アードウルフのクリスマス

きょうしゅうエリアに冬の季節がやってきた。


と言ってもパークはサンドスターで

環境をコントロールしているので

普段と何ら変わりは無いが。


かばんは図書館で興味深い記述を見つけた。

“クリスマス”という行事。


“やってみたーい!”

“やってみたいのだ!”

“面白そうだね〜”


などの声を聞き、ビックプロジェクトが開始された。フレンズに協力を持ちかけ、そしてかばんのラッキービーストなど協力で、イルミネーションがきょうしゅうのあちこちになされた。

好奇心旺盛なフレンズ達は盛り上がって、イベントの日を心待ちにしていた。


クリスマス・イブの日。

前日に起こったこんな変なお話を


【12.25話 くりすます】

ーーーーーーー



世の中には“クリスマスの奇跡”という

言葉がある。


それは、ジャパリパークにも起こったのだ。


スー、スー...


クリスマス・イブの夜。

さばんなちほー。その木の根元で眠る動物がいた。


ドカーン


遠い山からの爆発音。


キラキラと輝く物体は放射線を描きその

木の根元へと運良く飛んでいったのだ。


不幸か幸いか、その固形物は木にぶつかり失速。そのまま下に寝ていた動物にも当たったのだ。


動物の体が光出して、人の形となった。


「あれ...ここは?」


記憶が無い。だが、自分はアードウルフという事は知っていた。


景色を見渡す。思い出せそうで思い出せない。


「あっ...私は...さ、さ、青...」


肝心な事が思い出せなくてモヤモヤした。


取り敢えず自分は適当に歩き始める。


暫くすると水場に着いた。


本能的に水を飲もうとすると、


「だ〜れ〜?」


水中から何者かが現れた。思わず腰を抜かす。


「うわあああっ!たうえ!」


「ん?ってあなた!アードウルフじゃない!サンドスターが当たったのね!」


彼女は急いでアードウルフに飛びつく


「あっ!あの!くるぢいい!」


「あなた私の事覚えてる?」


「ゼェ...ゼェ...全然ないです...」


「やっぱり...。私はカバ。あなたの過去を知っているのよ。どう?聞きたい?」


アードウルフは考えた。

目の前には本当かどうかは知らないが自分の過去の生き証人がいる訳だ。

もしかしたら、フレンズになってから続いているこのモヤモヤが晴れるかもしれない。


「教えてください!」


と言った。


「わかったわ...」


カバは語り始めた。

自分が前に1度フレンズになり、そして

セルリアンに食べられるまで過程を。

彼女自身もチグハグになっていた記憶が

一つの完成したパズルになった。


「あの!きょうしゅうを巡って来てもいいですか!?」


アードウルフは興奮した様子で聞いた。


「えっ?でもきょうしゅうは広いのよ?一日じゃ...」


「今、なんかすっごい調子が良いんです。行ける気しかしません!」


「はぁ...、まぁ、セルリアンも最近は姿を見せなくなったし...」


「過去の反省を生かすんで大丈夫です!いざとなったら逃げます」


私は、風になったつもりで走り出した。


(私があそこにいた理由...!旅に出たかったんだ...!さばんなの外を!今その果たせなかった夢を叶えよう!)


最初にじゃんぐるちほーに来た。

だが何故か、白や青といった光が木々を輝きに包んでいた。


(なんろうなーこれ)


そう思いながら川辺に近付く。

茂みの所で声が聞こえたので立ち止まった。木の影からそっと見る。


川岸には、月明かりに照らされた二人のフレンズの影。

気になったので気配を消して近くまで寄った。


「なぁ...カワウソ」


「なにジャガーちゃん」


「飾り付けしたかいがあったね」


「うん!こんなに綺麗なのは初めてだよ!」


「疲れが取れる...」


「もっと...癒してあげようか?」


とカワウソは足を伸ばし膝を叩いた。


「あはは...悪いなぁ」


「全然悪くないよ?」


彼女たちの声は思ったよりも大きい。

そのやり取りを聞いていたアードウルフは口を開けて不味いものでも食べた様な顔をしていた。


(はあ?なにあれ。あんなチカチカ目が痛くなるものが綺麗?それになんでいい雰囲気になってんの?)


