な物になったのだろう。
私もいつかそう思う日が来るのかもしれない。
そんな事を無意識に考えてたら、いつの間にかキスをされていた。
「キンシコウ・・・、もっとやってやろう」
ちょっと悪い事をしようと持ち掛ける言い方に聞こえた。
ヒグマ先輩は流し作業をやるかの如く、乱雑にベトベトになった私の体を手のひらで触る。
華麗に流れる川の如く、優しく触るキンシコウ先輩とは真逆だった。
「アッ...、ハァッ、ハァ...」
息を荒くする私に対し二人は
「いいなぁ...」
「ですよね...」
と感嘆の声を漏らした
先輩二人にずっとやられ続け、私はとうとう耐えきれなくなった。
「・・・、ああっ・・・、はあ・・・」
私の気持ち良くなった時の顔を見て、二人はニヤけ続ける。
「もっとやろうよ・・・」
「もっと見せて、もっと・・・」
ヒグマ先輩は立ち上がって、一旦どこかへ行った。
私はもう、周りの状況がよくわからなかった。
少しして、ヒグマ先輩は戻って来た。
その右手には、古びた縄。
「キンシコウ」
「はい」
先輩二人は私に縄を括りつけ始めた。
私に抵抗する力は無い。
やられるがままに、された。
ベトベトのまま、縄で縛られた。
「ふふふっ...」
キンシコウ先輩の笑い声が聞こえる。
「ゾクゾクするね・・・」
ヒグマ先輩もまた笑い声を出す。
何をするのか、見当も付かない。
すると、唐突に
「いたっ...」
叩かれた。
何で叩かれたんだろう。
私がその目で見たのは、ヒグマ先輩が武器を構えている光景だった。
横を見ると、キンシコウ先輩も持っている。
「あいっ!」
まただ。
先輩らは、一変して、私を虐め始めた。
「痛いっ、アッ、痛っ・・・、ああっ!」
先輩らのクスクスという声が耳に入る。
「生きてるから、痛く感じるんだよ・・・」
ヒグマ先輩は、そう言った。
「羨ましい・・・」
キンシコウ先輩は、少し可笑しなことを口にした。
そうか。この人たちは
“生きるのを”見る事を快感にしているんだ。
「痛いっ...、やめてっ...、くださいよぉ...」
涙を浮かべる。
「はあっ・・・」
「アハッ・・・、アハハ・・・」
ヒグマ先輩は喜んだ顔を浮かべ、
キンシコウ先輩は堪えきれず、笑ってる。
結構長い時間、叩かれ続けた。
しかし、いつの間にその行為は終わっていた。
泣き顔を見せた私に、ヒグマ先輩は優しく、また寝そべってこう呟いた。
「ごめんね、リカオン。好きだよ」
また、キスをされた。
「もう、ズルいじゃないですか、先輩・・・、
リカオンは私の物ですっ・・・」
キンシコウ先輩も私にキスした。
それから二人は、傷ついた私を癒すためか、野生動物が毛並を揃えるかの様に
私の体を舐め始めた。
セルリアンのヤツが体に良いのか悪いのかは分からない。
しかし、先輩たちも“生きている”。
私の身体に密着している先輩たちから、その温もりを私は感じた。
“生きるという事は幸せである。”
そう、思った。
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