複雑な気持ちが芽生える。


(げっ!見たくないよこんなの!

ムカつく!)


と、逃げる様に走り出した。

その最中、ふと自然にあるワードが脳内の単語帳にインプットされた。


「リアじゅう爆発しろっ!」


バチャーン


イライラそのままに、大河に身を投じた。そして、火事場の馬鹿力か、とてつもなく早い泳ぎをしてその場を高速で去った。


「あれ?なんかいなかった?」


「何か川に飛び込む音がしたけど...

大丈夫かなぁ…」



向こう岸に渡ったアードウルフは身体を震わせていた。


(さ、さむい...。暖かそうな所は)


カバの話を思い出した。

私を食べたセルリアンを倒したかばん達は、ジャングルに行って...カフェだ!


高山にあるカフェの話をしてくれた。


ロープウェイ乗り場を速攻で見つけ、速攻で漕ぐ!


(ハァ、ハァ、着いた!)


遠くに見える建物からは明かりが見えている。

中入ろうとしたが、嫌な予感がし窓を覗き見た


見るからに暖かそうな姿をしているフレンズと、白と赤の似たような格好をした鳥類の2人のフレンズ。


(なにあれ...)


白い方が暖かい方に食べ物を口に運んであげてるではないか!


(自分の腕があるなら自分で食べりゃいいだろ!病人かお前は!)


「リアじゅう爆発しろっ!ペッ!」


アードウルフは再び、ロープウェイ乗り場に引き返した。



「ねえ何か、音聞こえなかった?」


「風の音じゃないかなぁ…」


「そんな事より早く食べよ!」


(まともなフレンズはいないの!?)


気付けばさばくちほーに来ていた。

バイパスのトンネル内部にある入口から

声が漏れていた。


「ねーねー、いるみねーしょん見に行きましょーよー」


「俺は寒いのが嫌なんだ!外には出たくない!つーか、お前は見てもすぐに飽きるだろ!」


(おっ?)


「だから...、俺と二人でここに居るぞ」


(は?何なの?それってただ単に相手を独占したいだけじゃない!)


(独占禁止法!!独占禁止法だよ!!)


と心の中で暗唱しながらうさんばらしに

扉に挟まっていたドア止めを、思いっ切り蹴り、扉を閉めた。


「な!?なんで閉まったんだ!」


「きっと神様からの奇跡ですよー

よっぽどボクといたいんですねぇ...」


その声を聞いて、こちらも声をあげた


「ああああああっ!!

リアじゅう爆発しろ!」


湖畔では二人のフレンズが家で盛り上がっていて、

平原では城でパーティ


アードウルフは湖畔で家を出たところの近くに落とし穴を掘り、

城では石を窓に投げ入れた。

※良いフレンズはマネしないでね!


(何で?なんでなんで?なんでみんなイチャイチャしてんの?私は一人なのに?ムカつく!)


図書館は大きく輝くツリーが目に入った

その瞬間立ちくらみを起こしそうになる


「どこもかしこも...!

あーもう全員消えてよ!」


(どうせこの先に行ったって、

作家がアシスタントとホテルの1室で創作と称してイチャついて、雪山じゃ

温泉に入って裸を見ながらイチャついて、最終的には3人でパーティでしょ!

だいたい読めてるんだから!)


「よし!爆発させよう!」


過激な思想がワクワクで満ち溢れていた彼女を豹変させ暴走が始まった。

(アイドルグループはいいや...)




ロッジにて...


「先生...顔が近すぎますよ...」


「君のいい顔が欲しいんだ...」


案の定いい雰囲気になってる。


「掃除でーす!!」


ドカンとドアを突き破った次の瞬間

バシャーン!


バケツで水を二人にぶっかけた。


「失礼しましたー!」


窓から逃亡する。


「せ...せんせい...」


「今のはいったい何なんだよ!!!」


「落ち着いて下さい!野生解放は!」


(あっははは!楽しい!)

※よいフレンズはマネしないでね!


雪山にて...


「キタキツネ...」


「なに...」


「雪風呂をお楽しみください!」


スコップで雪を気合で押し出し雪崩を発生させた。


「ねぇ、なにこの音?」

キタキツネが指摘する。


「雪崩の音!?そんなまさか!逃げないと!」

間一髪で室内に入る。


ドカーン!


(あっははは!爆発すればいいのよ!)

※よいフレンズはマネしないでね!




山の麓にて...


3人はかばんから教えてもらった鍋を囲っていた。

「はぁ...今年もいろいろあったなぁ」


「そうですね。黒セルリアンを倒して...」


「あの時はオーダーきつかったですよ」


談笑している隙に彼女が訪れる。


「美味しそう!貰ってくね!」


鍋ごと強奪する


「えっ!?ちょっ!?」


「誰だ!?おでんを返せ!」


「何なの!?」


現実離れした物凄い足の速さで、その場を離れた。


少し離れた所で、大根を口に入れた。

「うん!おいひい!」

※良いフレンズはマネしないでね!


(そうだ!ムカつくからあの図書館にもやってやろ!)


図書館に戻り誰にも気付かれないように外壁を上り、白い帽子を被った人物の頭上で鍋を落とした。

※良いフレンズは(ry


ヒュー


トン!


「痛っ!」


衝撃で気を失う。


当たって弾かれた鍋は隣の黄色い猫のフレンズの頭にも当たる。(おまけに汁も服にかかった)


「うみゃっ!?」


こちらも気を失ってしまった。


「だ、大丈夫なのですか!?2人とも!!」


(あっははっはっは〜、スッキリしたあ〜)




彼女がさばんなへと戻った時、太陽が昇りはじめていた。


カバのところに戻った。


「おかえりなさい」


「あー、疲れた...」

とため息混じりに吐いた。


「みんな何時もとはちょっと違ったでしょ?」


「言われてみれば...。何なの?」


「クリスマスとかいう行事よ...

かばんって子とその友達がやろうって言って。新しい物好きのフレンズ達は盛り上がっていたみたいね」


「ふーん...」


「私も少し気になったけど、

何時も1人だったから...」


カバの視線は昇りゆく太陽を見つめていた。


「クリスマスにはね

サンタクロースが、プレゼントを持って来るのよ。かばんがね、一週間前に欲しい物はあるかって聞いてきたの」


「なんて答えたの?」


カバは自分の方に顔を向けた。


「・・・側に居てくれる人が欲しい」


「えっ...」


「今夜ね、クリスマスパーティを図書館でやるんですって。一緒に行かない?」


アードウルフは再度考えた。

(もう...自分は1人ぼっちじゃない?)


嫌悪感を抱いていた気持ちはその瞬間

崩れ落ちた。


「...いいよ」


カバは笑って、「ありがとう」と口にしたのだった。

ーーーーーー

<解説>

去年のクリスマスに投稿する予定だった作品の一部です。

本来は

「アライサンタにおまかせなのだ!」

「かばんとサーバルが入れ替わった話」

「この作品」

というオムニバス形式を取り入れた構成でしたが、製作途中で挫けました。

このエピソードだけ書いていたので公開しました。


アードウルフが鍋をサーかばに落としますが

この時かばんとサーバルは入れ替わっているのでこの時の衝撃で元に戻ることになります。


<アライサンタのあらすじ>

構想まではありました。

森の中でサンタクロースのトナカイが具合を悪くしたまたまそこに通り掛かったアライさんとフェネックが協力してパークのフレンズにプレゼントを配る。という絵本チックな話にするつもりでした。


今年のクリスマスは諸事情で書けないと思います。ご了承ください...

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